平均値の定理と不定形の極限
導関数から関数の性質へ
本節から本章の終わりまで、関数 $f$ の導関数を通じて関数自身の基本的な性質をさらに深く理解していく。
導関数は関数の差分商
$$\frac{f(x+\Delta x) - f(x)}{\Delta x}$$
の極限状態であり、差分商は関数の $x$ およびその周辺の値を含むものであり、「大域的」な性質を反映するものである。
一方、導関数は関数の一点 $x$ での「局所的」な性質である。
私たちの目的はまさに関数の導関数の局所的な性質を通じて、関数の大域的な性質を導くことである。しかしこの過程は明らかではない。
一例を挙げよう。定数関数 $f(x) = c$ は任意の一点 $x$ での導関数 $f'(x) = 0$ である。逆に、ある関数 $f$ がすべての点で導関数が零であるとき、その関数は定数関数となるだろうか?
答えは肯定的であるはずだ。幾何学的に見ると、すべての点で接線が水平な関数のグラフはそれ自身も水平でなければならない。物理的に見ると、ある質点の運動速度が常に零であれば、その物体は静止している。しかし抽象的に極限
$$\lim_{\Delta x \to 0} \frac{f(x+\Delta x) - f(x)}{\Delta x}$$
から関数 $f$ が定数であることを推断することは、決して明らかではない。
フェルマーの定理とロルの定理
定義 関数 $f(x)$ が $x_0$ の近傍 $(x_0-\delta, x_0+\delta)$ 内で定義されているとする。その中の任意の一点 $x$ に対して
$$f(x_0) \geq f(x), \quad \text{あるいは} \quad f(x_0) \leq f(x)$$
が成り立つとき、$f(x_0)$ を関数 $f(x)$ の極大値(あるいは極小値)といい、$x_0$ を $f(x)$ の一つの極大値点(あるいは極小値点)という。
極大値と極小値をまとめて極値といい、極大値点と極小値点をまとめて極値点という。
なお、極値または極値点の定義自体は、関数が連続かどうか微分可能かどうかとは無関係である。
定理 1(フェルマーの定理) 関数 $f(x)$ がその定義域 $I$ の内点(端点でない点)$x_0$ で極値をとるとする。もし関数がこの点で微分可能であれば、$f'(x_0) = 0$。
証明
関数が $x_0$ で極大値をとるとしよう。定義より $(x_0-\delta, x_0+\delta)$ が存在して
$$f(x_0+h) - f(x_0) \leq 0$$
が $|h| < \delta$ を満たす任意の $h$ で成立する。差分商を考えると
$$\frac{f(x_0+h) - f(x_0)}{h} \geq 0 \quad (h < 0 \text{ のとき}), \qquad
\frac{f(x_0+h) - f(x_0)}{h} \leq 0 \quad (h > 0 \text{ のとき}).$$
関数は $x_0$ で微分可能だから、$h \to 0^-$ および $h \to 0^+$ としてそれぞれ
$f'_-(x_0) \geq 0$,$f'_+(x_0) \leq 0$ が得られる。これらは等しいから $f'(x_0) = 0$。
$f$ が極小値をとる場合も同様に証明できる。
図 3.8(左)と図 3.9(右) 極値点と停留点
幾何学的に見ると、関数 $f$ が一点 $x_0$ で極大(極小)値をとり、関数がその点で接線を持てば、その接線は水平($x$ 軸に平行)である。
注記 フェルマーの定理の逆は成立しない。すなわち関数 $f$ が内点で導関数が零であっても、その点が必ず極値点とは限らない。
最も簡単な反例は $f(x) = x^3$,$x \in [-1, 1]$ であり、$f'(0) = 0$ だが $x = 0$ は極値点ではない。
それでもフェルマーの定理は次のような道筋を与えている:導関数の情報から関数の極大値や極小値の存在を判断できる。通常、導関数が零になる点を関数の停留点といい、したがって極値点を知りたければ停留点でさらに一歩議論すればよい(後で詳しく議論する)。
定理 2(ロルの定理) $f(x)$ は閉区間 $[a, b]$ 上で連続、開区間 $(a, b)$ 上で微分可能で、かつ $f(a) = f(b)$ であれば、少なくとも一点 $\xi \in (a, b)$ が存在して $f'(\xi) = 0$。
証明
閉区間 $[a, b]$ 上の連続関数は必ず最大値と最小値をとる(連続関数の最大値・最小値の定理)という事実から、もし最大値と最小値の少なくとも一方が $(a, b)$ 内の内点 $\xi$ で達せられれば、定理 1 より $f'(\xi) = 0$。
逆に、最大値と最小値がともに端点 $a$ と $b$ でのみ達せられ、$f(a) = f(b)$ だから最大値と最小値は等しく、したがって関数は定数であり、この場合は任意の一点で導関数が零である。
読者は自分で例を挙げて示されるように、ロルの定理の条件:閉区間上の連続・開区間上の微分可能・両端での値が等しいこと、の三者はどれも欠かせない。
図 3.10(左)と図 3.11(右) ロルの定理の幾何学的意味
平均値の定理
定理 3(ラグランジュの平均値の定理) $f(x)$ が $[a, b]$ 上で連続、$(a, b)$ 上で微分可能であれば、少なくとも一点 $\xi \in (a, b)$ が存在して
$$f'(\xi) = \frac{f(b) - f(a)}{b - a}.$$
平均値の定理をラグランジュの平均値の定理ともいう。$f(a) = f(b)$ であれば平均値の定理はロルの定理に帰着するから、前者は後者のより一般的な定理である。
幾何学的に見ると、平均値の定理の結果は理解しやすい。
差分商 $\dfrac{f(b)-f(a)}{b-a}$ は割線 $AB$ の傾きである。
この割線を平行移動すると、少なくとも一度は曲線に接する位置に達する機会がある。
すなわち曲線上の割線 $AB$ との距離が最も遠い点 $M$ で、曲線の接線(図 3.12)となる。
物理的に見ると、直線上を運動する質点は、ある瞬間の瞬間速度は必ず運動過程全体の平均速度に等しくなる。
定理 3 の証明 論証の策略は、一般性の命題を特殊な場合すなわちロルの定理に帰着させることである。条件から見ると、平均値の定理は両端での値が等しいかという要求を緩めたものである。
幾何学的なイメージ(図 3.10と図 3.12を比較する)では、ロルの定理の概略図を少し傾けたにすぎない。
そこで補助関数 $F(x)$ を構成して $F(x)$ がロルの定理を満たすようにする(図 3.12 を見ながら考えるとよい)。
点 $(a, f(a))$ と $(b, f(b))$ を結ぶ弦の直線方程式は
$$g(x) = \frac{f(b)-f(a)}{b-a}(x-a) + f(a)$$
だから
$$F(x) = f(x) - g(x) = f(x) - \frac{f(b)-f(a)}{b-a}(x-a) - f(a)$$
とおく。$F(b) = F(a) = 0$ であり $F(x)$ は閉区間 $[a, b]$ 上で連続、開区間 $(a, b)$ 上で微分可能だからロルの定理の三条件を満たし、$(a, b)$ 内に一点 $\xi \in (a, b)$ が存在して
$$F'(\xi) = f'(\xi) - \frac{f(b)-f(a)}{b-a} = 0.$$
これが定理の結論である。
平均値の定理が成立する条件のもとで、区間 $[a, b]$ 上の任意の二点 $x_1$,$x_2$($x_1 < x_2$ としてよい)の間には必ず $x_1 < \xi < x_2$ なる一点 $\xi$ が存在して
$$f'(\xi) = \frac{f(x_1) - f(x_2)}{x_1 - x_2}$$
が成立する。$\theta = \dfrac{\xi-x_1}{x_2-x_1}$ とおくと $0 < \theta < 1$ であることが容易に確認され、よって上式はよく次のように表される:
$$f(x_2) - f(x_1) = f'(x_1 + \theta(x_2-x_1))(x_2-x_1).$$
あるいは増分の言葉で表すと:
$$f(x+\Delta x) - f(x) = f'(x + \theta\Delta x)\Delta x.$$
平均値の定理において $\xi$ の位置は二点 $x_1$,$x_2$ の間にあるほかに、$\xi$ の正確な位置についてはいかなる明確な判断も下していない。
