ここでは、偶関数・奇関数、周期性、単調性、有界性といった関数の基本的な性質を整理し、初等関数の定義と性質、関数方程式、三角関数の恒等式と最大値・最小値の問題を扱う。
定義 1 $D$ を $\mathbb{R}$ の空でない部分集合とする。任意の $x\in D$ に対して $-x\in D$ が成り立つとし、$f:D\to\mathbb{R}$ とする。
定義からわかるように、奇関数のグラフは原点に関して対称であり、偶関数のグラフは $y$ 軸に関して対称である。$\mathbb{R}$ 上の定数関数 $0$ は奇関数でもあり偶関数でもある。
例 1
(1) 偶数 $n\ne0$ ならば $x^n$ は偶関数であり、整数 $k$ に対して $x^{2k-1}$ は奇関数である。
(2) $f(x)=\dfrac{x}{e^x-1}+\dfrac{x}{2}$ は偶関数である。
(3) $f(x)=\ln(\sqrt{x^2+1}-x)$ は奇関数である。
(2) $x\neq0$ で $f(x)=\dfrac{x(e^x+1)}{2(e^x-1)}$ と書ける。$f(-x)=\dfrac{-x(e^{-x}+1)}{2(e^{-x}-1)}=\dfrac{-x(1+e^x)}{2(1-e^x)}=f(x)$。
(3) $(\sqrt{x^2+1}-x)(\sqrt{x^2+1}+x)=1$ より $f(-x)=\ln(\sqrt{x^2+1}+x)=-\ln(\sqrt{x^2+1}-x)=-f(x)$。
例 2 $f$ を $\mathbb{R}$ 上の関数とする。
とおくと、$g$ は偶関数、$h$ は奇関数であり、かつ $f=g+h$ となる。このことから、$\mathbb{R}$ 上の任意の関数は一つの偶関数と一つの奇関数の和として表せることがわかる。
例 3 $f, g$ を $D$ 上の関数とする。
(1) $(f+g)(-x)=-f(x)-g(x)=-(f+g)(x)$、$(fg)(-x)=(-f(x))(-g(x))=(fg)(x)$。(2)(3) も同様に符号を追えばよい。(4) $g(-x)=\pm g(x)$ なので $f(g(-x))=f(\pm g(x))=f(g(x))$ ($f$ は偶関数)。また $g(f(-x))=g(f(x))$。
例 4 $E=\{f\in\mathbb{R}^{\mathbb{R}} \mid f \text{ は偶関数}\}$、$O=\{f\in\mathbb{R}^{\mathbb{R}} \mid f \text{ は奇関数}\}$ とする。単射 $\varphi:O\to E$ は存在するか?また、単射 $\psi:E\to O$ は存在するか?
解. (1) 任意の $f\in O$ に対し、
とおくと、$\varphi:O\to E,\ f\mapsto g_f$ は単射である。
(2) 任意の $f\in E$ に対し、
とおくと、$\psi:E\to O,\ f\mapsto h_f$ は単射である。
$g_f$ は偶関数、$h_f$ は奇関数であり、$f\in O$ は $t\ge0$ での値から、$f\in E$ は $f(s)=h_f(s+1)$ $(s\ge0)$ から復元できる。したがって、どちらの単射も存在する。
定義 2 $D$ を $\mathbb{R}$ の空でない部分集合とし、$f:D\to\mathbb{R}$ とする。ある $T\in\mathbb{R}\setminus\{0\}$ が存在して、任意の $x\in D$ に対して $x+T\in D$、$x-T\in D$ であり、かつ
となるとき、$f$ を周期関数といい、$T$ を $f$ の一つの周期と呼ぶ。
性質 1 $T$ が周期関数 $f$ の周期であるとき、任意のゼロでない整数 $n$ に対して $nT$ も $f$ の周期である。
定義 3 $f$ を周期関数とし、正の数 $T$ が $f$ の周期であるとする。$T$ より小さい正の数がどれも $f$ の周期とならないとき、$T$ を $f$ の最小正周期と呼ぶ。
例 5
(1) $\mathbb{R}$ 上の定数関数は周期関数であり、任意のゼロでない実数がその周期となる。したがって最小正周期は存在しない。
(2) Dirichlet 関数(Dirichlet function)は $\mathbb{R}$ 上の周期関数であり、すべてのゼロでない有理数がその周期である。したがって最小正周期は存在しない。Riemann 関数(Thomae 関数)も $\mathbb{R}$ 上の周期関数であり、$1$ を最小正周期とする。
例 6 $\sin$、$\cos$ はともに $\mathbb{R}$ 上の $2\pi$ を最小正周期とする周期関数である。$\tan$ は $\mathbb{R}\setminus\!\left\{k\pi+\dfrac{\pi}{2} \mid k\in\mathbb{Z}\right\}$ 上の $\pi$ を最小正周期とする周期関数である。
例 7 $f$ を周期関数とし、$g(x)=f(ax+b)$(ここで $a,b\in\mathbb{R}$ かつ $a\ne0$)とすると、$g$ も周期関数である。さらに、$T$ が $f$ の最小正周期であれば、$\dfrac{T}{|a|}$ は $g$ の最小正周期である。
解. $f$ を $D$ 上の関数とし、$T$ をその周期とする。$A=\{x \mid ax+b\in D\}$ とおくと、$g$ は $A$ 上の関数である。任意の $x\in A$ について、$a\!\left(x\pm\dfrac{T}{a}\right)+b = ax+b\pm T \in D$ であり、かつ
となるため、$g$ は $\dfrac{T}{a}$ を周期とする関数である。
$T$ が $f$ の最小正周期であるとする。まず上の結論から $\dfrac{T}{|a|}$ は $g$ の正の周期である。$t$ が $g$ の正の周期であるとすると、
に注意すれば、上の結論より $t|a|$ も $f$ の正の周期となる。$T$ は $f$ の最小正周期であるから $T\le t|a|$、ゆえに $\dfrac{T}{|a|}\le t$。したがって $\dfrac{T}{|a|}$ は $g$ の最小正周期である。∎
例 8 $D=\bigcup_{k\in\mathbb{Z}} \left[k,\, k+\dfrac{1}{2}+\dfrac{k}{2|k|+1}\right]$(ただし $k=0$ のとき $\left[0,\dfrac{1}{2}\right]$ と解釈する)とし、$f:D\to\mathbb{R},\ x\mapsto 1$ と定義する。任意の $x\in D$ に対して $x+1\in D$ かつ $f(x+1)=f(x)$ となることを示せ。$f$ は周期関数か?
$c_k=\dfrac{k}{2|k|+1}$ とおくと、$c_k$ は $k$ について狭義単調増加で $c_k<\dfrac12$、$D$ は互いに離れた閉区間 $I_k=\left[k,\,k+\tfrac12+c_k\right]$ の和で、$I_k$ の長さは $\tfrac12+c_k$ である。$c_k しかし $f$ は周期関数ではない。実際、$x=k+\tfrac12+c_k\in D$($I_k$ の右端)に対して $x-1$ は $I_{k-1}$ の右端より右で $I_k$ の左端より左にあり、$x-1\notin D$ となる。一般の $T\neq0$ に対しても、$T$ が周期なら $D+T\subseteq D$ かつ $D-T\subseteq D$ より $D+T=D$ となる。平行移動は $D$ の連結成分 $I_k$ を連結成分に、同じ長さのまま移すが、長さ $\tfrac12+c_k$ は $k$ ごとに異なるので $I_k+T=I_k$、すなわち $T=0$ となって矛盾する。したがって周期関数ではない。
例 9 $f:D\to\mathbb{R}$ を周期関数とし、$g:f(D)\to\mathbb{R}$ とすると、$g\circ f$ も周期関数である。さらに、$g:f(D)\to\mathbb{R}$ が単射であり、$T$ が $f$ の最小正周期であるならば、$T$ は $g\circ f$ の最小正周期でもある。
明らかに $T$ は $g\circ f$ の正の周期である。$h:f(D)\to g(f(D)),\ y\mapsto g(y)$ とおくと、$h$ は全単射である。$t$ を $g\circ f$ の正の周期とすると、$t$ は $f = h^{-1}\circ(g\circ f)$ の正の周期でもある。$T$ は $f$ の最小正周期であるため $T\le t$。したがって $T$ は $g\circ f$ の最小正周期である。∎
例 10 $f_1, f_2$ をともに $D$ 上の周期関数とし、その周期をそれぞれ $T_1, T_2$ とする。$\dfrac{T_1}{T_2}\in\mathbb{Q}$ ならば、$f_1+f_2$、$f_1-f_2$、$f_1 f_2$ はすべて周期関数である。$f_2$ が $D$ 上でどこでも $0$ にならない場合は $\dfrac{f_1}{f_2}$ も周期関数である。
$\dfrac{T_1}{T_2}=\dfrac{m}{n}$($m,n$ は正の整数)とおくと、$nT_1=mT_2$ となる。したがって $nT_1$ は $f_1$ の周期でもあり $f_2$ の周期でもあるため、それは $f_1+f_2$ などの関数の周期にもなる。∎
例 11 $1$ と $\sqrt{2}$ の両方を周期とするような、定数関数ではない $\mathbb{R}$ 上の関数 $f$ は存在するか?
