不等式の基本性質、解き方、証明の技法、そして最大値・最小値の求め方を、例題を通して整理する。多くの例題は、平方完成、相加・相乗平均、Cauchy の不等式、三角不等式、関数の単調性のいずれかで解ける。
例1 $0 < a \leq b$ のとき、$\sqrt{a+b} - \sqrt{b}$ と $\sqrt{b} - \sqrt{b-a}$ の大小を比較せよ。
$\sqrt{a+b} + \sqrt{b} > \sqrt{b} + \sqrt{b-a}$ であることから、
例2 $a,b,x,y$ をすべて実数とし、$\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}\leq 1$ のとき、$a^2+b^2$ と $(x+y)^2$ の大小を比較せよ。
仮定より、
等号成立は $\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1$ かつ $\dfrac{bx}{a}-\dfrac{ay}{b}=0$ のとき、すなわち $a^2+b^2=(x+y)^2$ となる。それ以外は $a^2+b^2>(x+y)^2$ である。
例3 $a,b,c$ を互いに異なる正の数とする。
(1) $a,b$ は互いに異なる正の数なので、$\left(\dfrac{a}{b}\right)^{a-b}>1$、したがって $a^a b^b > a^b b^a$。
(2) (1) の結論を利用すると、
3式を掛け合わせると結論が得られる。
例4 $x>0$、$x\neq 1$、$m>n>0$ のとき、$x^m+\dfrac{1}{x^m}$ と $x^n+\dfrac{1}{x^n}$ の大小を判定せよ。
$m+n>0$、$m-n>0$ であることから、
よって $x^m+\dfrac{1}{x^m}>x^n+\dfrac{1}{x^n}$。
例5 $3^a+13^b=17^a$、$5^a+7^b=11^b$ のとき、実数 $a,b$ の大小を比較せよ。
場合分けして議論する。
(i) $a\geq 1$ のとき、
したがって $13^b>13^a$、すなわち $a<b$。
(ii) $b\leq 1$ のとき、
したがって $5^a<5^b$、すなわち $a<b$。
(iii) $a < 1 < b$ のときは明らかに $a < b$。
以上より、いずれの場合も $a<b$。
例6 $a,b$ を正の数とするとき、$\sqrt{\dfrac{a}{a+3b}}+\sqrt{\dfrac{b}{b+3a}}\geq 1$ を証明せよ。
$\dfrac{b}{a}=t$($t>0$)とおくと、示すべき不等式は
と同値になる。変形を続けると $3t(t^2-2t+1)\geq 0$ となり、これは明らかに成り立つ。
例7 $x,y\in\mathbb{R}$ とし、$M$ を次の4つの数
の中の最大値とする。$M$ の最小値を求めよ。
4つの数を順に $A,B,C,D$ とおく。
なので、
$x=y=\dfrac{1}{2}$ のとき最後の不等号が等号になり、このとき $A=\dfrac{3}{4}$、$B=\dfrac{1}{4}$、$C=\dfrac{1}{4}$、$D=\dfrac{3}{4}$ となる。よって $M$ の最小値は $\dfrac{3}{4}$。
問題 $a,b,c$ がどのような条件を満たすとき、必ず $\lambda,\mu$ が存在して
が成り立つか。
右辺を展開すると $(\lambda+\mu)x^2 + 2(\lambda-\mu)xy + (\lambda+\mu)y^2$。$x^2$ と $y^2$ の係数が等しいので、$a = c$ が必要である。逆に $a = c$ のとき、$\lambda + \mu = a$、$2(\lambda - \mu) = b$ を解いて $\lambda = \dfrac{2a+b}{4}$、$\mu = \dfrac{2a-b}{4}$ とすればよい。したがって条件は $a = c$(対称な二次形式であること)である。
例8 実数 $x,y$ が $(x+\sqrt{x^2+1})(y+\sqrt{y^2+1})\geq 1$ を満たすとき、$x+y$ の最小値を求めよ。
$f(t)=\ln(t+\sqrt{t^2+1})$ とおくと、$f$ は奇関数であり、$[0,+\infty)$ 上で狭義単調増加であるから $\mathbb{R}$ 上でも狭義単調増加である。したがって $g(t)=t+\sqrt{t^2+1}$ も $\mathbb{R}$ 上で狭義単調増加である。
より $x\geq -y$、すなわち $x+y\geq 0$。
例9 正の数 $a,b,c$ が連立不等式
を満たすとき、$a,b,c$ の大小関係を求めよ。
与えられた連立不等式から
最初の2式より $\dfrac{17}{6}c<a+b+c<\dfrac{16}{6}a$、したがって $17c<16a<17a$、よって $c<a$。
次に第1式と第3式より $\dfrac{7}{2}b<a+b+c<3c<\dfrac{7}{2}c$、したがって $b<c$。
以上より $b<c<a$。
例10 $a_1,a_2,\ldots,a_n$ をすべて実数、$b_1,b_2,\ldots,b_n$ をすべて正の数とするとき、次を証明せよ。
$A=\min\!\left\{\dfrac{a_k}{b_k}\right\}$、$B=\max\!\left\{\dfrac{a_k}{b_k}\right\}$ とおく。各 $k$ に対して $A\leq\dfrac{a_k}{b_k}\leq B$ かつ $b_k>0$ なので、$Ab_k\leq a_k\leq Bb_k$。和をとると
したがって結論が得られる。
例11 $x,y\in(0,1)$、$x\neq y$ のとき、$\dfrac{x^n}{1-x^2}+\dfrac{y^n}{1-y^2}$ と $\dfrac{x^n+y^n}{1-xy}$ の大小を比較せよ。
$A=\dfrac{x^n}{1-x^2}$、$B=\dfrac{y^n}{1-y^2}$ とおく。$x^n=A(1-x^2)$、$y^n=B(1-y^2)$ なので、
$(0,1)$ 上で $\dfrac{x^{n+1}}{1-x^2}$ は狭義単調増加であるから、$x\neq y$ のとき、
したがって
すなわち $\dfrac{x^n}{1-x^2}+\dfrac{y^n}{1-y^2}=A+B>\dfrac{x^n+y^n}{1-xy}$。
例12 $a=\log_5(3^x+4^x)$、$b=\log_4(5^x-3^x)$、かつ $a\geq b$ とする。$a$ と $x$ の大小を比較せよ。
$3^x+4^x=5^a$、$5^x-3^x=4^b$ より $5^x-4^b=3^x=5^a-4^x$、したがって
$f(t)=4^t+5^t$ が狭義単調増加であることから $x\leq a$。
例13 $f(x)=ax^2+bx$、$1\leq f(-1)\leq 2$、$2\leq f(1)\leq 4$ とする。$f(-2)$ の値の範囲を求めよ。
$f(1)=a+b$、$f(-1)=a-b$ より
したがって
よって $f(-2)$ の値の範囲は $[5,10]$。
例14 $(-1,1)$ 上で定義された関数 $f$ が次の条件を満たすとする。
$f\!\left(\dfrac{1}{5}\right)+f\!\left(\dfrac{1}{11}\right)+\cdots+f\!\left(\dfrac{1}{n^2+3n+1}\right)$ と $f\!\left(\dfrac{1}{2}\right)$ の大小を比較せよ。
$f(0)+f(0)=f(0)$ より $f(0)=0$。また $f(x)+f(-x)=f(0)=0$ より $f$ は奇関数である。$x\in(-1,0)$ で $f(x)>0$ なので、$x\in(0,1)$ では $f(x)=-f(-x)<0$。
なので、
したがって和は望遠鏡式(テレスコーピング)になり、
定理1(Schur の不等式) $r>0$ とする。$x,y,z$ がすべて非負のとき、
すなわち
等号成立は $x=y=z$ のとき、または一つが $0$ で残り二つが等しいときに限る。
一般性を失わず $x\geq y\geq z$ と仮定する。
とおくと $t_1,t_2,t_3\geq 0$ で、$x=t_1+t_2+t_3$、$y=t_2+t_3$、$z=t_3$。よって
$x=y=z$ または $z=0$ かつ $x=y$ のとき等号成立は明らか。逆に等号成立を仮定する。