たとえば $f(x) = x^2$ に対して $\dfrac{f(x_1)-f(x_2)}{x_1-x_2} = x_1 + x_2 = f'(\xi) = 2\xi$ だから $\xi = \dfrac{x_1+x_2}{2}$、すなわち $[x_1, x_2]$ の中点である。
一方 $f(x) = x^3$ に対して $f'(x) = 3x^2$ だから
$$\xi = \sqrt{\frac{x_2^2 + x_1 x_2 + x_1^2}{3}}$$
となり状況は複雑になる。それでも平均値の定理を通じて関数自身のいくつかの性質を得ることができ、その中の一つの直接的な結果は本節の最初に提示した問題、すなわち導関数が零の関数は定数関数であるか、という問いに答えるものである。
系 1 関数 $f$ が区間 $I$ 上で連続かつ区間 $I$ の内部のすべての点 $x$ で $f'(x) = 0$ であれば、$f$ は区間 $I$ 上で定数関数である。二つの微分可能な関数 $f$ と $g$ の導関数が等しければ、両者の差は定数である。
証明
区間 $I$ 上の任意の二点 $x_1 < x_2$ をとると、$[x_1, x_2]$ 上で平均値の定理により一点 $\xi$ が存在して
$$f(x_1) - f(x_2) = f'(\xi)(x_2-x_1)$$
が成立する。$f'(x)$ が恒等的に零だから $f'(\xi) = 0$、よって $f(x_1) = f(x_2)$。区間 $I$ 上の任意の二点での関数値が等しいから定数関数である。
一方、微分可能な関数は必ず連続である。しかし平均値の定理は連続性に対してより定量化された結果を与える。すなわち、
系 2 関数 $f$ が区間 $I$ 上で微分可能かつ $|f'(x)| \leq M$(すなわち導関数が有界)であれば、
$$|f(x_2) - f(x_1)| \leq M|x_2 - x_1|$$
上の不等式を満たす関数をリプシッツ連続条件を満たすという。
したがって有界な導関数を持つ関数は必ずリプシッツ連続である。
逆に、リプシッツ連続な関数が微分可能とは限らない($|x|$ は $x = 0$ でリプシッツ連続だが微分可能でない)。
注記 ベクトル値関数に対しては平均値の定理は成立しない。
たとえば $\boldsymbol{f}(\theta) = (\cos\theta, \sin\theta)$ とすると
$$\boldsymbol{f}(2\pi) = \boldsymbol{f}(0) = (1, 0)$$
だが
$$\boldsymbol{f}'(\theta) = (-\sin\theta, \cos\theta)$$
より $|\boldsymbol{f}'(\theta)| = 1$ だから $\boldsymbol{f}(2\pi) - \boldsymbol{f}(0) = \boldsymbol{f}'(\xi)(2\pi - 0)$ を満たす $\xi$ は存在しない。
したがって平均値の定理はベクトル値関数には成立しない。
例 1 任意の定数 $c$ に対して、方程式 $x^3 - 3x + c = 0$ は $[0, 1]$ 上に 2 つの異なる実数解を持たないことを証明せよ。
証明. $f(x) = x^3 - 3x + c$ とおく。もしある $c$ に対して方程式が $[0,1]$ 上に異なる二つの実数解 $x_1$,$x_2$ を持つとすれば($0 \leq x_1 < x_2 \leq 1$)、$f(x_1) = f(x_2) = 0$ となる。
$f(x)$ は $[x_1, x_2]$ 上でロルの定理の三条件を満たすから、$x_1 < \xi < x_2$ が存在して $f'(\xi) = 3\xi^2 - 3 = 0$、すなわち $|\xi| = 1$ となる。
しかし $0 \leq x_1 < \xi < x_2 \leq 1$ より矛盾する。
例 2 $0 < a < b$ として、$\dfrac{b-a}{b} < \ln\dfrac{b}{a} < \dfrac{b-a}{a}$ を証明せよ。
証明. $0 < a < b$ より $[a, b]$ 上で $\ln x$ は平均値の定理の条件を満たし、$\xi \in (a, b)$ が存在して
$$\ln b - \ln a = (\ln x)'|_{x=\xi}(b-a) = \frac{1}{\xi}(b-a).$$
$\dfrac{1}{b} < \dfrac{1}{\xi} < \dfrac{1}{a}$ より求める結果を得る。
例 3 $\arcsin x + \arccos x = \dfrac{\pi}{2}$,$|x| \leq 1$ を証明せよ。
証明. $f(x) = \arcsin x + \arccos x$ とおくと $f'(x) \equiv 0$。系 1 より $f(x) \equiv c$(定数)。$x = 0$ を代入して $c = \dfrac{\pi}{2}$。
関数の単調性と極値
平均値の定理の重要な応用として、関数の導関数が提供する情報を用いて関数自身の単調性を研究する方法を論じる。
定理 4 関数 $f(x)$ が区間 $I$ 上で連続、$I$ の内部で微分可能であるとする。$I$ の内部のすべての点 $x$ で $f'(x) > 0$ であれば、$f(x)$ は $I$ 上で厳密に単調増加;$I$ の内部のすべての点 $x$ で $f'(x) < 0$ であれば、$f(x)$ は $I$ 上で厳密に単調減少。
証明
$f'(x) > 0$ の場合($f'(x) < 0$ の場合は同様に証明できる)。$x_1$,$x_2$ を $I$ 内の任意の二点で $x_1 < x_2$ とする。定理の条件より $f$ は $[x_1, x_2]$ 上で連続、$(x_1, x_2)$ 上で微分可能だから平均値の定理より $\xi \in (x_1, x_2)$ が存在して
$$f(x_2) - f(x_1) = f'(\xi)(x_2-x_1).$$
すべての $x$ で $f'(x) > 0$ だから $f'(\xi) > 0$;また $x_2 - x_1 > 0$ より $f(x_2) - f(x_1) > 0$、すなわち $f$ は厳密に単調増加である。
定理 4 は、関数の区間上の変化率が正(負)であれば関数は単調増加(減少)することを示している。
幾何学的には(図 3.13)、曲線 $f$ のグラフ上の各点 $(x, f(x))$ での接線の傾きがすべて正(接線と $x$ 軸正方向のなす角が $0 < \alpha < \frac{\pi}{2}$ を満たす)であれば、曲線は上昇傾向を示す。
逆に曲線上の各点での接線の傾きがすべて負であれば($\frac{\pi}{2} < \alpha < \pi$)、曲線は下降傾向を示す。
上述の分析より、関数 $f(x)$ が区間 $I$ の内部のある一点 $x_0$ の左側で $f'(x) > 0$、右側で $f'(x) < 0$ であれば、関数は $x_0$ の左側で厳密に単調増加、右側で厳密に単調減少であるから、$x_0$ は極大値点であるべきである。
同様に極小値点も分析できる。
実際に、定理 4 は関数の極値の一つの簡単かつ実用的な判別法を与えている。
この判別法を明確に述べるために、関数 $f(x)$ の定義域 $I$ の内部での極値の候補点とは:$f'(x) = 0$(関数 $f(x)$ の停留点)を満たす点か、または関数 $f(x)$ がその点で微分不可能な点のことをいう。
定理 5 $x_0$ を関数 $f(x)$ の区間 $I$ 内の極値の候補点で、$f(x)$ は $x_0$ で連続であるとする。
- $f(x)$ が $x_0$ の左側のある区間内(すなわちある $\delta > 0$ に対して $(x_0-\delta, x_0)$ 内)で $f'(x) > 0$ であり、$x_0$ の右側のある区間内(すなわちある $\delta' > 0$ に対して $(x_0, x_0+\delta')$ 内)で $f'(x) < 0$ であれば、$x_0$ は極大値点。
- $f(x)$ が $x_0$ の左側のある区間内で $f'(x) < 0$ であり、$x_0$ の右側のある区間内で $f'(x) > 0$ であれば、$x_0$ は極小値点。
- $f(x)$ が $x_0$ の左右の区間内で $f'(x)$ の符号が同じであれば、$x_0$ は極値点でない。