$\mathbb{R}$ 上に同値関係 $R$ を次のように定義する:$x \sim y \iff x-y \in \{m+n\sqrt{2} \mid m,n\in\mathbb{Z}\}$。(選択公理により)各同値類 $[x]$ から代表元 $\varphi([x])$ を一つ選ぶ。$f:\mathbb{R}\to\mathbb{R},\ x\mapsto \varphi([x])$ と定義する。
$\sqrt{3}-0 = m+n\sqrt{2}$($m,n\in\mathbb{Z}$)であれば両辺を 2 乗して $m^2+2n^2+2mn\sqrt{2}=3$。$\sqrt{2}$ が無理数なので $mn=0$ となるが、$m=0$ なら $2n^2=3$、$n=0$ なら $m^2=3$ で、どちらも整数解がなく矛盾する。よって $0$ と $\sqrt{3}$ は異なる同値類に属するから $f(0)\ne f(\sqrt{3})$ であり、$f$ は定数関数でない。一方、$x+1,\ x-1,\ x+\sqrt{2},\ x-\sqrt{2}$ はすべて $x$ と同値であるため
が成り立つ。∎
定義 4 $D\subseteq\mathbb{R}$、$f:D\to\mathbb{R}$ とする。
性質 2 $f:D\to\mathbb{R}$ が狭義単調であるならば、$f$ は単射である。したがって $f:D\to f(D)$ は逆写像を持つ。
例 12 $f:\mathbb{R}\to\mathbb{R}$ が単調増加であり、かつ $f\circ f=I_{\mathbb{R}}$ であるならば、$f=I_{\mathbb{R}}$ であることを証明せよ。もし $f$ が単調減少であれば、必ず $f\circ f = I_{\mathbb{R}}$ となるか?
ある $x$ で $f(x)>x$ とすると、$f$ が単調増加なので $f(f(x))\ge f(x)>x$ となり、$f\circ f=I_{\mathbb{R}}$ に反する。$f(x) $f$ が単調減少の場合は、$f\circ f=I_{\mathbb{R}}$ とは限らない。たとえば $f(x)=-2x$ は単調減少だが $f(f(x))=4x\neq x$ である。($f(x)=-x$ のように $f\circ f=I_{\mathbb{R}}$ となる単調減少関数もある。)
例 13 $f:\mathbb{R}^+\to\mathbb{R}$、$x, y\in\mathbb{R}^+$ とする。$\dfrac{f(t)}{t}$ が単調増加ならば、$f(x+y)\ge f(x)+f(y)$ となることを証明せよ。
$x+y>x$ より $\dfrac{f(x+y)}{x+y}\ge\dfrac{f(x)}{x}$。$x+y>y$ より $\dfrac{f(x+y)}{x+y}\ge\dfrac{f(y)}{y}$。ゆえに
∎
定義 5 $f:D\to\mathbb{R}$ とし、$E$ を $D$ の空でない部分集合とする。
例 14 $f:(0,+\infty)\to\mathbb{R}$ を単調増加とする。$\beta$ が数列 $\{f(n)\}$ の上界であるならば、$\beta$ は $f$ の上界でもあることを証明せよ。また $\gamma$ が $\{f(n)\}$ の上確界であるならば、$\gamma$ は $f$ の上確界でもあることを証明せよ。
(1) 任意の $x\in(0,+\infty)$ に対して、ある正の整数 $n$ が存在して $n>x$ となる。ゆえに $f(x)\le f(n)\le\beta$。
(2) (1) で $\beta=\gamma$ とすれば、$\gamma$ は $f$ の上界である。逆に $\beta'$ が $f$ の任意の上界ならば、$\beta'$ は $\{f(n)\}$ の上界でもあるから $\beta'\ge\gamma$。したがって $\gamma$ は $f$ の上界の最小値、すなわち上確界である。∎
例 15 以下を証明せよ。
(1) 数列 $\left\{\!\left(1+\dfrac{1}{n}\right)^n\right\}$ は狭義単調増加であり上に有界である。
(2) 数列 $\left\{\!\left(1+\dfrac{1}{n}\right)^{n+1}\right\}$ は狭義単調減少であり下に有界である。
(3) $\sup\!\left\{\!\left(1+\dfrac{1}{n}\right)^n \mid n\in\mathbb{N}^*\right\} = \inf\!\left\{\!\left(1+\dfrac{1}{n}\right)^{n+1} \mid n\in\mathbb{N}^*\right\}$。
(1)(2) $x_n = \left(1+\dfrac{1}{n}\right)^n$、$y_n = \left(1+\dfrac{1}{n}\right)^{n+1}$ とおく。狭義単調性は相加相乗平均の不等式から得られる。$n$ 個の $1+\dfrac1n$ と $1$ の $n+1$ 個に使うと $x_n<\left(\dfrac{n+2}{n+1}\right)^{n+1}=x_{n+1}$、$n+1$ 個の $\dfrac{n}{n+1}$ と $1$ の $n+2$ 個に使うと $\dfrac{1}{y_n}=\left(\dfrac{n}{n+1}\right)^{n+1}<\left(\dfrac{n+1}{n+2}\right)^{n+2}=\dfrac{1}{y_{n+1}}$(等号は成立しない)。また $y_n=x_n\left(1+\dfrac1n\right)$ である。これらから、$x_1 \le x_n < y_n \le y_1$ となり有界性が得られる。
(3) 確界の存在定理より、$\alpha = \sup\{x_n \mid n\in\mathbb{N}^*\}$、$\beta = \inf\{y_n \mid n\in\mathbb{N}^*\}$ はともに存在する。任意の正の整数 $m, n$ に対して $x_n \le x_{m+n} \le y_{m+n} \le y_m$ が成り立つため、各 $y_m$ は $\{x_n\}$ の上界となる。したがって任意の正の整数 $m$ について $\alpha \le y_m$、すなわち $\alpha \le \beta$。
任意の $\epsilon>0$ に対して、$n>\dfrac{y_1}{\epsilon}$ となる正の整数 $n$ をとると
したがって $\beta-\alpha=0$。∎
例 16 $a<b$ とし、$f$ を $(a,b)$ 上の凸関数とする。$f$ は下界を持つことを証明せよ。
$c=\dfrac{a+b}{2}$ とおく。$f$ が $(a,c)$ 上と $(c,b)$ 上のそれぞれで下界を持つことを示せば十分である。$d\in(c,b)$ を任意に一つとる。任意の $x\in(a,c)$ について、
であるため、凸性より
となる。したがって