(1) $t_2\neq 0$ のとき、$t_1+t_2+t_3\neq 0$。$t_3^r t_2^2=0$ および $(t_1+t_2+t_3)^r t_1^2=0$ より $t_3=0$、$t_1=0$、すなわち $z=0$、$x=y$。
(2) $t_2=0$ のとき、$t_1^{r+2}\leq(t_1+t_2+t_3)^r t_1^2=0$ より $t_1=0$、このとき $x=y=z$。
注1. $r=0$ の場合、$x^r,y^r,z^r$ をすべて $1$ とみなすと Schur の不等式は成立する。実際、
注2. $r<0$ のとき、任意の正数 $x,y,z$ に対しても Schur の不等式は成立する。
注3. 通常 $p=x+y+z$、$q=xy+yz+zx$、$r=xyz$ と記す。
注4. $r=1$ のとき、Schur の不等式は次の各式と同値である。
Schur の不等式より、
$\left(\sum_{\mathrm{cyc}} x\right)^2=\sum_{\mathrm{cyc}} x^2+2\sum_{\mathrm{cyc}} xy$ および
を用いると、
したがって
対称性から定数 $A,B$ が存在して
が成立する。$z=0$ とすると $(y-x)(x-y)(x+y)=-x^3-y^3+Axy(x+y)$。さらに $x=y=1$ とおくと $0=-2+2A$、したがって $A=1$。$x=y=z=1$ とおくと $1=-3+6+B$、すなわち $B=-2$。Schur の不等式より、
例15 $a,b,c$ を三角形の三辺の長さとするとき、次を証明せよ。
Schur の不等式より、
例16 正の数 $a,b,c$ が $abc=1$ を満たすとき、次を証明せよ。
$abc=1$ より $2\!\left(\dfrac{1}{a}+\dfrac{1}{b}+\dfrac{1}{c}\right)=2(ab+bc+ca)$($abc=1$ を掛けた)。また
なので、$({\sum a})^2+3\geq 4\sum ab$ を示せばよい。
相加相乗平均不等式より $a+b+c\geq 3\sqrt[3]{abc}=3$。Schur の不等式を用いると、
したがって $\left(\sum_{\mathrm{cyc}} a\right)^2+3\geq 4\sum_{\mathrm{cyc}} ab$。
不等式を解く際によく用いる手法として、同値変形、場合分け、図形的考察、および不等式と方程式・関数・他の知識との関係の利用などが挙げられる。以下に代表的な場合を列挙する。
(1) $ax>b$。 (2) $ax^2+bx+c>0$。 (3) 単純な1変数高次不等式:数直線上の根分類法(数軸標根法)。
(1) $\dfrac{f(x)}{g(x)}>0\iff f(x)g(x)>0$。
(2) $\dfrac{f(x)}{g(x)}\geq 0\iff\begin{cases}f(x)g(x)\geq 0,\\g(x)\neq 0.\end{cases}$
(1) $\sqrt{f(x)}<\sqrt{g(x)}\iff 0\leq f(x)<g(x)$。
(2) $\sqrt{f(x)}<g(x)\iff\begin{cases}f(x)\geq 0,\\g(x)\geq 0,\\f(x)<(g(x))^2.\end{cases}$
(3) $\sqrt{f(x)}>g(x)\iff\begin{cases}f(x)\geq 0,\\g(x)<0\end{cases}$ または $\begin{cases}f(x)\geq 0,\\g(x)\geq 0,\\f(x)>(g(x))^2.\end{cases}$
4. 絶対値を含む不等式:絶対値の定義による場合分け、数形結合、または両辺の2乗を利用する。
(1) $|x|<c\iff\begin{cases}-c<x<c,&c>0,\\\emptyset,&c\leq 0.\end{cases}$
(2) $|f(x)|<g(x)\iff -g(x)<f(x)<g(x)$。
(3) $|x|>c\iff\begin{cases}x>c\text{ または }x<-c,&c>0,\\x\neq 0,&c=0,\\\mathbb{R},&c<0.\end{cases}$
(4) $|f(x)|>g(x)\iff f(x)>g(x)$ または $f(x)<-g(x)$。
(5) $|f(x)|>|g(x)|\iff(f(x))^2>(g(x))^2\iff(f(x)+g(x))(f(x)-g(x))>0$。
5. 指数不等式、対数不等式、三角関数の不等式:関数の単調性を利用する。
例1 不等式 $(2^x-1)(3^x-9)(5^x-125)^2>0$ を解け。
解集合は $(-\infty,0)\cup(2,3)\cup(3,+\infty)$。
例2 不等式 $2x-|x-a|>2$ を解け。
$|x-a|<2x-2$ より $-(2x-2)<x-a<2x-2$、したがって $x>\dfrac{a+2}{3}$、$x>2-a$、すなわち $x>\max\!\left\{2-a,\dfrac{a+2}{3}\right\}$。
例3 $0\leq x\leq 2\pi$ のとき、不等式 $\sin\!\left(x-\dfrac{\pi}{6}\right)>\cos x$ の解を求めよ。
$\dfrac{\pi}{3}\leq x\leq\dfrac{4\pi}{3}$。
例4 $0\leq\theta<2\pi$ のとき、不等式 $\sin^3\theta-\cos^3\theta\geq\cos\theta-\sin\theta$ を解け。
条件を変形すると $(\sin\theta-\cos\theta)(2+\sin\theta\cos\theta)\geq 0$、すなわち $\sin\theta\geq\cos\theta$。不等式の解集合は $\left[\dfrac{\pi}{4},\dfrac{5\pi}{4}\right]$。
例5 $f(x)=\begin{cases}-\sqrt{1-x^2},&-1\leq x<0,\\\sqrt{1-x^2},&0\leq x\leq 1\end{cases}$ とする。不等式 $f(x)>f(-x)+x$ を解け。
$x\in(0,1]$ のとき、$-x\in[-1,0)$ なので不等式は $\sqrt{1-x^2}>-\sqrt{1-x^2}+x$、すなわち $2\sqrt{1-x^2}>x$。これを解くと $0<x<\dfrac{2}{\sqrt{5}}$。
$x\in[-1,0)$ のとき、$-x\in(0,1]$ なので不等式は $-\sqrt{1-x^2}>\sqrt{1-x^2}+x$、すなわち $2\sqrt{1-x^2}<-x$。これを解くと $-1\leq x<-\dfrac{2}{\sqrt{5}}$($x=-1$ では両辺が $0$ と $-1$ で成立する)。
$x=0$ のとき、不等式は成立しない。
よって不等式の解集合は $\left[-1,-\dfrac{2}{\sqrt{5}}\right)\cup\left(0,\dfrac{2}{\sqrt{5}}\right)$。
例6 不等式 $\sqrt{\log_2 x-1}+\dfrac{1}{2}\log_{\frac{1}{2}}(x^3)+2>0$ を解け。
$\sqrt{\log_2 x-1}=t$ とおくと $t\geq 0$ で、不等式は $t-\dfrac{3}{2}(t^2+1)+2>0$、すなわち $3t^2-2t-1<0$。これを解くと $0\leq t<1$、したがって $2\leq x<4$。
例7 不等式 $|x|^3-2x^2+1<0$ を解け。
不等式は $|x|^3-2|x|^2+1<0$ と書き直せる。$t^3-2t^2+1<0$ の解集合は $\left(-\infty,-\dfrac{\sqrt{5}-1}{2}\right)\cup\left(1,\dfrac{\sqrt{5}+1}{2}\right)$ なので、求める解集合は $\left(-\dfrac{\sqrt{5}+1}{2},-1\right)\cup\left(1,\dfrac{\sqrt{5}+1}{2}\right)$。
例8 不等式 $\lg\!\left(x-\dfrac{1}{x}\right)\leq 0$ を解け。
定義域は $D=\left\{x\,\middle|\,x-\dfrac{1}{x}>0\right\}$。$\lg$ の単調性より解集合は $S=\left\{x\,\middle|\,0<x-\dfrac{1}{x}\leq 1\right\}$。二次関数の性質を使うと、