図 3.14 からこれらの判別規則は一目瞭然であることがわかる。
定理 5 の直接的な結果として、連続関数の閉区間上の最大値・最小値を求めるには、まず関数の区間内での極値の候補点を求め、次に関数のこれらの極値の候補点での値と両端点での値を比較すれば結論が得られる(連続関数は閉区間の端点で最大・最小値に達することもあることに注意)。
ここまでで関数の(1階)導関数が提供する情報を用いて関数自身の単調区間と極値の候補点を判断し、同時に関数のグラフの基本的な輪郭を把握した。
しかし関数のグラフのより精細な面を示すには、さらに関数の2階導関数の助けが必要である。
次の定理は2階導関数から停留点の中で極値点を判別する方法を示している。その他の2階導関数を利用した関数の性質の研究は、凸凹性と曲率の節で論じる。
定理 6 関数 $f(x)$ は $x_0$ で2階導関数を持ち、$x_0$ は $f(x)$ の停留点($f'(x_0) = 0$)であるとする。$f''(x_0) < 0$ であれば $x_0$ は関数の極大値点;$f''(x_0) > 0$ であれば $x_0$ は関数の極小値点(練習問題の第 18 問を参照)。
なお、$f''(x_0) = 0$ であれば $x_0$ は極大値点・極小値点・極値点でない点のどれでもありうる(反例を挙げよ)。
例 4 $0 < x \leq \dfrac{\pi}{2}$ のとき $\dfrac{2}{\pi}x \leq \sin x$ であることを証明せよ。
証明. $f(x) = \dfrac{\sin x}{x}$ とする。明らかにこれは $\left[0, \dfrac{\pi}{2}\right]$ 上の連続関数($x = 0$ での値を 1 と定義)である。$\left(0, \dfrac{\pi}{2}\right)$ 上では
$$f'(x) = \frac{\cos x\,(x - \tan x)}{x^2} < 0$$
($0 < x < \dfrac{\pi}{2}$ のとき $\cos x > 0$,$\tan x > x$ であることは関数の極限の章の補題で既に示した)。
よって $f(x)$ は $\left[0, \dfrac{\pi}{2}\right]$ 上で厳密に単調減少だから、$x \in \left(0, \dfrac{\pi}{2}\right]$ に対して
$$f(x) = \frac{\sin x}{x} \geq f\!\left(\frac{\pi}{2}\right) = \frac{2}{\pi}$$
が成り立ち、これが求める結果である。
例 5 関数 $f(x) = e^{-x^2}$($x \in (-\infty, +\infty)$)の単調区間と極値を求めよ。
解. $f'(x) = -2xe^{-x^2}$ より停留点は $x = 0$。$x \in (-\infty, 0)$ のとき $f'(x) > 0$;$x \in (0, +\infty)$ のとき $f'(x) < 0$。よって関数は区間 $(-\infty, 0]$ 上で厳密に単調増加、$[0, +\infty)$ 上で厳密に単調減少、$x = 0$ は関数の極大値点であり極大値は $f(0) = 1$。
例 6 関数 $f(x) = x^3 - 3x^2 - 9x + 5$ の区間 $[-4, 4]$ 上の最大値と最小値を求めよ。
解. $f(x)$ は区間 $(-4, 4)$ 上で微分可能であり、
$$f'(x) = 3x^2 - 6x - 9 = 3(x+1)(x-3)$$
より $f(x)$ の停留点は $x_1 = -1$,$x_2 = 3$。
$f(-1) = 10$,$f(3) = -22$ であり端点の値は $f(-4) = -71$,$f(4) = -15$。
これらの値を比較すると、関数 $f(x)$ は停留点 $x_1 = -1$ で最大値 $10$ をとり、端点 $x = -4$ で最小値 $-71$ をとる。
例 7 $x > 0$,$0 < \alpha < 1$ として、$x^\alpha - \alpha x \leq 1 - \alpha$ を証明せよ。
証明. $f(x) = x^\alpha - \alpha x$,$x > 0$ とおくと $f'(x) = \alpha(x^{\alpha-1} - 1)$、よって唯一の停留点は $x = 1$。$0 < \alpha < 1$ より $0 < x < 1$ のとき $f'(x) > 0$,$x > 1$ のとき $f'(x) < 0$。
したがって関数は $x = 1$ で区間 $x > 0$ 全体の最大値をとり、$f(x) \leq f(1) = 1 - \alpha$ が $x > 0$ のすべてで成立する。これが求める結果である。
例 8 与えられた直線上に一点 $P$ を求め、この点から既知の二つの固定点 $A$ と $B$ への距離の和が最小となるようにせよ。
解. これら二点が直線の両側にあれば $P$ は明らかに直線と線分 $AB$ の交点であるから、$A$ と $B$ が直線の同じ側にある場合のみ考えればよい。
与えられた直線を $x$ 軸とし(図 3.15)、$A$ は $y$ 軸上にあり座標は $A(0, h)$,$B$ の座標は $B(a, b)$ とする。
求める点の座標は $P(x, 0)$ である。問題の要求、すなわち最小化するのは
$$|AP| + |PB| = \sqrt{x^2+h^2} + \sqrt{(x-a)^2+b^2} = f(x)$$
である。$f'(x) = \dfrac{x}{\sqrt{x^2+h^2}} + \dfrac{x-a}{\sqrt{(x-a)^2+b^2}}$ であり、$f'(x) = 0$ は
$$\frac{x}{\sqrt{x^2+h^2}} = \frac{a-x}{\sqrt{(x-a)^2+b^2}}$$
すなわち条件 $\cos\alpha = \cos\beta$(ここで $\alpha$ と $\beta$ はそれぞれ直線 $AP$ と $BP$ と $x$ 軸のなす鋭角)が成立する点である。
$f''(x) = \dfrac{h^2}{(x^2+h^2)^{3/2}} + \dfrac{b^2}{((x-a)^2+b^2)^{3/2}} > 0$ だから $f'$ は狭義単調増加で、$f'(x)=0$ の解は高々一つである。$f'(0) < 0 < f'(a)$ なので解は $(0, a)$ にただ一つあり、そこが最小点である。このとき $x = \dfrac{ah}{h+b}$ で、$A$ と $B$ の直線に関する対称点 $B'(a, -b)$ を結ぶ線分が直線と交わる点に当たる。
この問題の解と光学中の有名なフェルマーの最短時間原理は密接な関係がある。すなわち光線は鏡面上で入射角と反射角が等しい。
練習問題(平均値の定理)
- $f(x) = (x-1)(x-2)(x-3)(x-4)$ として、方程式 $f'(x) = 0$ の実数解の個数を確定し、解が存在する区間を指摘せよ。
- 関数 $f(x)$ が区間 $[1, 2]$ 上で2階導関数を持ち、$f(1) = f(2) = 0$ であるとする。$F(x) = (x-1)^2 f(x)$ とおくと、区間 $(1, 2)$ 内に少なくとも一点 $\xi$ が存在して $F''(\xi) = 0$ であることを証明せよ。
- 平均値の定理の下述べる意味での逆は成立しないことを例を挙げて示せ:$\xi \in (a, b)$ が指定された一点であれば、$c, d \in [a, b]$ が存在して $\dfrac{f(c)-f(d)}{c-d} = f'(\xi)$ が成立する(ヒント:$f(x) = x^3$,$\xi = 0$ を考えよ)。
- 次の恒等式を証明せよ。
- $\arctan x = \arcsin\dfrac{x}{\sqrt{1+x^2}}$;
- $\arctan x + \arctan\dfrac{1-x}{1+x} = \begin{cases} \dfrac{\pi}{4}, & x > -1, \\[4pt] -\dfrac{3\pi}{4}, & x < -1. \end{cases}$
- 関数 $f(x)$ が閉区間 $[0, 1]$ 上で微分可能で、任意の $x \in [0, 1]$ で $f(x) \in (0, 1)$ かつすべての点で $f'(x) \neq 1$ であれば、$(0, 1)$ 内にただ一つの $x$ が存在して $f(x) = x$ であることを証明せよ。