ゆえに $f$ は $(a,c)$ 上で下界を持つ。$x\in(c,b)$ に対しては $d\in(a,c)$ をとって同じ議論をすれば、$f$ は $(c,b)$ 上でも下界を持つ。$f(c)$ とあわせて、$f$ は $(a,b)$ 上で下界を持つ。
指数関数は狭義単調増加であり、上界を持たず、$\inf_{x\in\mathbb{R}}e^x=0$ であり、値域は $(0,+\infty)$ である。指数関数は $\exp$ とも記される。
正弦関数 $\sin$ と余弦関数 $\cos$ はともに $2\pi$ を最小正周期とする周期関数であり、値域はともに $[-1,1]$ である。また、
$\sin$ は奇関数であり、その零点の集合は $\{k\pi \mid k\in\mathbb{Z}\}$ である。$\left[-\frac{\pi}{2}, \frac{\pi}{2}\right]$ 上で狭義単調増加、$\left[\frac{\pi}{2}, \frac{3\pi}{2}\right]$ 上で狭義単調減少である。また、$\sin$ のグラフは直線 $x=\frac{\pi}{2}$ に関して対称である。すなわち $\sin(\pi-x)=\sin x$。
これらの性質から、$\cos$ についても対応する性質が得られる。例えば $\cos$ のグラフは直線 $x=0$ に関して対称である。
正接関数 $\tan$ は $\mathbb{R}\setminus\left\{k\pi+\frac{\pi}{2} \mid k\in\mathbb{Z}\right\}$ 上の関数であり、$\tan = \frac{\sin}{\cos}$ である。$\pi$ を最小正周期とする周期関数であり、$\left(-\frac{\pi}{2}, \frac{\pi}{2}\right)$ 上で狭義単調増加であり、上界も下界も持たず、値域は $\mathbb{R}$ である。
対数関数 $\ln$ は $\exp$ の逆関数である。
逆正弦関数 $\arcsin$ は $\sin : \left[-\frac{\pi}{2}, \frac{\pi}{2}\right] \to [-1,1]$ の逆関数である。
逆余弦関数 $\arccos$ は $\cos : [0, \pi] \to [-1,1]$ の逆関数である。
逆正接関数 $\arctan$ は $\tan : \left(-\frac{\pi}{2}, \frac{\pi}{2}\right) \to \mathbb{R}$ の逆関数である。
逆関数の性質により、これらの関数の値域、単調性、グラフなどの直感的な情報を知ることができる。
まず、$\alpha\in\mathbb{R}$ に対して
を定義し、これを冪関数と呼ぶ。$\varphi(x)$ を $x^\alpha$ と記す。すなわち、
$\alpha$ が整数や分母が奇数の有理数のときは、定義域を $x\le0$ の側にも自然に拡張できる(たとえば $\alpha=3$ なら $\mathbb{R}$ 全体、$\alpha=-1$ なら $x\neq0$)。以下、特に断らない限り定義域は $(0,+\infty)$ とする。
定数関数、指数関数、正弦関数、余弦関数、正接関数、対数関数、逆正弦関数、逆余弦関数、逆正接関数、冪関数を総称して基本初等関数と呼ぶ。有限個の基本初等関数から、有限回の四則演算と合成によって得られる関数を初等関数と呼ぶ。
例 1 多項式関数 $p(x)=a_0+a_1 x+\dots+a_n x^n$(ここで $n$ は正の整数、$a_0, \dots, a_n$ は実数)は初等関数である。
例 2 $f:\mathbb{R}^+\to\mathbb{R},\ x\mapsto (1+x)^{\sin x}$ は初等関数である。
問題 $\operatorname{sgn}(x)=\dfrac{x}{|x|}$ は初等関数か?
初等関数である(自然な定義域は $x\neq0$)。$|x|=(x^2)^{1/2}=e^{\frac12\ln x^2}$ は冪関数・対数関数・指数関数の合成で、$\operatorname{sgn}(x)=x\Big/e^{\frac12\ln x^2}$ は四則演算と合成だけで書ける。
を双曲線正弦と呼ぶ。これは奇関数であり、値域は $\mathbb{R}$ であり、$\mathbb{R}$ 上で狭義単調増加である。その逆関数を $\operatorname{arsinh}$ と記し、逆双曲線正弦と呼ぶ。
を双曲線余弦と呼ぶ。これは偶関数であり、値域は $[1,+\infty)$ であり、$(-\infty, 0]$ 上で狭義単調減少、$[0,+\infty)$ 上で狭義単調増加である。$\cosh : [0,+\infty)\to[1,+\infty)$ の逆関数を $\operatorname{arcosh}$ と記し、逆双曲線余弦と呼ぶ。
を双曲線正接と呼ぶ。これは狭義単調増加な奇関数であり、値域は $(-1,1)$ である。その逆関数を $\operatorname{artanh}$ と記し、逆双曲線正接と呼ぶ。
双曲線正弦、双曲線余弦、双曲線正接を総称して双曲線関数 (hyperbolic function) と呼び、それらの逆関数を総称して逆双曲線関数と呼ぶ。双曲線関数 $\sinh, \cosh, \tanh$ はそれぞれ $\operatorname{sh}, \operatorname{ch}, \operatorname{th}$ とも記される。逆双曲線関数 $\operatorname{arsinh}, \operatorname{arcosh}, \operatorname{artanh}$ はそれぞれ $\operatorname{arsh}, \operatorname{arch}, \operatorname{arth}$、あるいは $\sinh^{-1}, \cosh^{-1}, \tanh^{-1}$(または $\operatorname{sh}^{-1}, \operatorname{ch}^{-1}, \operatorname{th}^{-1}$)とも記される。
問題 双曲線正弦、双曲線余弦、双曲線正接のグラフの概形を調べ、逆双曲線正弦、逆双曲線余弦、逆双曲線正接を対数を用いて表せ。
グラフ:$\sinh$ は奇関数で $\mathbb{R}$ 上狭義単調増加、$\cosh$ は偶関数で $x=0$ で最小値 $1$ をとり、$\tanh$ は奇関数で狭義単調増加、$y=\pm1$ を漸近線とする。
逆関数:$t=e^x$ とおく。$y=\sinh x$ なら $t-\dfrac1t=2y$、すなわち $t^2-2yt-1=0$ で、$t>0$ より $t=y+\sqrt{y^2+1}$。$y=\cosh x$($x\ge0$ なので $t\ge1$)なら $t^2-2yt+1=0$ から $t=y+\sqrt{y^2-1}$。$y=\tanh x$ なら $y=\dfrac{t^2-1}{t^2+1}$ から $t^2=\dfrac{1+y}{1-y}$。よって
問題 なぜ正弦関数の逆関数は $\arcsin$ と記されるのに、双曲線正弦関数の逆関数は $\operatorname{arsinh}$ と記されるのか?