したがって $\left\{x\,\middle|\,0\leq x-\dfrac{1}{x}\leq 1\right\}=\left[-1,\dfrac{1-\sqrt{5}}{2}\right]\cup\left[1,\dfrac{1+\sqrt{5}}{2}\right]$。$x-\dfrac{1}{x}=0$ の解集合 $\{-1,1\}$ を除くと、
例9 不等式 $\dfrac{8}{(x+1)^3}+\dfrac{10}{x+1}-x^3-5x>0$ を解け。
不等式を変形すると $\left(\dfrac{2}{x+1}\right)^3+5\cdot\dfrac{2}{x+1}>x^3+5x$。$f(t)=t^3+5t$ は $\mathbb{R}$ 上で狭義単調増加なので、解集合は
例10 不等式 $(x-1)(x-2)(x-3)(x-4)\geq 24$ を解け。
$(x^2-5x+4)(x^2-5x+6)-24\geq 0$ より $(x^2-5x)^2+10(x^2-5x)\geq 0$、したがって $x(x-5)(x^2-5x+10)\geq 0$。解集合は $(-\infty,0]\cup[5,+\infty)$。
例11 不等式 $\sqrt{x^2-6x+13}+\sqrt{x^2+6x+13}<8$ の解集合を求めよ。
曲線 $\sqrt{(x+3)^2+y^2}+\sqrt{(x-3)^2+y^2}=8$ は楕円 $\dfrac{x^2}{16}+\dfrac{y^2}{7}=1$ に他ならない。2変数不等式 $\sqrt{(x+3)^2+y^2}+\sqrt{(x-3)^2+y^2}<8$ の解集合はこの楕円の内部である。$y=2$ とおくと、解集合は $\left(-\dfrac{4}{7}\sqrt{21},\dfrac{4}{7}\sqrt{21}\right)$。
例12 関数 $f(x)=\sqrt{1+\sqrt{1-x^2}}-\sqrt{1+x}$ について、
(1) $f$ の定義域は
$g(t)=\sin t$($t\in\left[-\dfrac{\pi}{2},\dfrac{\pi}{2}\right]$)とおくと、
ここで $\psi_0\in\left(0,\dfrac{\pi}{2}\right)$、$\tan\psi_0=\dfrac{1}{\sqrt{2}-1}$。$\dfrac{1}{\sqrt{2}-1}>1=\tan\dfrac{\pi}{4}$ より $\psi_0\in\left(\dfrac{\pi}{4},\dfrac{\pi}{2}\right)$。$t\in\left[-\dfrac{\pi}{2},\dfrac{\pi}{2}\right]$ のとき $\dfrac{t}{2}+\psi_0\in\left[\psi_0-\dfrac{\pi}{4},\psi_0+\dfrac{\pi}{4}\right]\subset(0,\pi)$ で、$\cos$ は $[0,\pi]$ 上で狭義単調減少なので、$f\circ g$ は $\left[-\dfrac{\pi}{2},\dfrac{\pi}{2}\right]$ 上で狭義単調減少である。
任意の $x_1,x_2\in[-1,1]$ に対して、$g:\left[-\dfrac{\pi}{2},\dfrac{\pi}{2}\right]\to[-1,1]$ は全射なので、$x_1=g(t_1)$、$x_2=g(t_2)$ となる $t_1,t_2$ が存在する。$x_1<x_2$ のとき、$g$ の狭義単調増加性より $t_1<t_2$。さらに $f\circ g$ の狭義単調減少性より $f(g(t_1))>f(g(t_2))$、すなわち $f(x_1)>f(x_2)$。よって $f$ は狭義単調減少である。
値域は $[f(1),f(-1)]=\left[1-\sqrt{2},1\right]$。
(2) $\dfrac{1}{2}\in[1-\sqrt{2},1]$ なので $f(x_0)=\dfrac{1}{2}$ となる $x_0\in[-1,1]$ が存在する。$f(x_0)=\dfrac{1}{2}>\sqrt{2}-1=f(0)$ より $x_0<0$。$t\in\left[-\dfrac{\pi}{2},0\right)$ として $g(t)=x_0$ とおくと、$f(g(t))=\dfrac{1}{2}$、すなわち $\sqrt{1+\cos t}-\sqrt{1+\sin t}=\dfrac{1}{2}$。両辺を2乗すると
$\cos t+\sin t=p$ とおくと $t\in\left[-\dfrac{\pi}{2},0\right)$ より $p\in[-1,1)$。整理すると
$p=\dfrac{-1+3\sqrt{2}}{4}$ が得られ、さらに $x_0=\sin t=\dfrac{3\sqrt{2}-1-\sqrt{13+6\sqrt{2}}}{8}$。よって不等式の解集合は $\left[-1,\dfrac{3\sqrt{2}-1-\sqrt{13+6\sqrt{2}}}{8}\right]$。
例1 任意の正整数 $n$ に対して $\sqrt[n]{n!}<\sqrt[n+1]{(n+1)!}$ を証明せよ。
$\dfrac{((n+1)!)^n}{(n!)^{n+1}}=\dfrac{(n+1)^n}{n!}>1$ より直ちに得られる。
例2 $\dfrac{3}{2}\cdot\dfrac{5}{4}\cdots\dfrac{2n+1}{2n}>\sqrt{n+1}$ を証明せよ。
$A=\dfrac{3}{2}\cdot\dfrac{5}{4}\cdots\dfrac{2n+1}{2n}$ とおく。$k^2>k^2-1=(k-1)(k+1)$ より、
例3 $n$ を正整数とするとき、次を証明せよ。
$A=1+\dfrac{1}{3}+\cdots+\dfrac{1}{2n-1}$、$B=\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{4}+\cdots+\dfrac{1}{2n}$ とおく。$\dfrac{1}{3}+\cdots+\dfrac{1}{2n-1}\geq\dfrac{1}{4}+\cdots+\dfrac{1}{2n}$ なので、
例4 $x,y\in\mathbb{R}$、$x^2+y^2\leq 1$ のとき、$|x^2+2xy-y^2|\leq\sqrt{2}$ を証明せよ。
$r=\sqrt{x^2+y^2}$ とおくと、ある $t\in\mathbb{R}$ が存在して $x=r\cos t$、$y=r\sin t$。よって
例5 $k>a>b>c>0$ のとき、$k^2-(a+b+c)k+(ab+bc+ca)>0$ を証明せよ。
$(k-a)(k-b)(k-c)>0$ なので、
例6 $f(x)=x^2+bx+c$ とする。$|f(1)|$、$|f(2)|$、$|f(3)|$ の少なくとも一つは $\dfrac{1}{2}$ 以上であることを証明せよ。
$f(1)=1+b+c$、$f(2)=4+2b+c$、$f(3)=9+3b+c$ より $f(1)-2f(2)+f(3)=2$。三角不等式より
よって $|f(1)|$、$|f(2)|$、$|f(3)|$ の少なくとも一つは $\dfrac{1}{2}$ 以上である。
例7 $a,b,c\in\mathbb{R}$、$ac\neq 0$、$f(x)=ax^2+bx+c$、$g(x)=cx^2+bx+a$ とする。$|x|\leq 1$ のとき $|f(x)|\leq 2$ ならば、$|x|\leq 1$ のとき $|g(x)|\leq 4$ を証明せよ。
条件より $|a-b+c|=|f(-1)|\leq 2$、$|c|=|f(0)|\leq 2$、$|a+b+c|=|f(1)|\leq 2$。$|x|\leq 1$ のとき、三角不等式を用いると、
ここで、$f(x)=Ax+B$ ならば $\max_{x\in[a,b]}|f(x)|=\max\{|f(a)|,|f(b)|\}$ を利用した。
例8 $a_i,b_i\in\mathbb{R}^+$($i=1,2,\ldots,n$)、$a_1^2>\displaystyle\sum_{i=2}^n a_i^2$、$b_1^2>\displaystyle\sum_{i=2}^n b_i^2$ のとき、次を証明せよ。
$f(x)=\left(a_1^2-\displaystyle\sum_{i=2}^n a_i^2\right)x^2-2\left(a_1b_1-\displaystyle\sum_{i=2}^n a_ib_i\right)x+\left(b_1^2-\displaystyle\sum_{i=2}^n b_i^2\right)$ とおくと、