- 関数 $f(x)$ が $[0, 1]$ 上で連続、$(0, 1)$ 上で微分可能かつ $|f'(x)| < 1$,$f(0) = f(1)$ であるとする。$[0, 1]$ 上の任意の二点 $x_1, x_2$ に対して $|f(x_1) - f(x_2)| < \dfrac{1}{2}$ であることを証明せよ。
- 関数 $f(x)$ が至る所で微分可能かつ $f'(x) = f(x)$ であれば、$f(x) = Ce^x$($C$ は任意定数)であることを証明せよ。
- 恒等的に定数でない関数 $f(x)$ が閉区間 $[a, b]$ 上で連続、開区間 $(a, b)$ 上で微分可能かつ $f(a) = f(b)$ であれば、$(a, b)$ 内に一点 $\xi$ が存在して $f'(\xi) > 0$ であることを証明せよ。
- 関数 $f(x)$ が $[a, +\infty)$ 上で微分可能かつ $\displaystyle\lim_{x\to+\infty} f'(x) = 0$ であれば、次を証明せよ。
- $\displaystyle\lim_{x\to+\infty}[f(x+1) - f(x)] = 0$;
- $\displaystyle\lim_{x\to+\infty}\dfrac{f(x)}{x} = 0$。
- 関数 $f(x)$ が(有限)開区間 $(a, b)$ 上で有界な導関数を持てば、$f(x)$ は $(a, b)$ 上でも有界であることを証明せよ。開区間を無限区間に変えても結論は成立するか?命題の逆命題も成立するか?
- すべての実数 $x, y$ に対して不等式 $|f(x) - f(y)| \leq M|x-y|^2$($M$ は定数)が成立するならば $f(x)$ は恒等的に定数であることを証明せよ。
- 関数 $f(x)$ が区間 $[x_0, x_0+\delta]$ 上で連続(ここで $\delta > 0$)、$(x_0, x_0+\delta)$ 上で微分可能であるとする。$\displaystyle\lim_{x\to x_0+0} f'(x) = l$(ここで $l$ は無限大でもよい)であれば、$f(x)$ の $x_0$ における右導関数も $l$ に等しい、すなわち
$$f'_+(x_0) = \lim_{x\to x_0+0} f'(x).$$
(区間 $[x_0, x_0+\delta]$ を $[x_0-\delta, x_0]$ に変えても類似の結論が得られる。) - 上の問の結論を応用して次を証明せよ。
- 関数 $x^{\frac{1}{3}}$ は $x = 0$ で微分不可能;
- 関数 $\arcsin x, \arccos x$ は $x = 1$ で左導関数を持たず、$x = -1$ で右導関数を持たない。
- 関数 $f(x)$ が一つの区間内で至る所で微分可能であれば、導関数 $f'(x)$ は区間内に第1種の不連続点を持てない、すなわち区間内のすべての点で $f'(x)$ は連続であるか第2種の不連続点を持つ(区間内で第1種の不連続点を持つ関数、たとえば $\operatorname{sgn} x$ が何らかの関数の導関数にはなれないことがこれよりわかる)。
- 関数 $f(x)$ が区間 $I$ 上で連続かつ(高々有限個の点を除いて)$I$ の内部の導関数が正(負)であれば、$f(x)$ は $I$ 上で厳密に単調増加(減少)である(注意:例外の点で $f(x)$ は微分不可能でもよい)。
- 関数 $f(x)$ と $g(x)$ がともに区間 $I$ 上で連続かつ(高々有限個の点を除いて)$I$ 内部で $f'(x) > g'(x)$ が成立するとし、$a \in I$ として $f(a) = g(a)$ であれば、$x \in I$ かつ $x > a$ のとき $f(x) > g(x)$;$x \in I$ かつ $x < a$ のとき $f(x) < g(x)$。
- 関数 $f(x)$ が $[0, +\infty)$ 上で微分可能かつ $f(0) = 0$,$f'(x)$ が厳密に単調増加であれば、$\dfrac{f(x)}{x}$ も厳密に単調増加であることを証明せよ。
- $x_0$ が関数 $f(x)$ の一つの極値の候補点で $f(x)$ が $x_0$ で2階微分可能かつ $f''(x_0) \neq 0$ であれば、$x_0$ は極値点であることを証明せよ(ヒント:現在すでに $f'(x_0) = 0$ となっている)。
なお $f''(x_0) = 0$ であれば $x_0$ は極大値点・極小値点・極値点でない点のどれでもありうることを例を挙げて説明せよ。 - 次の関数の単調区間と極値を求めよ。
- $y = 2x^3 - 3x^2$;
- $y = x^{\frac{2}{3}}$;
- $y = x^2 e^{-x^2}$;
- $y = x^{\frac{1}{3}}$;
- $y = \dfrac{(\ln x)^2}{x}$;
- $y = \arctan x - \dfrac{1}{2}\ln(1+x^2)$。
- 次の関数の所与の区間上の最大値と最小値を求めよ。
- $y = x^4 - 2x^2 + 5$,$[-2, 2]$;
- $y = \sin 2x - x$,$\left[-\dfrac{\pi}{2}, \dfrac{\pi}{2}\right]$;
- $y = \arctan\dfrac{1-x}{1+x}$,$[0, 1]$;
- $y = x\ln x$,$(0, +\infty)$。
- 次の不等式を証明せよ。
- $0 < x \leq 1$,$p > 1$ のとき $\dfrac{1}{2^{p-1}} \leq x^p + (1-x)^p \leq 1$;
- $\tan x > x - \dfrac{x^3}{3}$,$x \in \left(0, \dfrac{\pi}{2}\right)$;
- $\dfrac{\tan x_2}{\tan x_1} > \dfrac{x_2}{x_1}$,$0 < x_1 < x_2 < \dfrac{\pi}{2}$;
- $\ln(1+x) > \dfrac{\arctan x}{1+x}$,$x > 0$;
- $1 + x\ln(x+\sqrt{1+x^2}) \geq \sqrt{1+x^2}$,$x$ は任意の実数;
- $0 < x < \dfrac{\pi}{2}$ のとき $\dfrac{x}{\sin x} > \dfrac{4}{3} - \dfrac{1}{3}\cos x$;かつ右端の定数 $\dfrac{4}{3}$ は大きくできないことを示せ。
- 次の関数の実数解の個数と存在範囲を確定せよ。
- $x^3 - 6x^2 + 9x - 10$;
- $ax - \ln x$(ここで $a > 0$)。
解答
- $f'(x) = 0$ は 3 次方程式なので実数解は高々 3 個。$f(1) = f(2) = f(3) = f(4) = 0$ にロルの定理を適用すると、$(1,2)$,$(2,3)$,$(3,4)$ に一つずつ解がある。ゆえにちょうど 3 個。
- $F(1) = F(2) = 0$ よりロルの定理で $\xi_1 \in (1,2)$ に $F'(\xi_1) = 0$。また $F'(x) = 2(x-1)f(x) + (x-1)^2f'(x)$ より $F'(1) = 0$。$F'$ に $[1, \xi_1]$ でロルの定理を適用すると $\xi \in (1, \xi_1)$ で $F''(\xi) = 0$。
- $f(x) = x^3$,$\xi = 0$ では $f'(0) = 0$ だが、$c \neq d$ のとき $\dfrac{c^3 - d^3}{c - d} = c^2 + cd + d^2 > 0$。
- (a) $g(x) = \arctan x - \arcsin\dfrac{x}{\sqrt{1+x^2}}$ とおくと $g'(x) = \dfrac{1}{1+x^2} - \dfrac{1}{1+x^2} = 0$,$g(0) = 0$。(b) 左辺の導関数は $x \neq -1$ で $0$。各区間で定数で、$x = 0$ で $\dfrac\pi4$。$x < -1$ では $x \to -\infty$ の極限が $-\dfrac\pi2 - \dfrac\pi4 = -\dfrac{3\pi}{4}$。