円では、単位円上の点 $(\cos t,\sin t)$ に対し $t$ は弧(arc)の長さなので $\arcsin,\arccos$ と書く。双曲線 $x^2-y^2=1$ 上の点 $(\cosh t,\sinh t)$ では、原点・$(1,0)$・この点が作る扇形の面積(area)が $\dfrac t2$ で、$t$ は面積に対応する。そこで $\operatorname{ar}$ は area(面積)の略で、$\operatorname{arsinh}$ は area sinus hyperbolicus に由来する。弧の長さではないので $\operatorname{arc}$ とは書かない。
初等関数 $f$ の自然な定義域とは、式 $f(x)$ が意味を持つ実数からなる集合のことである。
性質 1 $f$ を初等関数とし、その自然な定義域を $D$ とする。$[a,b]\subseteq D$ ならば、$f$ は $[a,b]$ 上で最大値を持ち、また最小値も持つ。さらに $f([a,b])$ もまた閉区間となる。(証明略)
例 1 $f(x)=\dfrac{2^x-1}{2^x+1}$、$g(x)=f^{-1}(x)$ とする。$g\!\left(\dfrac{3}{5}\right)$ を求めよ。
解. $y=f(x)$ とその逆関数 $y=f^{-1}(x)$ の関係から、$f^{-1}\!\left(\dfrac{3}{5}\right)$ を求めることは方程式
を解くことと同じである。$5(2^x-1)=3(2^x+1)$ より $2^x=4$、すなわち $x=2$。∎
例 2 $f(x)=\dfrac{ax+b}{cx+d}$ のグラフが、その逆関数のグラフと完全に重なるとき、この関数はどのような形式を持つべきか?ここで $a,b,c,d$ は定数であり、$a,c$ は同時には $0$ にならないとする。
解. $y=\dfrac{ax+b}{cx+d}$ より $x=\dfrac{dy-b}{-cy+a}$ となる。したがって $f(x)$ の逆関数は $f^{-1}(x)=\dfrac{dx-b}{-cx+a}$ である。$f(x)=f^{-1}(x)$ より、
ゆえに、
したがって、
ゆえに、$a+d=0$ であるか、または $a=d\ne0$ かつ $b=c=0$ である。したがって、$f(x) = \dfrac{ax+b}{cx-a}$(ただし $-a^2-bc\neq0$、すなわち定数関数でないこと)、または $f(x)=x$ となる。∎
例 3 $f(x)=x+\dfrac{1}{x}$ の単調区間を求めよ。
解. $f$ の定義域は $(-\infty, 0)\cup(0, +\infty)$ であり、$f(-x)=-f(x)$ である。$x_1, x_2\in(0,+\infty)$ をとり、$x_1<x_2$ と仮定すると、
(1) $0<x_1<x_2\le1$ のとき、$f(x_2)<f(x_1)$ となる。したがって $(0,1]$ 上で狭義単調減少である。$f$ が奇関数であることから、$f(x)$ は $[-1,0)$ 上でも狭義単調減少となる。
(2) $1\le x_1<x_2$ のとき、$f(x_1)<f(x_2)$ となる。したがって $[1,+\infty)$ 上で狭義単調増加である。$f$ が奇関数であることから、$f(x)$ は $(-\infty,-1]$ 上でも狭義単調増加となる。∎
例 4 $0<\alpha, \beta, \gamma<\dfrac{\pi}{2}$ であり、
を満たすとする。$\alpha=\beta=\gamma$ を証明せよ。
$A=\{\alpha, \beta, \gamma\}$、$B=\{\cos\alpha, \cos\beta, \cos\gamma\}$ とおくと、条件より $B=\{\tan\alpha, \tan\beta, \tan\gamma\}$ でもある。$\alpha = \min A$ と仮定して一般性を失わない。$\cos$ の単調性より $\cos\alpha = \max B$ となる。$\cos\alpha = \tan\beta$ より $\tan\beta = \max B$ である。$\tan$ の単調性より $\beta = \max A$ となる。$\cos$ の単調性より $\cos\beta = \min B$ であり、$\cos\beta = \tan\gamma$ であるから $\tan\gamma = \min B$ となる。さらに $\tan$ の単調性より $\gamma = \min A$ となる。したがって $\alpha=\gamma$(ともに最小)である。すると $\tan\alpha=\cos\gamma=\cos\alpha=\tan\beta$ より $\alpha=\beta$。ゆえに $\alpha=\beta=\gamma$ である。∎
例 5 関数 $f(x)=x^2$ は $\mathbb{R}$ 上で下界を持ち上界を持たないこと、また関数 $g(x)=\dfrac{1}{x}$ は $(1,+\infty)$ 上で有界であること($1$ は上界であり、$0$ は下界である)を証明せよ。
$f(x)=x^2\ge0$ なので $0$ が下界。任意の実数 $A$ に対して $x=|A|+1$ とおくと $f(x)=x^2\ge x>A$ なので、上界はない。また $x>1$ のとき $0<\dfrac1x<1$ なので、$g$ は $(1,+\infty)$ 上で有界である。∎
例 6 $f(x)=\tan x$ は $\left(-\dfrac{\pi}{2}, \dfrac{\pi}{2}\right)$ 上で無界であるが、$\left(-\dfrac{\pi}{2}, \dfrac{\pi}{2}\right)$ 内の任意の閉区間 $[a,b]$ 上では有界であることを証明せよ。
(1) 任意の $A>0$ に対して、$x_0 = \arctan(A+1)$ ととると、$x_0 \in \left(-\dfrac{\pi}{2}, \dfrac{\pi}{2}\right)$ であり、
となる。
(2) $[a,b] \subseteq \left(-\dfrac{\pi}{2}, \dfrac{\pi}{2}\right)$ を任意にとる。$f(x)=\tan x$ は $[a,b]$ 上で増加するため、$x\in[a,b]$ のとき $\tan a \le \tan x \le \tan b$ となる。$A = \max\{|\tan a|, |\tan b|\}$ とおけば、すべての $x\in[a,b]$ に対して $|\tan x| \le A$ となる。∎
例 7 $f(x)=\cos(x^2)$ は周期関数ではないことを証明せよ。
$f(x)=\cos(x^2)$ が周期 $T$ を持つと仮定し、$T>0$ として一般性を失わない。このとき任意の実数 $x$ について
が成り立つ。$x=0$ を代入すると $\cos(T^2)=1$ となるため、ある $k\in\mathbb{Z}^+$ が存在して $T^2=2k\pi$ となる。さらに $x=\sqrt{2}T$ を代入すると、$\cos\!\left((\sqrt{2}+1)^2 T^2\right) = \cos(2T^2) = \cos(4k\pi) = 1$ となる。ゆえにある $m\in\mathbb{Z}^+$ が存在して $(\sqrt{2}+1)^2 T^2 = 2m\pi$ となる。したがって $(\sqrt{2}+1)^2 = \dfrac{m}{k}$ となるが、これは不可能である(左辺は無理数、右辺は有理数)。
例 8 $f(x)=\sin^n x\ (n\in\mathbb{N}^+)$ の最小正周期を $T$ とするとき、次を証明せよ。
(1) $n=2k+1$ のとき、$2\pi$ は $f(x)$ の一つの周期である。$T_0$ も $f(x)$ の周期であり、$0<T_0<2\pi$ であると仮定する。任意の $x\in\mathbb{R}$ について $\sin^{2k+1}(x+T_0)=\sin^{2k+1}x$ が成り立つ。$x=\dfrac{\pi}{2}$ を代入すると $\sin^{2k+1}\!\left(\dfrac{\pi}{2}+T_0\right)=1$、すなわち $\cos^{2k+1}T_0=1$ となる。ゆえに $\cos T_0=1$ である。しかし $0<T_0<2\pi$ より $\cos T_0 < 1$ であるため矛盾する。
(2) $n=2k$ のとき、$f(x)=(\sin^2 x)^k$ であるため、$\pi$ は $f(x)$ の一つの周期である。$T_0$ も $f(x)$ の周期であり、$0<T_0<\pi$ であると仮定する。任意の $x\in\mathbb{R}$ について $\sin^{2k}(x+T_0)=\sin^{2k}x$ が成り立つ。$x=0$ を代入すると $\sin^{2k}T_0=0$ となるため、$\sin T_0=0$ である。しかし $0<T_0<\pi$ より $\sin T_0 > 0$ であるため矛盾する。
例 9 $y=f(x)$ のグラフが $\mathbb{R}$ 上で $x=a$ に関して対称であり、かつ $x=b$ に関して対称であって $a\ne b$ であるならば、$f(x)$ は $\mathbb{R}$ 上の周期関数であることを示せ。