$f(0)=b_1^2-\displaystyle\sum_{i=2}^n b_i^2>0$、$f\!\left(\dfrac{b_1}{a_1}\right)=-\displaystyle\sum_{i=2}^n\left(a_i\cdot\dfrac{b_1}{a_1}-b_i\right)^2\leq 0$ なので $f(x)=0$ は零点を持つ。よって二次関数 $f(x)$ の判別式は $0$ 以上である。
例9 実数 $x_1,x_2,x_3,y_1,y_2,y_3$ が $x_1^2+x_2^2+x_3^2\leq 1$ を満たすとき、次を証明せよ。
$x_1^2+x_2^2+x_3^2<1$ かつ $y_1^2+y_2^2+y_3^2<1$ の場合に証明すれば十分である。これは例8において $x_0=1$、$y_0=1$ とおいた場合に対応する。
例10 整数 $n\geq 3$ のとき、$n^{n+1}>(n+1)^n$ を証明せよ。
$a_n=\dfrac{n^{n+1}}{(n+1)^n}$ とおく。
なので $\{a_n\}$ は狭義単調増加列である。$n\geq 3$ のとき $a_n\geq a_3=\dfrac{3^4}{4^3}=\dfrac{81}{64}>1$。
例11 正整数 $n>1$ とする。
$a_n=\dfrac{1}{2^2}+\cdots+\dfrac{1}{n^2}-\dfrac{7}{12}+\dfrac{1}{n+1}$ とおくと、
なので $\{a_n\}$ は狭義単調増加。$n\geq 2$ のとき $a_n\geq a_2=0$。
$b_n=\dfrac{1}{2^2}+\cdots+\dfrac{1}{n^2}-\dfrac{3}{4}+\dfrac{1}{n}$ とおくと、
なので $\{b_n\}$ は狭義単調減少。$n\geq 2$ のとき $b_n\leq b_2=0$。これで (2) が示された。
(1) は (2) から従う。(2) の左辺は $\dfrac{7}{12}-\dfrac{1}{n+1}>\dfrac{1}{2}-\dfrac{1}{n+1}$、右辺は $\dfrac{3}{4}-\dfrac{1}{n}<1-\dfrac{1}{n}=\dfrac{n-1}{n}$ だからである。
例12 正の数 $a,b,c$ が $a<b+c$ を満たすとき、$\dfrac{a}{1+a}<\dfrac{b}{1+b}+\dfrac{c}{1+c}$ を証明せよ。
$f(x)=\dfrac{x}{1+x}$ は $(0,+\infty)$ 上で狭義単調増加なので、
例13 $\dfrac{1}{n+1}+\dfrac{1}{n+2}+\cdots+\dfrac{1}{3n+1}\leq\dfrac{11}{10}$ を証明せよ。
$f(n)=\dfrac{1}{n+1}+\dfrac{1}{n+2}+\cdots+\dfrac{1}{3n+1}$ とおくと、
したがって $f(n+1)<f(1)+\dfrac{1}{4}\cdot\dfrac{1}{3\cdot 5}=\dfrac{11}{10}$。
例14 数学的帰納法を用いて次を証明せよ。
(1) $n = 1$ で左辺 $= 1 < 2$。より強く $S_n = 1 + \dfrac{1}{2} + \cdots + \dfrac{1}{2^{n-1}} = 2 - \dfrac{1}{2^{n-1}}$ を帰納法で示す。$n = 1$ で $1 = 2 - 1$。$n$ で成り立つとき $S_{n+1} = S_n + \dfrac{1}{2^n} = 2 - \dfrac{1}{2^{n-1}} + \dfrac{1}{2^n} = 2 - \dfrac{1}{2^n}$。よって $S_n < 2$。
(2) そのままでは帰納法が回らないので、より強い $T_n = \sum_{k=1}^n \dfrac{1}{k!} \leq 2 - \dfrac{1}{2^{n-1}}$ を示す。$n = 1$ で $1 \leq 1$。$n$ で成り立つとして、$(n+1)! \geq 2^n$ より $\dfrac{1}{(n+1)!} \leq \dfrac{1}{2^n}$ だから $T_{n+1} \leq 2 - \dfrac{1}{2^{n-1}} + \dfrac{1}{2^n} = 2 - \dfrac{1}{2^n}$。よって $T_n < 2$。
例15 $a_1,a_2,\ldots,a_n\in[1,+\infty)$ のとき、次を証明せよ。
要素数 $n$ に関する数学的帰納法で証明する。
$n=1$ のとき、明らかに成立。
$n=k$($k\geq 1$)のとき成立すると仮定する。$n=k+1$ のとき、
($P = a_1\cdots a_k$、$a = a_{k+1}$ とおくと、$(P - 1/P) + (a - 1/a) - (Pa - 1/(Pa))$ は $-\dfrac{(P-1)(a-1)(Pa-1)}{Pa}$ に等しい。$P \geq 1$、$a \geq 1$、$Pa \geq 1$ より三つの因子はすべて $0$ 以上で、全体は $0$ 以下である。)
例16 $a,b,c\in\mathbb{R}$ のとき、$\sqrt{a^2+b^2}+\sqrt{b^2+c^2}+\sqrt{c^2+a^2}\geq\sqrt{2}(a+b+c)$ を証明せよ。
相加相乗平均(冪平均)不等式より $\sqrt{a^2+b^2}\geq\dfrac{a+b}{\sqrt{2}}$。3つを加えると結論が得られる。
例17 $n$ を $1$ より大きい整数とするとき、$\binom{n}{1}+\binom{n}{2}+\cdots+\binom{n}{n}>n\cdot 2^{\frac{n-1}{2}}$ を証明せよ。
二項定理より $\binom{n}{1}+\cdots+\binom{n}{n}=2^n-1=1+2+\cdots+2^{n-1}$。相加相乗平均不等式を使うと
(各括弧 $2^i+2^{n-1-i}$ に相加・相乗平均の不等式を使うと $2\cdot 2^{\frac{n-1}{2}}$ 以上である。$n>1$ では $i=\frac{n-1}{2}$ 以外の項で等号が成立しないので、全体の不等式は狭義である。)
例18 $a,b,c$ をある三角形の三辺の長さとするとき、次を証明せよ。
証明1. 相加相乗平均不等式より
3式を加えると結論が得られる。
証明2. $\dfrac{a}{b+c-a}+\dfrac{b+c-a}{a}\geq 2$ より $\dfrac{a}{b+c-a}-1\geq 1-\dfrac{b+c-a}{a}$ なので、
例19 $x,y,z\in\mathbb{R}^+$ のとき、次を証明せよ。
相加相乗平均不等式より $(y+z)^2\geq 4yz$ なので $\dfrac{y+z}{yz}\geq\dfrac{4}{y+z}$、したがって $\dfrac{x}{y}+\dfrac{x}{z}=x\cdot\dfrac{y+z}{yz}\geq\dfrac{4x}{y+z}$。同様に $\dfrac{y}{z}+\dfrac{y}{x}\geq\dfrac{4y}{z+x}$、$\dfrac{z}{x}+\dfrac{z}{y}\geq\dfrac{4z}{x+y}$。3式を加えると結論が得られる。
例20 $a,b,c\in\mathbb{R}^+$、$a+3b+5c=15$ のとき、$\sqrt{a}+\sqrt{5b}+\sqrt{2c}\leq\sqrt{46}$ を証明せよ。
$x=\sqrt{a}$、$y=\sqrt{5b}$、$z=\sqrt{2c}$ とおくと $x^2+\dfrac{3}{5}y^2+\dfrac{5}{2}z^2=15$。Cauchy の不等式より
例21 $a,b\in\mathbb{R}^+$、整数 $n\geq 2$ のとき、$\dfrac{a^n+b^n}{2}\geq\left(\dfrac{a+b}{2}\right)^n$ を証明せよ。
これは冪平均不等式である。$a\neq b$ として直接証明する。二項定理より、
例22 $a_n=\dfrac{1}{2}\!\left(t^n+\dfrac{1}{t^n}\right)$($\dfrac{1}{2}\leq t\leq 2$)、$T_n$ を数列 $\{a_n\}$ の最初の $n$ 項の和とする。$T_n<2^n-\!\left(\dfrac{\sqrt{2}}{2}\right)^n$ を証明せよ。