- $h(x) = f(x) - x$ は $h(0) = f(0) > 0$,$h(1) = f(1) - 1 < 0$ なので零点をもつ。$h' = f' - 1 \neq 0$ だからロルの定理より零点は高々一つ。
- $|x_1 - x_2| \leq \dfrac12$ なら平均値の定理で $|f(x_1) - f(x_2)| < \dfrac12$。$x_1 < x_2$ で $x_2 - x_1 > \dfrac12$ なら、$f(0) = f(1)$ より $|f(x_2) - f(x_1)| \leq |f(x_2) - f(1)| + |f(0) - f(x_1)| < (1 - x_2) + x_1 = 1 - (x_2 - x_1) < \dfrac12$。
- $(f(x)e^{-x})' = (f' - f)e^{-x} = 0$ なので $f(x)e^{-x} = C$。
- 定数でないから $f(c) \neq f(a)$ なる $c$ がある。$f(c) > f(a)$ なら $[a, c]$ で、$f(c) < f(a)$ なら $[c, b]$ で平均値の定理を使うと、傾きが正の点が得られる。
- (a) 平均値の定理より $f(x+1) - f(x) = f'(\xi)$,$\xi \in (x, x+1)$ で、$\xi \to \infty$ なので $0$。(b) $\varepsilon > 0$ に対し $x \geq X$ で $|f'| < \varepsilon$ とすると $|f(x) - f(X)| \leq \varepsilon(x - X)$。$\left|\dfrac{f(x)}{x}\right| \leq \dfrac{|f(X)|}{x} + \varepsilon$ なので $\limsup \leq \varepsilon$。
- $|f'| \leq M$ なら $|f(x) - f(c)| \leq M(b - a)$ で有界。無限区間では成り立たない($f(x) = x$)。逆も成り立たない($\sqrt{x}$ は $(0,1)$ 上で有界だが導関数は有界でない)。
- $\left|\dfrac{f(x) - f(y)}{x - y}\right| \leq M|x - y| \to 0$ より $f' \equiv 0$ で定数。
- 平均値の定理より $\dfrac{f(x) - f(x_0)}{x - x_0} = f'(\xi)$,$x_0 < \xi < x$。$x \to x_0^+$ で $\xi \to x_0^+$ なので、極限は $l$。
- (a) $f'(x) = \dfrac13x^{-2/3} \to +\infty$ なので $f'_+(0) = +\infty$ で微分不可能。(b) $\arcsin' = \dfrac{1}{\sqrt{1-x^2}} \to +\infty$($x \to 1^-$)なので左微分係数は有限でない。他も同様。
- $f'$ が $c$ で第 1 種の不連続点をもつなら、$f'(c\pm0)$ が存在する。前問より $f'(c) = f'_{\pm}(c) = f'(c\pm0)$ となり連続になる。
- 例外点で区間を分割し、各小区間で定理 4 を使うと各小区間で狭義単調。連続性により小区間をつないでも単調増加。
- $h = f - g$ とすると $h' > 0$(有限個の点を除く)、$h(a) = 0$。前問より $h$ は狭義単調増加。
- $\left(\dfrac{f(x)}{x}\right)' = \dfrac{xf'(x) - f(x)}{x^2}$。平均値の定理より $f(x) = f(x) - f(0) = xf'(\xi)$,$0<\xi<x$。$f'$ が狭義単調増加なので $xf'(x) - f(x) = x(f'(x) - f'(\xi)) > 0$。
- $f'(x_0) = 0$(微分可能な候補点)で、$f''(x_0) = \lim\dfrac{f'(x)}{x - x_0} > 0$ なら、$x_0$ の左で $f' < 0$,右で $f' > 0$ なので極小。$f''(x_0)<0$ なら極大。$f''(x_0) = 0$ の例:$x^3$(極値なし),$x^4$(極小),$-x^4$(極大)。
- (a) $y' = 6x(x-1)$。$(-\infty, 0]$ で増加、$[0,1]$ で減少、$[1,\infty)$ で増加。極大値 $0$($x=0$),極小値 $-1$($x=1$)。(b) $(-\infty,0]$ で減少、$[0,\infty)$ で増加。$x=0$ で極小値 $0$(尖点)。(c) $y' = 2x(1-x^2)e^{-x^2}$。$(-\infty,-1]$ と $[0,1]$ で増加、$[-1,0]$ と $[1,\infty)$ で減少。極大値 $e^{-1}$($x=\pm1$),極小値 $0$($x=0$)。(d) $\mathbb{R}$ 上で狭義単調増加、極値なし。(e) $y' = \dfrac{\ln x(2 - \ln x)}{x^2}$。$(0,1]$ で減少、$[1, e^2]$ で増加、$[e^2,\infty)$ で減少。極小値 $0$($x=1$)、極大値 $\dfrac{4}{e^2}$($x = e^2$)。(f) $y' = \dfrac{1-x}{1+x^2}$。$x=1$ で極大値 $\dfrac\pi4 - \dfrac12\ln 2$。$(-\infty,1]$ で増加、$[1,\infty)$ で減少。
- (a) 停留点 $0,\pm1$ で値 $5, 4, 4$、端点 $x=\pm2$ で $13$。最大値 $13$,最小値 $4$。(b) $y' = 2\cos2x - 1 = 0$ より $x = \pm\dfrac\pi6$。$y(\pm\dfrac\pi6) = \pm\left(\dfrac{\sqrt3}{2} - \dfrac\pi6\right)$,端点 $y(\mp\dfrac\pi2) = \pm\dfrac\pi2$。最大値 $\dfrac\pi2$($x=-\dfrac\pi2$),最小値 $-\dfrac\pi2$($x=\dfrac\pi2$)。(c) $y = \dfrac\pi4 - \arctan x$ なので最大値 $\dfrac\pi4$($x=0$),最小値 $0$($x=1$)。(d) $y' = \ln x + 1$。$x = \dfrac1e$ で最小値 $-\dfrac1e$。最大値なし。
- (a) $f(x) = x^p + (1-x)^p$ の $f' = p(x^{p-1} - (1-x)^{p-1}) = 0$ は $x = \dfrac12$。最小値 $2^{1-p}$,端点で $1$(最大)。(b) $g = \tan x - x + \dfrac{x^3}{3}$,$g' = \tan^2x + x^2 > 0$,$g(0) = 0$。(c) $\dfrac{\tan x}{x}$ が増加:$\left(\dfrac{\tan x}{x}\right)' = \dfrac{x - \sin x\cos x}{x^2\cos^2x} > 0$($\sin x\cos x = \tfrac12\sin2x < x$)。(d) $g = (1+x)\ln(1+x) - \arctan x$,$g(0)=0$,$g' = \ln(1+x) + 1 - \dfrac{1}{1+x^2} > 0$。(e) $g = 1 + x\operatorname{arsinh}x - \sqrt{1+x^2}$ の $g' = \operatorname{arsinh}x$ で $x=0$ が最小、$g(0) = 0$。(f) $h = 3x - (4 - \cos x)\sin x$,$h(0) = 0$,$h' = 2(1-\cos x)^2 > 0$。$\dfrac43$ を大きくできないこと:$x \to 0$ で左辺 $\to 1$,右辺 $\to \dfrac43' - \dfrac13 = \dfrac43'-\dfrac13$($\dfrac43'$ を $\dfrac43+\varepsilon$ に替えると右辺 $\to 1+\varepsilon > 1$)で不等式が破れる。