$(x,f(x))$ が $f(x)$ のグラフ上にあるとすると、条件から $(2a-x, f(x))$ と $(2b-x, f(x))$ もグラフ上にある。すなわち $f(2a-x)=f(2b-x)=f(x)$ である。$x$ を $2a-x$ に置き換えると、$f(x)=f(2b-2a+x)$ となるため、周期関数である。
例 10 $\dfrac{3}{2}\le x\le5$ とする。
であることを証明せよ。
べき乗平均の不等式より、
最初の不等号で等号が成立するには $\sqrt{x+1}=\sqrt{2x-3}=\sqrt{15-3x}$ が必要だが、$x+1=2x-3$ なら $x=4$ で、このとき $15-3x=3\neq5$ となるので成立しない。よって不等号の少なくとも一方は厳密($<$)に成り立ち、
となる。
例 11 正の数 $a,b,c$ が $a+b+c=1$ を満たすとする。次を証明せよ。
$f(x)=\sqrt[3]{x},\ x\in(0,+\infty)$ とすると、$-f$ は狭義凸関数である。また $a+b+c=1$ であるため、
例 12 $\triangle ABC$ において、常に次が成り立つことを証明せよ。
(1) $f(x)=-\sin x\ (0<x<\pi)$ とおくと、$f$ は狭義凸関数である。Jensen の不等式より
ゆえに $\sin A+\sin B+\sin C \le 3\sin\dfrac{\pi}{3} = \dfrac{3}{2}\sqrt{3}$。
(2) $g(x)=-\cos x\ \left(0<x<\dfrac{\pi}{2}\right)$ とおくと、$g$ も狭義凸関数である。したがって
ゆえに $\cos\dfrac{A}{2}+\cos\dfrac{B}{2}+\cos\dfrac{C}{2} \le \dfrac{3}{2}\sqrt{3}$。
例 13
とし、任意の $x\in[t, t+2]$ に対して不等式 $f(x+t)\ge2f(x)$ が恒等的に成り立つとする。$t$ の値の範囲を求めよ。
$f(x)=x^2\operatorname{sgn}(x)$ であるため、
したがって不等式 $f(x+t)\ge 2f(x)$ は $f(x+t)\ge f(\sqrt{2}x)$ となる。$f(-x) = -f(x)$ より、$f(x)$ は $\mathbb{R}$ 上の奇関数である。また $f(x)$ は $[0,+\infty)$ 上で狭義単調増加であるため、$f(x)$ は $\mathbb{R}$ 上で狭義単調増加関数となる。したがって
ゆえに、題意の条件は「任意の $x\in[t, t+2]$ に対して $(\sqrt{2}-1)x \le t$ が恒等的に成り立つ」ことである。これより $(\sqrt{2}-1)(t+2) \le t$、すなわち $t \ge \sqrt{2}$ を得る。
例 14 $a\in\mathbb{R}$ とする。$x, y\in\left[-\dfrac{\pi}{4}, \dfrac{\pi}{4}\right]$ であり、
を満たすとき、$\cos(x+2y)$ を求めよ。
$f(t)=t^3+\sin t$ とおくと、
$f(t)$ は奇関数であるため、$f(-2y)=2a=f(x)$ となる。また $f(t)$ は $\left[-\dfrac{\pi}{2}, \dfrac{\pi}{2}\right]$ 上で狭義単調増加であるため、$-2y=x$、すなわち $x+2y=0$ となる。ゆえに $\cos(x+2y)=1$ である。
例 15 $f(x)=|x-1|+|x-2|$ の最小値を求めよ。
まず不等式
より $f(x)\ge 1$ である。また $f(1)=1$ であるため、$f(x)$ の最小値は $1$ である。
例 16 $x\in(-\infty, -1]$ のとき、$y=x^2+x\sqrt{x^2-1}$ の最大値を求めよ。
まず次のように変形する。
$t(x)=x+\sqrt{x^2-1} = \dfrac{1}{x-\sqrt{x^2-1}}$ は $(-\infty, -1]$ 上で減少するため、$-1 = t(-1) \le t(x) < 0$ となる。したがって $2y \le 2$、すなわち $y \le 1$ である。ゆえに $x=-1$ のとき、$y$ は最大値 $1$ をとる。
例 17 $f(x)=2-2a\cos x-\sin^2 x$ の最大値と最小値を求めよ(ここで $a$ はパラメータ)。
まず $f(x)=\cos^2 x-2a\cos x+1 = (\cos x-a)^2+1-a^2$ となる。$t=\cos x$ とおく。$f(x) \triangleq g(t) = (t-a)^2+1-a^2,\ t\in[-1,1]$。
(1) $a<-1$ のとき、$g(t)$ は $[-1,1]$ 上で増加するため、$f(x)$ の最大値 $M=g(1)=2-2a$、最小値 $m=g(-1)=2+2a$。
(2) $-1\le a<0$ のとき、$g(t)$ は $[-1,a]$ 上で減少し、$[a,1]$ 上で増加する。最大値 $M=g(1)=2-2a$、最小値 $m=g(a)=1-a^2$。
(3) $0\le a<1$ のとき、$g(t)$ は $[-1,a]$ 上で減少し、$[a,1]$ 上で増加する。最大値 $M=g(-1)=2+2a$、最小値 $m=g(a)=1-a^2$。
(4) $a\ge 1$ のとき、$g(t)$ は $[-1,1]$ 上で減少する。最大値 $M=g(-1)=2+2a$、最小値 $m=g(1)=2-2a$。
以上をまとめると、$f(x)$ の最大値は
最小値は
例 18 関数 $y=\dfrac{225}{4\sin^2 x}+\dfrac{2}{\cos x}$ の $x\in\left(0, \dfrac{\pi}{2}\right)$ における最小値を求めよ。
任意の $k>0$ に対して、常に次が成り立つ。
等号が成立するのは、
すなわち
のときである。このとき $\dfrac{15}{2\sqrt{k}}+\dfrac{1}{\sqrt[3]{k^2}}=1$ である。$\dfrac{1}{k}=t^6$ とおくと、$2t^4+15t^3-2=0$、すなわち $(2t-1)(t^3+8t^2+4t+2)=0$ となる。$t>0$ では $t^3+8t^2+4t+2>0$ なので、正の根は $t=\dfrac{1}{2}$ のみである。$t=\dfrac{1}{2}$ のとき $k=\dfrac{1}{t^6}=64$ であり、このとき等号が成立する。ゆえに $y \ge 15\sqrt{64}+3\sqrt[3]{64}-64 = 68$。このとき $\sin^2 x=\dfrac{15}{16}$、$\cos^2 x=\dfrac{1}{16}$ で等号が成立するから、最小値は $68$ である。
関数方程式とは、未知の関数を含む方程式のことである。関数方程式を成り立たせる関数を関数方程式の解といい、関数方程式の解を求める、あるいは関数方程式に解がないことを証明する過程を、関数方程式を解くという。
例 1 $f:\mathbb{R}\to\mathbb{R}$ が $f(0)=1$ を満たし、かつ任意の $x, y\in\mathbb{R}$ に対して
を満たすとき、$f(x)$ を求めよ。
解. $x=0$ を代入すると、$f(-y) = f(0)-(-y+1)y$ となる。したがって
ゆえに $f(x)=x^2+x+1$ である。∎
例 2 $f$ を $\mathbb{N}^+$ 上の関数とし、$f(1)=1$、かつ任意の正の整数 $x, y$ に対して
が成り立つとする。$f(x)$ を求めよ。
解. $y=1$ を代入すると、$f(x)+f(1) = f(x+1)-x$、すなわち $f(x+1)-f(x) = x+1$ を得る。この式に順に $x=1, 2, 3, \dots, n-1$ を代入して足し合わせると、
したがって $f(x) = \dfrac{1}{2}(x^2+x),\ x\in\mathbb{N}^+$ である。∎
例 3 $f\!\left(\dfrac{1+x}{x}\right) = \dfrac{x^2+1}{x^2}+\dfrac{1}{x}$ であることが知られているとき、$f(x)$ を求めよ。
解. ($f$ の定義域に注意する。)
ここで $\dfrac{1+x}{x}=1+\dfrac{1}{x}\ne 1$ であるため、$f(x)=x^2-x+1,\ x\ne 1$ である。∎
例 4 $f\!\left(x+\dfrac{1}{x}\right)=x^2+\dfrac{1}{x^2}$、$g\!\left(x+\dfrac{1}{x}\right)=x^3+\dfrac{1}{x^3}$ とする。$f(g(x))$ を求めよ。
解. 容易に $f(x)=x^2-2\ (|x|\ge 2)$ とわかる。また、
より、$g(x)=x^3-3x\ (|x|\ge 2)$ である。$2\le z<y$ のとき、
したがって $g$ は $[2, +\infty)$ 上で狭義単調増加である。$g$ は奇関数であるため、$(-\infty, -2]$ 上でも狭義単調増加となる。ゆえに $x\in[2, +\infty)$ のとき $g(x)\ge g(2)=2$、また $x\in(-\infty, -2]$ のとき $g(x)\le g(-2)=-2$ である。したがって $|x|\ge 2$ のとき、常に $|g(x)|\ge 2$ となる。ゆえに