$\dfrac{1}{2^n}\leq t^n\leq 2^n$ なので $\max_{t\in[1/2,2]}\!\left(t^n+\dfrac{1}{t^n}\right)=2^n+\dfrac{1}{2^n}$。相加相乗平均不等式を用いると、
例23 次を証明せよ。
(1) $(x-y)^2+(y-z)^2+(z-x)^2\geq 0$ より直ちに得られる。
(2) (1) より $a^2b^2+b^2c^2+c^2a^2\geq abc(a+b+c)=abc$ なので、$3abc\leq(ab+bc+ca)^2$。したがって
(3) 相加相乗平均不等式より $\sqrt{a}=\sqrt{\dfrac{1}{b}\cdot\dfrac{1}{c}}\leq\dfrac{1}{2}\!\left(\dfrac{1}{b}+\dfrac{1}{c}\right)$。同様に他の2式も成り立ち、3式を加えると結論が得られる。
例24 $a,b,c\in\mathbb{R}^+$、$abc=1$ のとき、次を証明せよ。
相加相乗平均不等式より $\dfrac{1}{(2a+1)^3}+\dfrac{1}{27}+\dfrac{1}{27}\geq\dfrac{1}{3(2a+1)}$ なので、
したがって $\dfrac{1}{2a+1}+\dfrac{1}{2b+1}+\dfrac{1}{2c+1}\geq 1$ を示せばよい。通分すると $a+b+c\geq 3$ を示すことに帰着され、相加相乗平均不等式より明らかである。
写像 $f:X\to Y$ に対して、集合 $\{y\in Y:\text{ある}\ x\in X\ \text{が存在して}\ y=f(x)\}$ を $f$ の値域という。$f$ の値域を $f(X)$、$\operatorname{Ran}(f)$、または $R_f$ と記す。
$f:X\to\mathbb{R}$ の値域に最小元が存在するとき、その最小元を $f$ の最小値といい、$f$ は最小値を持つという。$f$ の最小値を $\min f$、$\min_{x\in X}f(x)$、または $f_{\min}$ と記す。
$f:X\to\mathbb{R}$ の値域に最大元が存在するとき、その最大元を $f$ の最大値といい、$f$ は最大値を持つという。$f$ の最大値を $\max f$、$\max_{x\in X}f(x)$、または $f_{\max}$ と記す。
例1
例2 $a,b$ を正の数、$a+b=2$ とする。$\dfrac{1}{1+a}+\dfrac{1}{1+b}$ の最小値を求めよ。
Cauchy の不等式より
したがって $\dfrac{1}{1+a}+\dfrac{1}{1+b}\geq\dfrac{4}{(1+a)+(1+b)}=1$。$a=b=1$ のとき等号が成立するので、最小値は $1$。
例3 $f(a,b)=(a+5-3|\cos b|)^2+(a-2|\sin b|)^2$ の $\min_{a,b\in\mathbb{R}}f(a,b)$ を求めよ。
恒等式 $2(x^2+y^2)=(x+y)^2+(x-y)^2$ より $x^2+y^2\geq\dfrac{1}{2}(x-y)^2$ なので、
$a=-1$、$b=k\pi$($k$ は整数)のとき $f(a,b)=2$。よって $\min_{a,b\in\mathbb{R}}f(a,b)=2$。
例4 $z=(a-b)^2+\!\left(\sqrt{2-a^2}-\dfrac{9}{b}\right)^2$ の最小値を求めよ。
$A\bigl(a,\sqrt{2-a^2}\bigr)$、$B\!\left(b,\dfrac{9}{b}\right)$、$O(0,0)$ とおくと $z=|AB|^2$、$|OA|^2=2$、$|OB|^2=b^2+\dfrac{81}{b^2}$。
相加相乗平均不等式より $|OB|^2\geq 18$、したがって $|OB|\geq 3\sqrt{2}$。
三角不等式より $|AB|\geq|OB|-|OA|\geq 3\sqrt{2}-\sqrt{2}=2\sqrt{2}$、よって $z=|AB|^2\geq 8$。
$(a,b)=(1,3)$ のとき $z=8$ となるので $z_{\min}=8$。
例5 $x_k,y_k$($k=1,2,3$)をすべて非負の実数とするとき、
の最小値を求めよ。
以下の図のように各項をベクトルの大きさとみなす。
三角不等式より、
$x_1=x_2=x_3=y_1=y_2=y_3=0$ のとき $f=2007$。よって $f_{\min}=2007$。
例6 正の数 $a,b,c$ が $a+b+c=1$ を満たすとき、$\dfrac{1}{a(1+b)}+\dfrac{1}{b(1+c)}+\dfrac{1}{c(1+a)}$ の最小値を求めよ。
Cauchy の不等式より
$1=(a+b+c)^2=\displaystyle\sum_{\mathrm{cyc}} a^2+2\sum_{\mathrm{cyc}} ab\geq 3\sum_{\mathrm{cyc}} ab$ より、
$a=b=c=\dfrac{1}{3}$ のとき等号成立。よって最小値は $\dfrac{27}{4}$。
例7 $a,b$ を正の定数とするとき、$y=\dfrac{a}{\sin x}+\dfrac{b}{\cos x}$($0<x<\dfrac{\pi}{2}$)の最小値を求めよ。
任意の正数 $k$ に対して、
$x=\arctan\sqrt[3]{\dfrac{a}{b}}$ のとき $y$ は最小値 $y_{\min}=\!\left(a^{\frac{2}{3}}+b^{\frac{2}{3}}\right)^{\!\frac{3}{2}}$ をとる。
例8 $c\neq 0$ とし、非零の実数 $a,b$ が $4a^2-2ab+4b^2-c=0$ を満たして $|2a+b|$ を最大にするとき、$\dfrac{3}{a}-\dfrac{4}{b}+\dfrac{5}{c}$ の最小値を求めよ。
$2a+b=t$ とおくと $2a=t-b$、したがって $(t-b)^2-(t-b)b+4b^2-c=0$、すなわち $6b^2-3bt+t^2-c=0$。この方程式が実数解を持つ条件は $(3t)^2-24(t^2-c)\geq 0$、すなわち $|t|\leq\sqrt{\dfrac{8c}{5}}$。
$|t|$ が最大値 $\sqrt{\dfrac{8c}{5}}$ をとるとき、$c=\dfrac{5t^2}{8}$、$b=\dfrac{t}{4}$、$a=\dfrac{3t}{8}$。このとき
例9 $a,b\in\mathbb{R}^+$、$a+\sqrt{b^2+8}=4$ のとき、$\dfrac{3}{a}+\dfrac{1}{b}$ の最小値を求めよ。
Cauchy の不等式より $\sqrt{b^2+8}=\sqrt{b^2+1^2+\cdots+1^2}\geq\dfrac{b+8}{3}$(等号は $b=1$ のとき)。したがって
すなわち $3a+b\leq 4$。さらに
より $\dfrac{3}{a}+\dfrac{1}{b}\geq 4$、等号は $a=b=1$ のときに成立する。よって最小値は $4$。
例10 正の数 $a,b,c$ が $abc+a+c=b$ を満たすとき、$\dfrac{2}{a^2+1}+\dfrac{3}{c^2+1}-\dfrac{2}{b^2+1}$ の最大値を求めよ。
$b=\dfrac{a+c}{1-ac}$ より、$a=\tan\alpha$、$c=\tan\beta$、$b=\tan(\alpha+\beta)$($\alpha,\beta,\alpha+\beta\in\left(0,\dfrac{\pi}{2}\right)$)とおける。すると
等号成立は $\sin(2\alpha+\beta)=1$、$\sin\beta=\dfrac{1}{3}$、すなわち $a=\dfrac{\sqrt{2}}{2}$、$b=\sqrt{2}$、$c=\dfrac{\sqrt{2}}{4}$ のとき。よって最大値は $\dfrac{10}{3}$。
例11 $x,y\in\mathbb{R}$、$x^2+y^2\leq 1$ のとき、$x+y-xy$ の最大値を求めよ。
解法1. $x=r\cos\theta$、$y=r\sin\theta$($0\leq r\leq 1$)とおく。$r=0$ のとき $x+y-xy=0$。$0<r\leq 1$ のとき、$\sin\theta+\cos\theta=t$($-\sqrt{2}\leq t\leq\sqrt{2}$)とおくと $\sin\theta\cos\theta=\dfrac{t^2-1}{2}$ なので、