- (a) $f' = 3(x-1)(x-3)$,極大値 $f(1) = -6 < 0$,極小値 $f(3) = -10 < 0$。実数解はただ一つで、$f(4) = -6 < 0 < f(5) = 10$ より $(4,5)$ にある。(b) $f' = a - \dfrac1x$ で $x = \dfrac1a$ が最小点、最小値 $1 + \ln a$。$a > \dfrac1e$ なら解なし、$a = \dfrac1e$ なら $x = e$ の一つ、$0 < a < \dfrac1e$ なら $\left(0, \dfrac1a\right)$ と $\left(\dfrac1a, \infty\right)$ に一つずつ。
コーシーの平均値の定理
本節の主な目的は不定形の極限を求めることである。
「不定形」とは $x$ がある値(または無限大)に近づくとき、関数の極限が一定した結果を持たず、任意の実数になり得るか、あるいは極限が存在しない場合のことをいう。
不定形の極限問題を解くとき、ロピタルの定理は非常に有効な方法であり、そのためにまず次のコーシーの平均値の定理を証明する。
定理 1(コーシーの平均値の定理) $f(x)$ と $g(x)$ が $[a, b]$ 上で連続、$(a, b)$ 上で微分可能で、かつ任意の一点 $x \in (a, b)$ で $g'(x) \neq 0$ であれば、$(a, b)$ 内に少なくとも一点 $\xi$ が存在して
$$\frac{f(b) - f(a)}{g(b) - g(a)} = \frac{f'(\xi)}{g'(\xi)}.$$
ここで $g'(x) \neq 0$ よりラグランジュの平均値の定理から $g(b) - g(a) \neq 0$ だから左辺は意味を持つ。
証明
$g(x) = x$ ととればコーシーの平均値の定理はラグランジュの平均値の定理に帰着するから、前者は後者の一般化である。
ラグランジュの平均値の定理の証明と同様に、ラグランジュの平均値の定理の証明中で構成した補助関数 $F(x)$ において $x$ を $g(x)$(対応して $a$ を $g(a)$、$b$ を $g(b)$)に置き換える。
すなわち補助関数を
$$F(x) = f(x) - f(a) - \frac{f(b)-f(a)}{g(b)-g(a)}[g(x) - g(a)]$$
とおく。$F(b) = F(a) = 0$ であり $F(x)$ は閉区間 $[a, b]$ 上で連続、開区間 $(a, b)$ 上で微分可能だからロルの定理の三条件を満たし、$(a, b)$ 内に一点 $\xi$ が存在して
$$F'(\xi) = f'(\xi) - \frac{f(b)-f(a)}{g(b)-g(a)}g'(\xi) = 0.$$
これが定理の結論である。
$\dfrac{0}{0}$ 型の不定形
定理 2(ロピタルの定理) ある固定点 $x_0$ に対して $f(x)$ と $g(x)$ が
$$\lim_{x \to x_0} f(x) = \lim_{x \to x_0} g(x) = 0$$
を満たすとする。もし
$$\lim_{x \to x_0} \frac{f'(x)}{g'(x)} = l$$
(ここで $l$ は有限実数でも $\infty$ でもよい)であれば、$x \to x_0$ のとき
$$\lim_{x \to x_0} \frac{f(x)}{g(x)} = l.$$
証明
定理中の条件
$$\lim_{x \to x_0} \frac{f'(x)}{g'(x)} = l$$
は次のような仮定を含んでいる:$x_0$ を含む区間 $(x_0-\delta, x_0+\delta)$ が存在して、区間内の任意の一点($x_0$ は除外してよい)で $f'(x)$ と $g'(x)$ がともに存在し、かつ $g'(x) \neq 0$ である。
$\displaystyle\lim_{x\to x_0} f(x) = \lim_{x\to x_0} g(x) = 0$ かつ $\frac{f(x)}{g(x)}$ の極限と関数 $f$ と $g$ の $x_0$ での値は無関係だから、$f(x_0) = g(x_0) = 0$ としてよい。このようにすれば $f$ と $g$ は $x_0$ でも連続になる。
区間 $(x_0-\delta, x_0+\delta)$ 内の任意の一点 $x$($x \neq x_0$)をとると、$x$ と $x_0$ を端点とする閉区間上で $f$ と $g$ はコーシーの平均値の定理の一切の条件を満たすから、$x$ と $x_0$ の間に一点 $\xi$ が存在して
$$\frac{f(x)}{g(x)} = \frac{f(x) - f(x_0)}{g(x) - g(x_0)} = \frac{f'(\xi)}{g'(\xi)}.$$
$|\xi - x_0| < |x - x_0|$ だから $x \to x_0$ のとき $\xi \to x_0$。定理の仮定より
$$\lim_{x\to x_0} \frac{f(x)}{g(x)} = \lim_{\xi\to x_0} \frac{f'(\xi)}{g'(\xi)} = l.$$
上述の結果は孤立したものではなく、注意すべき点がある。
一方では、上の証明からわかるように、定理中の極限過程を片側極限($x \to x_0 \pm 0$)に変えても結論は同様に成立する。
また極限過程 $x \to +\infty$,$x \to -\infty$ あるいは $x \to \infty$ のときの「$\dfrac{0}{0}$」型の不定形に対しても類似のロピタルの定理がある。
$x \to \infty$ の場合を例にとると次のようになる。
$\displaystyle\lim_{x\to\infty} f(x) = \lim_{x\to\infty} g(x) = 0$,$\displaystyle\lim_{x\to\infty} \frac{f'(x)}{g'(x)} = l$ であれば、$\displaystyle\lim_{x\to\infty} \frac{f(x)}{g(x)} = l$。
証明の過程では $y = \dfrac{1}{x}$ とおき、$x \to \infty$ のとき $y \to 0$ だから
$$\lim_{x\to\infty}\frac{f(x)}{g(x)} = \lim_{y\to 0}\frac{f\!\left(\dfrac{1}{y}\right)}{g\!\left(\dfrac{1}{y}\right)} = \lim_{y\to 0}\frac{\dfrac{1}{y^2}f'\!\left(\dfrac{1}{y}\right)}{\dfrac{1}{y^2}g'\!\left(\dfrac{1}{y}\right)} = \lim_{x\to\infty}\frac{f'(x)}{g'(x)} = l.$$
他方、ロピタルの定理を使うとき、$\dfrac{f'(x)}{g'(x)}$ が依然として「$\dfrac{0}{0}$」型の不定形であれば、すなわち $\displaystyle\lim_{x\to x_0}f(x) = \lim_{x\to x_0}g(x) = 0$ かつ $\displaystyle\lim_{x\to x_0}f'(x) = \lim_{x\to x_0}g'(x) = 0$ であれば、2階導関数を考えて $\displaystyle\lim_{\xi\to x_0}\frac{f''(\xi)}{g''(\xi)} = l$ であれば $\displaystyle\lim_{\xi\to x_0}\frac{f(\xi)}{g(\xi)} = l$ となる。
何回使っても構わないが、前提条件の一つは必ず「$\dfrac{0}{0}$」型の不定形であることであり、もう一つは後者の極限が必ず存在することである。二つの条件はどちらも欠かせない。
例 1 $\displaystyle\lim_{x\to 0}\frac{e^{2x}-1}{\ln(1+x)}$ を求めよ。
解. これは「$\dfrac{0}{0}$」型の不定形であり、
$$\lim_{x\to 0}\frac{(e^{2x}-1)'}{(\ln(1+x))'} = \lim_{x\to 0}\frac{2e^{2x}}{\dfrac{1}{1+x}} = 2$$
よってロピタルの定理より $\displaystyle\lim_{x\to 0}\frac{e^{2x}-1}{\ln(1+x)} = 2$。