∎
例 5 $f\!\left(\dfrac{1-x}{1+x}\right) = \dfrac{x^2+1}{2x}$ であることが知られているとき、$f(x)$ を求めよ。
解. $t=\dfrac{1-x}{1+x}$ とおく。$x\ne -1$、$x\ne 0$ であるため $t\ne \pm 1$ である。$t=\dfrac{1-x}{1+x}$ より $x=\dfrac{1-t}{1+t}$ となる。したがって
ゆえに $f(x) = \dfrac{1+x^2}{1-x^2}\ (x\ne \pm 1)$ である。∎
例 6 $f(\cos x-1) = \cos^2 x$ であることが知られているとき、$f(x)$ を求めよ。
解. $\cos x-1=u$ とおくと、$-2\le u\le 0$ であり $\cos x=u+1$ となる。
ゆえに $f(x)=(x+1)^2,\ x\in[-2, 0]$ である。∎
例 7 $f(x)$ が
を満たすとする。ここで $a,b,c$ はすべて非ゼロの定数であり、$a\ne \pm b$ である。$f(x)$ を求めよ。
解. $af(x)+bf\!\left(\dfrac{1}{x}\right) = cx$ の $x$ を $\dfrac{1}{x}$ に置き換えると、$af\!\left(\dfrac{1}{x}\right)+bf(x) = \dfrac{c}{x}$ となる。これらから $f\!\left(\dfrac{1}{x}\right)$ を消去すると、
を得る。∎
例 8 $f:\mathbb{R}\to\mathbb{R}$ が、任意の実数 $x,y$ に対して
を満たすとき、$f$ を求めよ。
解. $f(0) = f(-f(y)+f(y)) = -2f(y)+2f(y+1)$ より、$2f(y+1) = 2f(y)+f(0)$ を得る。特に、$2f(1)=3f(0)$ である。したがって
任意の実数 $t$ に対して $x=t-f(0)$ とおくと、
特に、$f(1)=2+f(0)$ となる。$3f(0)=2f(1)=2(2+f(0))$ より $f(0)=4$ を得る。ゆえに $f(t)=2t+4$ である。逆に $f(x)=2x+4$ は $f(x+f(y))=2x+4y+12=2x+2f(y+1)$ を満たす。∎
例 9 関数 $f:\mathbb{Q}\to\mathbb{Q}$ が $f(1)=2$ を満たし、かつ任意の $x,y\in\mathbb{Q}$ に対して
を満たすとき、$f$ を求めよ。
解. 任意の $x\in\mathbb{Q}$ に対して、
ゆえに $f(x+1)-f(x)=1$ となる。したがって任意の整数 $k$ に対して $f(k)=k+1$ であり、かつ $f(x+k)=f(x)+k$ となる。したがって、任意の $x\in\mathbb{Q}$ および任意の整数 $k$ に対して、
$p,q\in\mathbb{Z},\ q>0$ のとき、
ゆえに $f\!\left(\dfrac{p}{q}\right) = \dfrac{p}{q}+1$ となる。したがって任意の $x\in\mathbb{Q}$ に対して $f(x)=x+1$ である。(逆に $f(x)=x+1$ は $f(xy)=xy+1=(x+1)(y+1)-(x+y+1)+1$ を満たす。)∎
定理 1 $f:\mathbb{R}\to\mathbb{R}$ が単調であり、かつ任意の $x,y\in\mathbb{R}$ に対して
が成り立つならば、$f(x)=f(1)x$ である。
$f(0)=f(0+0)=f(0)+f(0)$ より $f(0)=0$ を得る。任意の実数 $x$ に対して、任意の正の整数 $n$ について $f(nx)=nf(x)$ となることは数学的帰納法を用いて容易に証明できる。任意の正の整数 $m$ に対して $mf\!\left(\dfrac{x}{m}\right) = f\!\left(m\cdot\dfrac{x}{m}\right) = f(x)$ となるため、$f\!\left(\dfrac{x}{m}\right) = \dfrac{1}{m}f(x)$ である。任意の正の有理数 $r$ に対して、正の整数 $p,q$ が存在して $r=\dfrac{p}{q}$ と表せる。したがって
任意の $t\in\mathbb{R}$ に対して $f(t)+f(-t)=f(t+(-t))=f(0)=0$ であるため、$f$ は奇関数である。したがって任意の負の有理数 $r$ に対しても $f(rx)=-f((-r)x)=-(-r)f(x)=rf(x)$ が成り立つ。以上より、任意の有理数 $r$ に対して $f(rx)=rf(x)$ である。特に $f(r)=f(1)r$ となる。
最後に、任意の実数 $x$ について、任意の $\epsilon>0$ に対して $|f(x)-f(1)x|<\epsilon$ となることを証明する。$\eta=\dfrac{\epsilon}{4|f(1)|+1}$ とおく。$\mathbb{Q}$ の稠密性より、$r,s\in\mathbb{Q}$ が存在して $x-\eta < r < x < s < x+\eta$ となる。$f$ は単調であるため、$|f(x)-f(r)|\le|f(s)-f(r)| = |f(1)(s-r)|$ となる。したがって、
問題 $f:\mathbb{R}\to\mathbb{R}$ が、任意の $x,y\in\mathbb{R}$ に対して $f(x+y)=f(x)+f(y)$ を満たし、かつある区間上で有界であるとき、必ず $f(x)=f(1)x$ となるか?
必ず成り立つ。区間 $(c-\delta,c+\delta)$ 上で $|f|\le M$ とする。$|h|<\delta$ のとき $f(h)=f(c+h)-f(c)$ なので $|f(h)|\le2M$。任意の $\epsilon>0$ に対し、正の整数 $N$ を $\dfrac{2M}{N}<\epsilon$ ととる。$|x|<\dfrac\delta N$ のとき $|Nx|<\delta$ で、$f(x)=\dfrac{f(Nx)}N$ より $|f(x)|\le\dfrac{2M}{N}<\epsilon$。よって $f$ は $0$ で連続である。$f(x)-f(y)=f(x-y)$ から $f$ は至るところ連続であり、定理 1 の証明の前半(有理数 $r$ に対して $f(r)=f(1)r$)と有理数の稠密性から、すべての実数 $x$ で $f(x)=f(1)x$ となる。
定理 2 $f:\mathbb{R}\to\mathbb{R}$ が狭義単調であり、かつ任意の $x,y\in\mathbb{R}$ に対して
が成り立つとする。このとき $f(1)>0,\ f(1)\ne 1$ であり、$f(x)=(f(1))^x$ である。すなわち指数関数である。
まず $f(x)$ は恒等的にゼロではないことを証明する。実際、もしある $x_0\in\mathbb{R}$ が存在して $f(x_0)=0$ となれば、任意の $x\in\mathbb{R}$ に対して
となるが、これは $f(x)$ が $\mathbb{R}$ 上で狭義単調であることと矛盾する。したがって $f(x)$ は恒等的にゼロではない。ゆえに任意の $x\in\mathbb{R}$ に対して $f(x) = f\!\left(\dfrac{x}{2}+\dfrac{x}{2}\right) = \left(f\!\left(\dfrac{x}{2}\right)\right)^2 > 0$ である。最後に、$f(x+y)=f(x)f(y)$ の両辺の対数をとると $\ln f(x+y) = \ln f(x) + \ln f(y)$ となる。定理 1 より $\ln f(x) = x\ln f(1)$ となる。したがって $f(x) = e^{x\ln f(1)} = (f(1))^x$ である。$f$ は狭義単調であるため $f(1)\ne f(2)$ である。一方で $f(2)=f(1)f(1)$ であるため $f(1)\ne f(1)f(1)$ となり、ゆえに $f(1)\ne 1$ である。
定理 3 $f:(0,+\infty)\to\mathbb{R}$ が狭義単調であり、かつ任意の $x,y>0$ に対して
が成り立つならば、$f$ は対数関数である。
$g(x)=f(e^x)$ とおくと、$g$ も狭義単調であり、任意の実数 $\mu, \nu$ に対して
となる。定理 1 より $g(x)=g(1)x=f(e)x$ である。ゆえに
ここで $a = e^{\frac{1}{f(e)}}$ であり、$a>0,\ a\ne 1$ である。
定理 4 $f:(0,+\infty)\to\mathbb{R}$ が狭義単調であり、かつ任意の $x,y>0$ に対して
が成り立つならば、$f$ は冪関数である。
$g(x)=f(e^x)$ とおくと、$g$ も狭義単調であり、任意の実数 $\mu, \nu$ に対して
となる。定理 2 より $g(x)=(g(1))^x=(f(e))^x$、すなわち $f(e^x)=(f(e))^x$ である。ゆえに
$\alpha = \ln f(e)$ とおくと $f(x)=x^\alpha$ となり、すなわち $f$ は冪関数である。