等号成立は $r=1$、$t=1$、すなわち $(x,y)=(1,0)$ または $(0,1)$ のとき。最大値は $1$。
解法2. $x+y=t$ とおくと $t^2\leq 1+2xy$、すなわち $xy\geq\dfrac{t^2-1}{2}$。したがって
例12 $x,y\in\mathbb{R}$、$4x^2-5xy+4y^2=5$ とし $S=x^2+y^2$ とおくとき、$\dfrac{1}{S_{\min}}+\dfrac{1}{S_{\max}}$ を求めよ。
$x^2=\dfrac{S}{2}+t$、$y^2=\dfrac{S}{2}-t$ とおいて代入・整理すると、$(4S-5)^2=25\!\left(\dfrac{S^2}{4}-t^2\right)$、したがって $39S^2-160S+100=-100t^2\leq 0$。これを解くと $\dfrac{10}{13}\leq S\leq\dfrac{10}{3}$。$x=y$ のとき $S_{\max}=\dfrac{10}{3}$、$x=-y$ のとき $S_{\min}=\dfrac{10}{13}$。よって
例13 $x,y,z\in\mathbb{R}^+$ が $\dfrac{x^2}{1+x^2}+\dfrac{y^2}{1+y^2}+\dfrac{z^2}{1+z^2}=2$ を満たすとき、$\dfrac{x}{1+x^2}+\dfrac{y}{1+y^2}+\dfrac{z}{1+z^2}$ の最大値を求めよ。
条件より $\dfrac{1}{1+x^2}+\dfrac{1}{1+y^2}+\dfrac{1}{1+z^2}=1$。Cauchy の不等式より
よって最大値は $\sqrt{2}$。等号は $x = y = z$ のとき(条件より $3/(1+x^2) = 1$、$x = \sqrt{2}$)に成立し、実際 $3\cdot\dfrac{\sqrt{2}}{3} = \sqrt{2}$ となる。
例14 $a,b,c\in\mathbb{R}^+$、$abc=1$ のとき、$S=\dfrac{1}{2a+1}+\dfrac{1}{2b+1}+\dfrac{1}{2c+1}$ の最小値を求めよ。
$a=\dfrac{x}{y}$、$b=\dfrac{y}{z}$、$c=\dfrac{z}{x}$($x,y,z\in\mathbb{R}^+$)とおくと
Cauchy の不等式より
したがって $S\geq 1$。$x=y=z$(すなわち $a=b=c=1$)のとき $S=1$。よって最小値は $1$。
例15
(1) $m=\dfrac{1}{2}-d$、$n=\dfrac{1}{2}+d$($|d|<\dfrac{1}{2}$)とおくと、
(2) $\sin\theta=\dfrac{1}{2}-d$、$2\cos\theta=\dfrac{1}{2}+d$ とおくと、$\sin^2\theta+\cos^2\theta=1$ より
したがって $d=-\dfrac{1}{2}$ または $d=\dfrac{11}{10}$。よって $\dfrac{\sin\theta-\cos\theta}{\sin\theta+\cos\theta}=\dfrac{1-6d}{3-2d}=1$ または $-7$。
例16
(1) 任意の $\lambda>0$ に対して、
$\sqrt{\lambda}=\sqrt{2}+1$ のとき等号成立し、最小値 $3+2\sqrt{2}$ をとる。
(2) 任意の $\lambda>0$ に対して、
等号は $\lambda=\sqrt{2a+1}=\sqrt{2b+1}$ のとき成立。$a+b=1$ より $a=b=\dfrac{1}{2}$、$\lambda=\sqrt{2}$ のとき最大値 $2\sqrt{2}$ をとる。
例17 $x^2+y^2+z^2=1$ を満たす $x,y,z\in\mathbb{R}$ に対して、$xy+2xz$ の最大値を求めよ。
解法1. 相加相乗平均不等式より
($\dfrac{1}{5}x^2+y^2\geq\dfrac{2}{\sqrt{5}}|xy|$、$\dfrac{4}{5}x^2+z^2\geq\dfrac{4}{\sqrt{5}}|xz|$ による。)よって $xy+2xz\leq\dfrac{\sqrt{5}}{2}$。$(x,y,z)=\!\left(\dfrac{\sqrt{2}}{2},\dfrac{\sqrt{10}}{10},\dfrac{\sqrt{10}}{5}\right)$ で等号成立。
解法2. $x=\sin\theta$、$y=\cos\theta\cos\varphi$、$z=\cos\theta\sin\varphi$ とおくと、
よって最大値は $\dfrac{\sqrt{5}}{2}$。
例18 実数 $x,y$ が $3\leq xy^2\leq 8$、$4\leq\dfrac{x^2}{y}\leq 9$ を満たすとき、$\dfrac{x^3}{y^4}$ の値の範囲を求めよ。
$\dfrac{x^3}{y^4}=\!\left(\dfrac{x^2}{y}\right)^2\!\!\cdot\dfrac{1}{xy^2}$ および与えられた不等式より、
例19 $g:\mathbb{R}\setminus\{0\}\to\mathbb{R}$、$x\mapsto\dfrac{1}{2}\!\left(x+\dfrac{1}{x}\right)$ の値域を求めよ。
$x\in\mathbb{R}\setminus\{0\}$ のとき $x$ と $\dfrac{1}{x}$ は同符号なので、三角不等式と相加相乗平均不等式より
したがって $R_g\subseteq(-\infty,-1]\cup[1,+\infty)$。逆に $|z|\geq 1$ であれば $x=z+\sqrt{z^2-1}$ とおくと $g(x)=z$。よって $R_g=(-\infty,-1]\cup[1,+\infty)$。
例20 実数 $x,y$ が $x^2+2xy-1=0$ を満たすとき、$x+y$ の値の範囲を求めよ。
$x\neq 0$ より $y=\dfrac{1-x^2}{2x}$、したがって $x+y=\dfrac{1}{2}\!\left(x+\dfrac{1}{x}\right)$。例19より値の範囲は $(-\infty,-1]\cup[1,+\infty)$。
例21 実数 $x,y$ が $x^2-3xy+y^2=2$ を満たすとき、$x^2+y^2$ の値の範囲を求めよ。
$x=u+v$、$y=u-v$ とおくと $x^2+y^2=2(u^2+v^2)$、$5v^2-u^2=2$。$5(v^2+u^2)=2+6u^2\geq 2$ より $u^2+v^2\geq\dfrac{2}{5}$。したがって $x^2+y^2\geq\dfrac{4}{5}$($u=0$ のとき等号成立)。値の範囲は $\left[\dfrac{4}{5},+\infty\right)$。
例22 実数 $x,y$ が $x^2-xy+y^2=1$ を満たすとき、$x^2-y^2$ の値の範囲を求めよ。
$x=u+v$、$y=u-v$ とおくと $u^2+3v^2=1$、$x^2-y^2=4uv$。$u=\cos t$、$v=\dfrac{1}{\sqrt{3}}\sin t$ とおくと
よって値の範囲は $\left[-\dfrac{2}{\sqrt{3}},\dfrac{2}{\sqrt{3}}\right]$。
例23 $f(x)=\dfrac{x^4-8x^3+23x^2-28x+21}{x^2-4x+4}$($|x|\leq 1$)の値域を求めよ。
$x^4-8x^3+23x^2-28x+21=(x-2)^4-(x-2)^2+9$ より
$|x|\leq 1$ より $1\leq(x-2)^2\leq 9$。よって値域は $[5,9]$。
例24 正の数 $x,y$ が $\dfrac{7x-9y}{xy+y^2}=x$ を満たすとき、$y$ の範囲を求めよ。
条件より $(x^2+9)y=x(7-y^2)$、したがって
これを解くと $0<y\leq 1$。
例25 正の数 $x,y$ が $x+\dfrac{2}{x}+3y+\dfrac{4}{y}=10$ を満たすとき、$xy$ の範囲と $\dfrac{y}{x}$ の範囲を求めよ。
解法1. 相加相乗平均不等式より
したがって $3xy+\dfrac{8}{xy}\leq 11$、よって $1\leq xy\leq\dfrac{8}{3}$。