例 2 $\displaystyle\lim_{x\to 0}\frac{e^x+e^{-x}-2}{\sin^2 x}$ を求めよ。
解. 「$\dfrac{0}{0}$」型の不定形であり、分子・分母をそれぞれ微分した分数式は
$$\frac{(e^x+e^{-x}-2)'}{(\sin^2 x)'} = \frac{e^x - e^{-x}}{\sin 2x}$$
依然として「$\dfrac{0}{0}$」型の不定形だから再びロピタルの定理を適用すると、
$$\lim_{x\to 0}\frac{e^x+e^{-x}-2}{\sin^2 x} = \lim_{x\to 0}\frac{e^x-e^{-x}}{\sin 2x} = \lim_{x\to 0}\frac{e^x+e^{-x}}{2\cos 2x} = 1.$$
$\dfrac{\infty}{\infty}$ 型の不定形
$x$ が固定した有限数に近づく場合でも無限大に近づく場合でも、また片側極限の場合でも、「$\dfrac{\infty}{\infty}$」型の不定形の極限に対してロピタルの定理は同様に有効である。
証明の方法もコーシーの平均値の定理に基づいているが証明過程が少し煩雑なため、詳細な議論は省略する。
ここでは $x \to x_0$ の場合の完全な記述を列挙する。
定理 3(ロピタルの定理) ある固定点 $x_0$ に対して $f(x)$ と $g(x)$ が
$$\lim_{x \to x_0} f(x) = \lim_{x \to x_0} g(x) = \infty$$
を満たすとする。もし
$$\lim_{x \to x_0} \frac{f'(x)}{g'(x)} = l$$
(ここで $l$ は有限実数でも $\infty$ でもよい)であれば、$x \to x_0$ のとき
$$\lim_{x \to x_0} \frac{f(x)}{g(x)} = l.$$
例 3 $\alpha > 0$ として $\displaystyle\lim_{x\to+\infty}\frac{\ln x}{x^\alpha}$ を求めよ。
解. 「$\dfrac{\infty}{\infty}$」型の不定形だから、
$$\lim_{x\to+\infty}\frac{\ln x}{x^\alpha} = \lim_{x\to+\infty}\frac{\frac{1}{x}}{\alpha x^{\alpha-1}} = \lim_{x\to+\infty}\frac{1}{\alpha x^\alpha} = 0.$$
$x$ を $\dfrac{1}{x}$ に置き換えれば、$\displaystyle\lim_{x\to 0^+} x^\alpha\ln x = 0$ もわかる。
例 4 $\mu > 0$,$a > 1$ として $\displaystyle\lim_{x\to+\infty}\frac{x^\mu}{a^x}$ を求めよ。
解. 正整数 $n > \mu$ をとれば $x > 1$ のとき
$$0 < \frac{x^\mu}{a^x} < \frac{x^n}{a^x}.$$
$n$ 回ロピタルの定理を適用すると
$$\lim_{x\to+\infty}\frac{x^n}{a^x} = \lim_{x\to+\infty}\frac{nx^{n-1}}{a^x\ln a} = \cdots = \lim_{x\to+\infty}\frac{n!}{a^x(\ln a)^n} = 0.$$
よって $\displaystyle\lim_{x\to+\infty}\frac{x^\mu}{a^x} = 0$。
注記 例 3 は、$x \to +\infty$ のとき冪関数 $x^\alpha$ ($\alpha > 0$) が対数関数 $\ln x$ より高位の無限大量であることを示している。また例 4 は、指数関数 $a^x$ ($a>1$) が冪関数 $x^\mu$ より高位の無限大量であることを示している。
その他の型の不定形
「$\dfrac{0}{0}$」型と「$\dfrac{\infty}{\infty}$」型の不定形のほかに、さらに次のいくつかの型の不定形がある:
$$\text{``}0\cdot\infty\text{''}, \quad \text{``}\infty-\infty\text{''}, \quad \text{``}1^\infty\text{''}, \quad \text{``}0^0\text{''}, \quad \text{``}\infty^0\text{''}$$
前の二種は容易に「$\dfrac{0}{0}$」型あるいは「$\dfrac{\infty}{\infty}$」型に変形できる;後の三種は対数をとってから基本的な「$\dfrac{0}{0}$」型あるいは「$\dfrac{\infty}{\infty}$」型に変形できる。したがって上述の五種の不定形はすべてロピタルの定理で処理できる。
いくつかの具体的な例でその処理方法を示す。
例 5 $\displaystyle\lim_{x\to+\infty} x\!\left(\dfrac{\pi}{2} - \arctan x\right)$ を求めよ。
解. 「$0\cdot\infty$」型の不定形であり、「$\dfrac{0}{0}$」型に変形して処理する:
$$\lim_{x\to+\infty} x\!\left(\frac{\pi}{2} - \arctan x\right)
= \lim_{x\to+\infty}\frac{\dfrac{\pi}{2} - \arctan x}{x^{-1}}
= \lim_{x\to+\infty}\frac{-\dfrac{1}{1+x^2}}{-\dfrac{1}{x^2}}
= \lim_{x\to+\infty}\frac{x^2}{1+x^2} = 1.$$
例 6 $\displaystyle\lim_{x\to 1}\!\left(\dfrac{1}{\ln x} + \dfrac{1}{1-x}\right)$ を求めよ。
解. 「$\infty - \infty$」型の不定形であり、$y = x-1$ とおくと $x \to 1$ のとき $y \to 0$。式を通分して整理し、同位の無限小で置き換え $\ln(1+y) \sim y$($y \to 0$)を用いると、
$$\begin{aligned}\lim_{x\to 1}\!\left(\frac{1}{\ln x}+\frac{1}{1-x}\right)
&= \lim_{y\to 0}\frac{y - \ln(1+y)}{y\ln(1+y)}
= \lim_{y\to 0}\frac{y - \ln(1+y)}{y^2} \\
&= \lim_{y\to 0}\frac{1 - \dfrac{1}{1+y}}{2y}
= \lim_{y\to 0}\frac{1}{2(1+y)} = \frac{1}{2}.\end{aligned}$$
例 7 $\displaystyle\lim_{x\to 0}\!\left(\dfrac{\sin x}{x}\right)^{\!\frac{1}{x^2}}$ を求めよ。
解. 「$1^\infty$」型の不定形であり、$y = y(x) = \left(\dfrac{\sin x}{x}\right)^{\frac{1}{x^2}}$ とおくと
$$\ln y = \frac{\ln\dfrac{\sin x}{x}}{x^2}.$$
これは「$\dfrac{0}{0}$」型の不定形だからロピタルの定理を適用すると、
$$\lim_{x\to 0}\frac{\ln\dfrac{\sin x}{x}}{x^2} = \lim_{x\to 0}\frac{x\cos x - \sin x}{2x^2\sin x} = \lim_{x\to 0}\frac{-x\sin x}{6x^2} = -\frac{1}{6}.$$
よって
$$\lim_{x\to 0}\!\left(\frac{\sin x}{x}\right)^{\!\frac{1}{x^2}} = e^{-\frac{1}{6}}.$$
例 8 $\displaystyle\lim_{x\to 0^+} x^x$ を求めよ。
解. 「$0^0$」型の不定形であり、例 3 と指数関数の連続性より
$$\lim_{x\to 0^+} x^x = \lim_{x\to 0^+} e^{x\ln x} = e^{\lim_{x\to 0^+} x\ln x} = e^0 = 1.$$