例 10 $f:\mathbb{R}\to\mathbb{R}$ が単調であり、かつ任意の $x,y\in\mathbb{R}$ に対して $f\!\left(\dfrac{x+y}{2}\right) = \dfrac{f(x)+f(y)}{2}$ が成り立つとする。$f(x) = (f(1)-f(0))x+f(0)$ を証明せよ。
解. $\dfrac{f(x)+f(y)}{2} = f\!\left(\dfrac{x+y}{2}\right) = f\!\left(\dfrac{(x+y)+0}{2}\right) = \dfrac{f(x+y)+f(0)}{2}$ より、
を得る。$g(x)=f(x)-f(0)$ とおくと、$g(x+y)=g(x)+g(y)$ となるため、$g(x)=g(1)x$ である。∎
例 11 $n$ を $1$ より大きい正の整数とし、関数 $f:\mathbb{R}\to\mathbb{R}$ が単調であり、かつ任意の $x,y\in\mathbb{R}$ に対して
が成り立つとする。$f$ を求めよ。
解. $f(0) = f(0+0^n) = f(0)+(f(0))^n$ より $f(0)=0$ を得る。したがって $f(y^n) = (f(y))^n$ となる。ゆえに
$y\ge0$ ならば $y=z^n$ となる $z\ge0$ があるので、任意の $x\in\mathbb{R}$、$y\ge 0$ に対して $f(x+y) = f(x)+f(y)$ が成り立つ。$y<0$ のとき、$-y>0$ であるため、$f(y)+f(-y)=f(y+(-y))=f(0)=0$ となり、$f$ は奇関数であることがわかる。さらに $f(x) = f((x+y)+(-y)) = f(x+y)+f(-y) = f(x+y)-f(y)$ であるから、この場合も
が成り立つ。したがって、定理 1 により $f(x)=cx$($c=f(1)$)である。これを $f(y^n)=(f(y))^n$ に代入すると $cy^n=c^ny^n$ なので $c=c^n$、すなわち $c=0$ または $c^{n-1}=1$。$n$ が偶数なら $c=1$、$n$ が奇数なら $c=\pm1$ である。逆にこれらはすべて条件を満たす。結局、$f(x)=0$、$f(x)=x$、および $n$ が奇数のときの $f(x)=-x$ が解である。∎
例 1 以下の恒等式を証明せよ。
解. (1)(2) 積和の公式と倍角の公式を用いて、
なお $\sin^2\alpha-\sin^2\beta=(1-\cos^2\alpha)-(1-\cos^2\beta)=\cos^2\beta-\cos^2\alpha$ である。
(3) $\sin 3\alpha = \sin 2\alpha\cos\alpha+\cos 2\alpha\sin\alpha = 2(1-\sin^2\alpha)\sin\alpha+(1-2\sin^2\alpha)\sin\alpha = 3\sin\alpha-4\sin^3\alpha$
(4) $\cos 3\alpha = \cos 2\alpha\cos\alpha-\sin 2\alpha\sin\alpha = (2\cos^2\alpha-1)\cos\alpha-2(1-\cos^2\alpha)\cos\alpha = -3\cos\alpha+4\cos^3\alpha$
(5)(6) 2回積和の公式を用い、$\cos 120^{\circ}=-\dfrac{1}{2}$ に注意する。
(7) (5) を (6) で割ると、分母が $0$ でない限り $\tan(60^{\circ}-\theta)\tan\theta\tan(60^{\circ}+\theta)=\dfrac{\sin3\theta}{\cos3\theta}=\tan3\theta$ となる。
∎
例 2 $\alpha, \beta, \gamma \notin \left\{k\pi+\dfrac{\pi}{2} \;\middle|\; k\in\mathbb{Z}\right\}$ とする。$\tan\alpha+\tan\beta+\tan\gamma = \tan\alpha\tan\beta\tan\gamma$ となるための必要十分条件は、ある $n\in\mathbb{Z}$ が存在して $\alpha+\beta+\gamma=n\pi$ となることである。これを証明せよ。
解. (必要性)$\tan\alpha+\tan\beta+\tan\gamma = \tan\alpha\tan\beta\tan\gamma$ であるとすると、
もし仮に $\tan\beta\tan\gamma=1$ であれば、$\tan\beta$ と $\tan\gamma$ は同符号となるため $\tan\beta+\tan\gamma \ne 0$ となり、上式と矛盾する。したがって常に $\tan\beta\tan\gamma \ne 1$ である。ゆえに、
$\tan$ の最小正周期は $\pi$ であり、$\left(-\dfrac{\pi}{2}, \dfrac{\pi}{2}\right)$ において単調であるため、ある $n\in\mathbb{Z}$ が存在して $\beta+\gamma = n\pi-\alpha$、すなわち $\alpha+\beta+\gamma=n\pi$ となる。
(十分性)$\alpha+\beta+\gamma=n\pi\ (n\in\mathbb{Z})$ であるとすると、$\beta+\gamma = n\pi-\alpha$ である。$\alpha \notin \left\{k\pi+\dfrac{\pi}{2} \;\middle|\; k\in\mathbb{Z}\right\}$ より $\beta+\gamma \notin \left\{k\pi+\dfrac{\pi}{2} \;\middle|\; k\in\mathbb{Z}\right\}$ となる。したがって
整理すると $\tan\alpha+\tan\beta+\tan\gamma = \tan\alpha\tan\beta\tan\gamma$ を得る。∎
例 3 $\beta \ne 2k\pi$ とする。以下を証明せよ。
解. 任意の $k\in\{1,2,\dots,n\}$ に対して、積和の公式より
それぞれ $k=1$ から $n$ まで和をとると、
さらに右辺に和差化積の公式を用いると、
となる。∎
例 4 $2\sin^4 x+\dfrac{3}{4}\sin^2 2x+5\cos^4 x-\cos 3x\cos x = 2(1+\cos^2 x)$ を証明せよ。
解. まず次数を下げ、その後次数を上げる。
∎
例 5 $\cos^7 x = \dfrac{1}{64}\cos 7x + \dfrac{7}{64}\cos 5x + \dfrac{21}{64}\cos 3x + \dfrac{35}{64}\cos x$ を証明せよ。
解. $\cos 3x=4\cos^3 x-3\cos x$ より $4\cos^3 x = \cos 3x+3\cos x$。両辺を2乗して
さらに両辺に $2\cos x$ を掛けて積和の公式を用いると、
∎
例 6 $\tan x+\sec x = \tan\!\left(\dfrac{x}{2}+\dfrac{\pi}{4}\right)$ を証明せよ。
解. 半角の公式より
∎
例 7 $(1-\sin x)(1-\sin y) = \left(\sin\dfrac{x+y}{2}-\cos\dfrac{x-y}{2}\right)^2$ を証明せよ。
解. 倍角の公式と積和の公式より
∎
例 8 $4\sin\alpha\sin\beta\sin\gamma = \sin(-\alpha+\beta+\gamma)+\sin(\alpha-\beta+\gamma)+\sin(\alpha+\beta-\gamma)-\sin(\alpha+\beta+\gamma)$ を証明せよ。
解. グループ分けして和差化積の公式を用いる。
∎
例 9 $\dfrac{\cos x}{1-\sin x}+\dfrac{\cos y}{1-\sin y} = \dfrac{2(\sin x-\sin y)}{\sin(x-y)+\cos x-\cos y}$ を証明せよ。
解. 倍角の公式より
通分すると、
右辺の分子と分母はそれぞれ以下のようになる。
約分すれば左辺と一致する。∎
例 10 $\tan\alpha+2\tan 2\alpha+4\tan 4\alpha+8\cot 8\alpha = \cot\alpha$ を証明せよ。
解. $\tan 2\alpha = \dfrac{2\tan\alpha}{1-\tan^2\alpha}$ であり、$\cot 2\alpha = \dfrac{1}{2}(\cot\alpha-\tan\alpha)$ であるため、
$\alpha$ を順に $2\alpha,\ 4\alpha$ に置き換えると、
したがって $\tan\alpha+2\tan 2\alpha+4\tan 4\alpha = \cot\alpha-8\cot 8\alpha$ を得る。∎
注. 一般に $\tan x+2\tan 2x+2^2\tan 2^2 x+\dots+2^n\tan 2^n x = \cot x-2^{n+1}\cot 2^{n+1}x$ が成り立つ。
例 11 $\dfrac{\cos^4 A}{\cos^2 B}+\dfrac{\sin^4 A}{\sin^2 B}=1$ であるとき、$\dfrac{\cos^4 B}{\cos^2 A}+\dfrac{\sin^4 B}{\sin^2 A}=1$ を証明せよ。