等号は $(x,y)=(1,1)$ のとき $xy=1$、$(x,y)=\!\left(2,\dfrac{4}{3}\right)$ のとき $xy=\dfrac{8}{3}$。
同様に
したがって $6\!\left(\dfrac{y}{x}\right)^2-11\!\left(\dfrac{y}{x}\right)+4\leq 0$、よって $\dfrac{1}{2}\leq\dfrac{y}{x}\leq\dfrac{4}{3}$。
解法2. $xy=t$($t>0$)とおくと $(t+4)x^2-10tx+(3t^2+2t)=0$。二次方程式の判別式が非負であることから $1\leq t\leq\dfrac{8}{3}$。
例26 実数 $x,y$ が $x-4\sqrt{y}=2\sqrt{x-y}$ を満たすとき、$x$ の範囲を求めよ。
$\sqrt{y}=a$($a\geq 0$)、$\sqrt{x-y}=b$($b\geq 0$)とおくと $x=a^2+b^2$ で、$(a-2)^2+(b-1)^2=5$、$a\geq 0$、$b\geq 0$。
$x=a^2+b^2$ は円 $(x-2)^2+(y-1)^2=5$ 上の点 $(a,b)$ から原点までの距離の2乗を表すので、$x$ の値の範囲は $\{0\}\cup[4,20]$(原点は円周上の孤立点として許される。第 1 象限にある円弧の端点 $(0,2)$ で $x=4$、$(4,2)$ で $x=20$)。
例27 実数 $x,y$ が $x^2+xy-2y^2=1$ を満たすとき、$S=3x^2-y^2$ の範囲を求めよ。
$(x+2y)(x-y)=1$ なので $m=x+2y$、$n=x-y$($mn=1$)とおくと $x=\dfrac{m+2n}{3}$、$y=\dfrac{m-n}{3}$。相加相乗平均不等式より
等号は $\sqrt{2}\,m=\sqrt{11}\,n$ かつ $mn=1$ のときに成立する。よって $S\geq\dfrac{14+2\sqrt{22}}{9}$。
例28 $a,b$ が $a\sqrt{1-b^2}+b\sqrt{1-a^2}=1$ を満たすとき、$a^2+b^2$ の値の範囲を求めよ。
Cauchy の不等式より
等号条件より $\sqrt{1-a^2}\cdot\sqrt{1-b^2}=ab$、整理すると $a^2+b^2=1$。したがって、値の範囲は $\{1\}$($1$ のみ)である。
1. パラメータを含む不等式:関数の定義域と単調性を利用して場合分けを行う。
2. 不等式が「常に成立」「成立することがある」「ちょうど成立」する問題:関数や方程式の考え方を用いて変数分離し最大・最小値の問題に帰着させるか、不等式の特徴に応じて数形結合(図形的考察)を利用する。
(1) 恒成立問題:
(2) 解の存在問題:
$f$ が $D$ 上で最大値・最小値を持つとき:
(3) ちょうど成立問題:$f(x)>\lambda$ が区間 $D$ 上でちょうど成立 $\iff$ $f(x)>\lambda$ の解集合が $D$。
例1 $x$ に関する不等式 $\sqrt{x-3}+\sqrt{6-x}\geq k$ が解を持つような実数 $k$ の最大値を求めよ。
$f(x)=\sqrt{x-3}+\sqrt{6-x}$ とおく。Cauchy の不等式より
$x=\dfrac{9}{2}$ のとき等号成立。$f(x)\geq k$ が解を持つ $k$ の最大値は $\sqrt{6}$。
例2 任意の $x,y\in\mathbb{R}^+$ に対して $\sqrt{x}+\sqrt{y}\leq a\sqrt{x+y}$ が成立するような $a$ の最小値を求めよ。
相加相乗平均不等式より
$x=y$ のとき等号成立。したがって $a$ の最小値は $\sqrt{2}$。
例3 $x,y,z$ を直角三角形の三辺の長さとし、$z$ を斜辺の長さとする。不等式
が恒成立するとき、パラメータ $k$ の最大値を求め、等号成立条件を明らかにせよ。
$z=1$、$x=\cos t$、$y=\sin t$($0<t\leq\dfrac{\pi}{4}$)とおき、$p=\sin t+\cos t$($1<p\leq\sqrt{2}$)とする。
等号成立は $t=\dfrac{\pi}{4}$、すなわち $x=y$ のとき。よって $k$ の最大値は $2+3\sqrt{2}$。
例4 $a,b,c,k\in\mathbb{R}^+$ で $\dfrac{kabc}{a+b+c}\geq(a+b)^2+(a+b+4c)^2$ が常に成立するとき、$k$ の最小値を求めよ。
相加相乗平均不等式より
したがって $\dfrac{((a+b)^2+(a+b+4c)^2)(a+b+c)}{abc}\geq 100$、等号は $a=b=2c$ のとき成立。よって $k$ の最小値は $100$。
例5 $ax^2-|x+1|+2a<0$ の解集合が空集合となる $a$ の値の範囲を求めよ。
解集合が空集合 $\iff$ 任意の $x\in\mathbb{R}$ に対して $ax^2-|x+1|+2a\geq 0$、すなわち $a\geq\dfrac{|x+1|}{x^2+2}$。
$f(x)=\dfrac{|x+1|}{x^2+2}$ とおく。$f(-1)=0$。$x\neq -1$ のとき、
したがって $f(x)\leq\dfrac{1}{2(\sqrt{3}-1)}=\dfrac{\sqrt{3}+1}{4}$。$f(\sqrt{3}-1)=\dfrac{\sqrt{3}+1}{4}$ なので最大値は $\dfrac{\sqrt{3}+1}{4}$。よって $a$ の範囲は $\left[\dfrac{\sqrt{3}+1}{4},+\infty\right)$。
例6 実数 $a$ が $|2x-a|+|3x-2a|\geq a^2$ を任意の $x$ について恒成立させるとする。条件を満たす $a$ の集合 $A$ を求めよ。
$0\in A$ は明らか。$a\neq 0$ のとき $x=ka$ とおくと、任意の $k\in\mathbb{R}$ について $|2k-1|+|3k-2|\geq|a|$。したがって $|a|\leq\min_{k\in\mathbb{R}}(|2k-1|+|3k-2|)=\dfrac{1}{3}$。よって $A=\left[-\dfrac{1}{3},\dfrac{1}{3}\right]$。
例7 $x\in[-1,1]$ のとき $ax^3-3x+1\geq 0$ が恒成立するような $a$ の範囲を求めよ。
解法1. $x=\sin\alpha$ とおく。$\sin 3\alpha=3\sin\alpha-4\sin^3\alpha$ より $(4-a)\sin^3\alpha\leq 1-\sin 3\alpha$ が恒成立する必要がある。$\alpha=\dfrac{\pi}{6}$ を代入すると $a\geq 4$、$\alpha=-\dfrac{\pi}{2}$ を代入すると $a\leq 4$。よって $a=4$ である。$a=4$ のとき確かに成立することも確認できる。
解法2. $0<x\leq 1$ のとき $a\geq\dfrac{3x-1}{x^3}$。$t=\dfrac{1}{x}\geq 1$ とおくと $a\geq t^2(3-t)$ が必要。相加相乗平均不等式より $t^2(3-t)=4\cdot\dfrac{t}{2}\cdot\dfrac{t}{2}\cdot(3-t)\leq 4$、$t=2$ のとき等号成立。したがって $a\geq 4$。
また $-1\leq-\dfrac{1}{t}<0$ において $a\left(-\dfrac{1}{t}\right)^3-3\left(-\dfrac{1}{t}\right)+1\geq 0$ より $a\leq 3t^2+t^3$、単調性より $a\leq 4$。よって $a=4$。
例8 $x>0$、$a>0$ とする。不等式 $\sqrt{1+x}\geq 1+\dfrac{x}{2}-\dfrac{x^2}{a}$ が成立する $a$ の最大値を求めよ。
$\sqrt{1+x}=t$($t>1$)とおくと $x=t^2-1$。不等式を変形すると
これが任意の $t>1$ で成立するため $a\leq 2(t+1)^2$、最小値は $t\to 1^+$ で $8$。よって $a$ の最大値は $8$。
例9 不等式
が $\theta\in\left[0,\dfrac{\pi}{2}\right]$ で恒成立するとき、$a$ の範囲を求めよ。