例 9 $\displaystyle\lim_{x\to+\infty} x^{\frac{1}{\sqrt{x}}}$ を求めよ。
解. 「$\infty^0$」型の不定形であり、$y = y(x) = x^{\frac{1}{\sqrt{x}}}$ とおくと $\ln y = \dfrac{\ln x}{\sqrt{x}}$。例 3 より
$$\lim_{x\to+\infty}\frac{\ln x}{\sqrt{x}} = 0,$$
よって $\displaystyle\lim_{x\to+\infty} x^{\frac{1}{\sqrt{x}}} = e^0 = 1$。
例 10 $\displaystyle\lim_{x\to 0}(1-\cos x)^{\tan x}$ を求めよ。
解. 「$0^0$」型の不定形であり、
$$\lim_{x\to 0}(1-\cos x)^{\tan x} = \lim_{x\to 0} e^{\tan x\ln(1-\cos x)}.$$
$\tan x \sim x$ であり、また $\ln(1-\cos x) = \ln\dfrac{x^2}{2} + \ln\dfrac{1-\cos x}{x^2/2}$ の第 2 項は $0$ に収束するから、
$$\lim_{x\to 0}\tan x\ln(1-\cos x) = \lim_{x\to 0} x\ln\frac{x^2}{2} = \lim_{x\to 0}\frac{\ln\frac{x^2}{2}}{x^{-1}} = \lim_{x\to 0}\frac{2/x}{-x^{-2}} = 0.$$
よって $\displaystyle\lim_{x\to 0}(1-\cos x)^{\tan x} = 1$。
例 11 $\displaystyle\lim_{x\to+\infty} x^{\arctan x - \frac{\pi}{2}}$ を求めよ。
解. 「$\infty^0$」型の不定形であり、
$$\lim_{x\to+\infty} x^{\arctan x-\frac{\pi}{2}} = \lim_{x\to+\infty} e^{(\arctan x - \frac{\pi}{2})\ln x}.$$
$$\lim_{x\to+\infty}\!\left(\arctan x - \frac{\pi}{2}\right)\ln x = -\lim_{x\to+\infty}\arctan\frac{1}{x}\cdot\ln x = -\lim_{x\to+\infty}\frac{\ln x}{x} = 0.$$
ここで $\arctan x + \arctan\dfrac{1}{x} = \dfrac{\pi}{2}$($x>0$)と、$\arctan\dfrac{1}{x} \sim \dfrac{1}{x}$、例 3 を用いた。
よって $\displaystyle\lim_{x\to+\infty} x^{\arctan x-\frac{\pi}{2}} = 1$。
例 12 $\displaystyle\lim_{x\to 0}\!\left(\dfrac{1}{x^2} - \dfrac{1}{x\tan x}\right)$ を求めよ。
解. 「$\infty - \infty$」型の不定形であり、
$$\begin{aligned}\lim_{x\to 0}\!\left(\frac{1}{x^2} - \frac{1}{x\tan x}\right)
&= \lim_{x\to 0}\frac{\tan x - x}{x^2\tan x}
= \lim_{x\to 0}\frac{\tan x - x}{x^3} \\
&= \lim_{x\to 0}\frac{\sin x - x\cos x}{x^3\cos x}
= \lim_{x\to 0}\frac{\cos x - \cos x + x\sin x}{3x^2}
= \frac{1}{3}.\end{aligned}$$
不定形の極限を計算するとき、等価な無限小による置き換えを用いると計算過程を簡略化できる場合が多い。
これまでに求めた $x \to 0$ のときの等価な無限小をまとめると:
$$\sin x \sim \tan x \sim \ln(1+x) \sim e^x - 1 \sim x,$$
$$1 - \cos x \sim \frac{x^2}{2}, \quad (1+x)^\alpha - 1 \sim \alpha x,$$
$$\tan x - \sin x \sim \frac{x^3}{2}, \quad x - \sin x \sim \frac{x^3}{6}.$$
練習問題(不定形の極限)
- コーシーの平均値の定理の幾何学的な解釈を与えよ(ヒント:ラグランジュの平均値の定理の幾何学的な意味を参考にし、微分の節の例 4 も参照)。
- 閉区間 $[-1, 1]$ 上でコーシーの平均値の定理が関数 $f(x) = x^2$ と $g(x) = x^3$ に対して正しくない理由を説明せよ。
- $b > a > 0$ として、関数 $f(x)$ が $[a, b]$ 上で連続かつ $(a, b)$ 上で微分可能であれば、$(a, b)$ 内に $\xi \in (a, b)$ が存在して $2\xi[f(b) - f(a)] = (b^2 - a^2)f'(\xi)$ を証明せよ。
- 関数 $f(x)$ が $[a, b]$ 上で連続($ab > 0$)かつ $(a, b)$ 上で微分可能であれば、$(a, b)$ 内に $\xi \in (a, b)$ が存在して
$$\frac{af(b) - bf(a)}{a - b} = f(\xi) - \xi f'(\xi)$$
を証明せよ。 - 次の極限を求めよ。
- $\displaystyle\lim_{x\to 0}\frac{e^x - 1 - x}{x^2}$;
- $\displaystyle\lim_{x\to 0}\frac{x - \sin x}{x^3}$;
- $\displaystyle\lim_{x\to+\infty} x^{1/x}$;
- $\displaystyle\lim_{x\to 0}(\cos x)^{1/x^2}$;
- $\displaystyle\lim_{x\to 1}\left(\frac{x}{x-1} - \frac{1}{\ln x}\right)$;
- $\displaystyle\lim_{x\to 0^+} x^{\sin x}$。
解答
- 曲線 $(g(t), f(t))$ の弦 $(g(a),f(a))$–$(g(b),f(b))$ の傾き $\dfrac{f(b)-f(a)}{g(b)-g(a)}$ に等しい傾き $\dfrac{f'(\xi)}{g'(\xi)}$ の接線が、曲線上のどこかにある。
- $g'(x) = 3x^2$ が $x = 0$ で $0$ になり条件 $g'\neq0$ が崩れる。実際 $\dfrac{f(1) - f(-1)}{g(1) - g(-1)} = 0$ だが、$\dfrac{f'(\xi)}{g'(\xi)} = \dfrac{2}{3\xi} \neq 0$。
- $g(x) = x^2$ とすると $g' = 2x \neq 0$($a>0$)。コーシーの平均値の定理より $\dfrac{f(b) - f(a)}{b^2 - a^2} = \dfrac{f'(\xi)}{2\xi}$。
- $F(x) = \dfrac{f(x)}{x}$,$G(x) = \dfrac1x$ に適用する。$\dfrac{F(b) - F(a)}{G(b) - G(a)} = \dfrac{af(b) - bf(a)}{a - b}$,$\dfrac{F'(\xi)}{G'(\xi)} = f(\xi) - \xi f'(\xi)$。
- (a) $\dfrac12$。(b) $\dfrac16$。(c) $\ln x^{1/x} = \dfrac{\ln x}{x} \to 0$ より $1$。(d) $\ln(\cos x)^{1/x^2} = \dfrac{\ln\cos x}{x^2} \to -\dfrac12$ より $e^{-1/2}$。(e) $y = x - 1$ とおくと $\dfrac{(1+y)\ln(1+y) - y}{y\ln(1+y)} \to \dfrac12$。(f) $\sin x\ln x \to 0$ より $1$。