$x=\cos\theta+\sin\theta$($x\in[1,\sqrt{2}]$)とおくと条件は $(2a+3)x+\dfrac{6}{x}-2(x^2-1)\leq 3a+6$ となる。整理すると $a\geq x+\dfrac{2}{x}$。$\max_{x\in[1,\sqrt{2}]}\!\left(x+\dfrac{2}{x}\right)=3$ なので $a$ の範囲は $[3,+\infty)$。
例10 $a,b,c$ が正の数で $a+b+c=\lambda$ のとき、不等式
が恒成立するような $\lambda$ の範囲を求めよ。
Cauchy の不等式より
$\lambda^2=(a+b+c)^2\geq 3(ab+bc+ca)$ より
したがって $\displaystyle\sum_{\mathrm{cyc}}\dfrac{1}{a(1+\lambda b)}\geq\dfrac{27}{3\lambda+\lambda^3}$、$a=b=c=\dfrac{\lambda}{3}$ のとき等号成立。よって $\lambda>0$ かつ $\dfrac{27}{3\lambda+\lambda^3}\geq\dfrac{27}{4}$、すなわち $\lambda\in(0,1]$。
例11 $a\in(0,1)$ のとき、不等式 $ax^2+ty^2\geq(ax+ty)^2$ が任意の実数 $x,y$ について成立するような $t$ の範囲を求めよ。
不等式を変形すると $a(1-a)x^2-(2aty)x+t(1-t)y^2\geq 0$。これが任意の $x,y\in\mathbb{R}$ で成立するためには、任意の $y$ に対して判別式が $\leq 0$、すなわち $4a^2t^2-4a(1-a)t(1-t)\leq 0$、つまり $t(t-(1-a))\leq 0$。よって $t\in[0,1-a]$。
例12 $f(x)=\log_a\!\left(x+\dfrac{a}{x}-4\right)$ の値域が $\mathbb{R}$ となる $a$ の範囲を求めよ。
$a>0$、$a\neq 1$。$f$ の定義域は
$f$ の値域が $\mathbb{R}$ $\iff$ $g(x)=x+\dfrac{a}{x}-4$($x\in D_f$)の値域が $(0,+\infty)$。
$a\leq 4$ のとき値域は $(0,+\infty)$。$a>4$ のとき値域は $[2\sqrt{a}-4,+\infty)\neq(0,+\infty)$。よって $a$ の範囲は $(0,1)\cup(1,4]$。
例13 $\mathbb{R}^+$ 上で定義された関数 $f$ が次の条件を満たすとする。
方程式 $f(mx)f(mx^2)=4(f(a))^2$ のすべての解が $1$ より大きいとき、$m$ の範囲を求めよ。
条件 (ii) より $f(x)=f(a)\log_a x$。方程式は $(\log_a m+\log_a x)(\log_a m+2\log_a x)=4$ となる。$\log_a m=n$、$\log_a x=y$ とおくと $2y^2+3ny+n^2-4=0$。解がすべて正となる条件は
整理すると $n<-2$。よって $m\in\!\left(0,\dfrac{1}{a^2}\right)$。
例14 $|m|\leq 1$ のすべての $m$ に対して $\lg^2 x-(2+m)\lg x+(m-1)>0$ が成立する $x$ の範囲を求めよ。
$y=\lg x$ とおくと不等式は $y^2-(2+m)y+(m-1)>0$。$f(m)=(1-y)m+(y^2-2y-1)$ とおくと $m\in[-1,1]$ で $f(m)>0$ が恒成立する条件は $f(-1)>0$ かつ $f(1)>0$、すなわち $y^2-y-2>0$ かつ $y^2-3y>0$。解くと $y<-1$ または $y>3$、したがって $x\in\!\left(0,\dfrac{1}{10}\right)\cup(10^3,+\infty)$。
例15 不等式 $\sin^2 x+a\cos x+a^2\geq 1+\cos x$ が任意の $x\in\mathbb{R}$ で恒成立する負の数 $a$ の範囲を求めよ。
不等式を変形すると $\!\left(\cos x+\dfrac{1-a}{2}\right)^2\leq a^2+\dfrac{(a-1)^2}{4}$。$a<0$ なので左辺は $\cos x=1$ のとき最大値 $\!\left(1+\dfrac{1-a}{2}\right)^2$ をとる。したがって
これを解くと $a\leq-2$。
例16 $x,y\in\mathbb{R}^+$ で $x+y=k$ とする。$\!\left(x+\dfrac{1}{x}\right)\!\!\left(y+\dfrac{1}{y}\right)\geq\!\left(\dfrac{k}{2}+\dfrac{2}{k}\right)^2$ が恒成立するような $k$ の範囲を求めよ。
$x=y=\dfrac{k}{2}$ のとき等号が成立する。$x\neq y$($x>y$)の場合を考える。$m=\dfrac{k}{2}$、$x=m+t$、$y=m-t$($0<t<m$)とおくと不等式は
と変形できる。これが任意の $t\in(0,m)$ で成立するための条件は $m^4-4m^2-1\leq 0$、$m>0$ で解くと $m\leq\sqrt{2+\sqrt{5}}$、したがって $k\in\left(0,\,2\sqrt{2+\sqrt{5}}\,\right]$。
例17 任意の $x\in\left[\dfrac{1}{6},\dfrac{1}{3}\right]$ に対して $|a-\ln x|>\ln 3x+\dfrac{2}{3}$ が恒成立するような $a$ の範囲を求めよ。
$u=\ln x$ とおくと $u\in\left[-\ln 6,\,-\ln 3\right]$、また $\ln 3x+\dfrac{2}{3}=u-u_0$($u_0=-\ln 3-\dfrac{2}{3}$)。条件は、$u_0\leq u\leq-\ln 3$ の範囲で $|a-u|>u-u_0$ が成り立つこと($u $a よって $a$ の範囲は $\left(-\infty,\,-\ln 3-\dfrac{2}{3}\right)\cup\left(\dfrac{2}{3}-\ln 3,\,+\infty\right)$。
例18 $M=\left\{y\,\middle|\,y=\dfrac{x^2+mx+4}{x^2-x+4},\ x\leq 1\right\}$ とする。
$y=1+\dfrac{(m+1)x}{x^2-x+4}=1+\dfrac{m+1}{x+\frac{4}{x}-1}$($x\leq 1$、$x\neq 0$)とする。
$x\leq 1$ のとき $x+\dfrac{4}{x}-1\leq -5$ または $x+\dfrac{4}{x}-1\geq 4$、したがって $-\dfrac{1}{5}\leq\dfrac{x}{x^2-x+4}\leq\dfrac{1}{4}$。
$m\geq -1$ のとき $M=\left[\dfrac{4-m}{5},\dfrac{5+m}{4}\right]$、$m<-1$ のとき $M=\left[\dfrac{5+m}{4},\dfrac{4-m}{5}\right]$。
(1) 任意の $a,b,c\in M$ が三角形の三辺となるための必要十分条件は $2y_{\min}>y_{\max}$:
解くと $-1\leq m<\dfrac{7}{13}$ または $-\dfrac{17}{7}<m<-1$、よって $m\in\left(-\dfrac{17}{7},\dfrac{7}{13}\right)$。
(2) (1) の補集合で、$m\leq-\dfrac{17}{7}$ または $m\geq\dfrac{7}{13}$。
例19 $f(x)=x^4+ax^3+bx^2+x$ が $f(3)=3$ および $f(x)\geq x$ を満たすとき、$a,b$ を求めよ。
$f(3)=3$ より $b=-(3a+9)$、したがって
$f(x)\geq x$、すなわち $x^2(x^2+ax-3a-9)\geq 0$ が任意の $x\in\mathbb{R}$ で成立する。$x\neq 0$ のとき $x^2+ax-3a-9\geq 0$ が必要なので判別式 $a^2+4(3a+9)\leq 0$、すなわち $(a+6)^2\leq 0$。よって $a=-6$、$b=9$。