解. 条件式を直接変形する。
平方完成すると
したがって $\sin^2 A=\sin^2 B$ となる。さらに $\cos^2 A=\cos^2 B$ となるため、証明すべき式が成り立つ。∎
例 12 $\dfrac{\sin^4 x}{a}+\dfrac{\cos^4 x}{b} = \dfrac{1}{a+b}\ (a>0, b>0)$ であるとき、$\dfrac{\sin^8 x}{a^3}+\dfrac{\cos^8 x}{b^3} = \dfrac{1}{(a+b)^3}$ を証明せよ。
解. Cauchy(コーシー)の不等式より
したがって $\dfrac{\sin^4 x}{a}+\dfrac{\cos^4 x}{b} \ge \dfrac{1}{a+b}$ である。上式において等号が成立しているため、ある $k$ が存在して $\dfrac{\sin^2 x}{a} = \dfrac{\cos^2 x}{b} = k$ となり、かつ $\dfrac{1}{a+b}=k$ である。ゆえに
∎
例 13 $\alpha\ne k\pi+\dfrac{\pi}{2},\ \beta\ne k\pi\ (k\in\mathbb{Z})$ であり、
を満たすとき、$4\tan\alpha+\cot\beta=0$ を証明せよ。
解. 与えられた条件式は以下と同値である。
$f(x)=x^3+x$ とおくと、上式は $f(3\tan\alpha+\cot\beta) = -f(\tan\alpha)$ となる。$f(x)$ は $\mathbb{R}$ 上の奇関数であり、狭義単調増加である。ゆえに
より、$3\tan\alpha+\cot\beta = -\tan\alpha$、すなわち $4\tan\alpha+\cot\beta=0$ となる。∎
例 14 次を証明せよ。
解. 恒等式
より、任意の $k\in\{0,1,\dots,88\}$ に対して
が成り立つ。$k$ について和をとると、
両辺を $\sin 1^{\circ}$ で割ると求める等式を得る。∎
例 15 次を証明せよ。$\sin 1^{\circ}\sin 2^{\circ}\sin 3^{\circ}\dots \sin 89^{\circ} = \left(\dfrac{1}{4}\right)^{45}\cdot 6\sqrt{10}$。
解. $1^{\circ}, 2^{\circ}, \dots, 89^{\circ}$ を $\{\theta, 60^{\circ}-\theta, 60^{\circ}+\theta\}$ のグループに分け、3倍角の公式を繰り返し適用する。
さらに、
倍角の公式を繰り返すと $\cos 36^{\circ}\cos 72^{\circ}=\dfrac{\sin 36^{\circ}\cos36^{\circ}\cos72^{\circ}}{\sin 36^{\circ}}=\dfrac{\sin 144^{\circ}}{4\sin 36^{\circ}}=\dfrac{1}{4}$ である。また 例 26(5) より $\cos72^{\circ}-\cos36^{\circ}=-\dfrac12$。$x = \sin 36^{\circ}\sin 72^{\circ}$ とおくと、積和の公式から $x=\dfrac12(\cos36^{\circ}-\cos108^{\circ})=\dfrac12(\cos36^{\circ}+\cos72^{\circ})$ で、
より $x=\dfrac{\sqrt{5}}{4}$ を得る。したがって左辺 $=\left(\dfrac14\right)^{40}\cdot3\cdot\left(\dfrac14\right)^3\cdot\dfrac{\sqrt2}{2}\cdot\dfrac{\sqrt5}{4}=\dfrac{3\sqrt{10}}{8}\left(\dfrac14\right)^{43}=\left(\dfrac{1}{4}\right)^{45}\cdot 6\sqrt{10}$。∎
例 16 $\tan\theta=2$ のとき、$\sin^2\theta+\sin\theta\cos\theta-2\cos^2\theta$ の値を求めよ。
解. $A = \sin^2\theta+\sin\theta\cos\theta-2\cos^2\theta$ とおく。$\sin^2\theta+\cos^2\theta=1$ より、
∎
例 17 $\sin(3\pi-\theta)-\cos(5\pi+\theta)=\dfrac{1}{5}\ (\theta\in(0,\pi))$ であるとき、
の値を求めよ。ただし $k\in\mathbb{Z}$ とする。
解. 求める式を $A$ とおく。誘導公式(還元公式)より
また、条件と誘導公式より $\sin\theta+\cos\theta=\dfrac{1}{5}$ である。$0<\theta\le\dfrac{\pi}{2}$ のときは常に $\sin\theta+\cos\theta\ge1$ となるため、$\dfrac{\pi}{2}<\theta<\pi$ であることがわかり、$\sin\theta-\cos\theta>0$ となる。
より、
したがって $\sin\theta=\dfrac{4}{5},\ \cos\theta=-\dfrac{3}{5}$ を得る。これより $A=\dfrac{54}{25}$ となる。∎
例 18 $f(\cos x)=\cos 17x$ であるとき、$(f(\cos x))^2+(f(\sin x))^2$ を求めよ。
解. $f(\sin x) = f\!\left(\cos\!\left(\dfrac{\pi}{2}-x\right)\right) = \cos 17\!\left(\dfrac{\pi}{2}-x\right) = \sin 17x$ であるため、
∎
例 19 $\sin\alpha-\sin\beta=a,\ \cos\alpha-\cos\beta=b$($a,b$ は同時には $0$ にならない)であるとき、$\cos(\alpha-\beta),\ \cos(\alpha+\beta)$ を求めよ。
解. 条件の2式をそれぞれ2乗して足し合わせると、$\cos(\alpha-\beta) = 1-\dfrac{a^2+b^2}{2}$。第2式の2乗から第1式の2乗を引くと、
$a^2+b^2\ne0$ より、$\cos(\alpha+\beta) = \dfrac{a^2-b^2}{a^2+b^2}$。∎
注. 2式を和差化積の公式で変形してから両辺を割ることで $\tan\dfrac{\alpha+\beta}{2}$ を求め、そこから万能公式(ワイエルシュトラス置換)を用いて $\cos(\alpha+\beta)$ を求めることもできる。
例 20 $\sin\alpha+\sin\beta=p,\ \cos\alpha+\cos\beta=q$($pq\ne0$)であるとき、$\cos(\alpha-\beta),\ \sin(\alpha+\beta),\ \cos(\alpha+\beta),\ \tan(\alpha+\beta)$ を求めよ。
解. 2式をそれぞれ2乗して足し合わせると、$\cos(\alpha-\beta)=\dfrac{p^2+q^2}{2}-1$。和差化積(または積和)の公式より
2式を割ると $\tan\dfrac{\alpha+\beta}{2} = \dfrac{p}{q}$ を得る。さらに公式より
∎
例 21 $\sin\alpha+\sin\beta=\dfrac{1}{4},\ \tan(\alpha+\beta)=\dfrac{24}{7}$ であるとき、$\cos\alpha+\cos\beta$ を求めよ。
解. $\sin\alpha+\sin\beta=\dfrac{1}{4}$ より、$2\sin\dfrac{\alpha+\beta}{2}\cos\dfrac{\alpha-\beta}{2} = \dfrac{1}{4}$。$\cos\alpha+\cos\beta=a$ とおくと $2\cos\dfrac{\alpha+\beta}{2}\cos\dfrac{\alpha-\beta}{2} = a$。もし $a=0$ ならば $\cos\dfrac{\alpha+\beta}{2}=0$ となり、したがって $\alpha+\beta=2k\pi+\pi$、よって $\tan(\alpha+\beta)=0$ となるが、これは矛盾する。ゆえに $a\ne0$ であり、$\tan\dfrac{\alpha+\beta}{2}=\dfrac{1}{4a}$ を得る。さらに
これより $a=\dfrac{1}{3}$ または $a=-\dfrac{3}{16}$ を得る。∎
例 22 $\dfrac{\pi}{2}<\beta<\alpha<\dfrac{3}{4}\pi$ であり、$\cos(\alpha-\beta)=\dfrac{12}{13},\ \sin(\alpha+\beta)=-\dfrac{3}{5}$ であるとき、$\sin 2\alpha$ を求めよ。
解. $\dfrac{\pi}{2}<\beta<\alpha<\dfrac{3}{4}\pi$ より $0<\alpha-\beta<\dfrac{\pi}{4}$ であるため、$\sin(\alpha-\beta)>0$。ゆえに $\sin(\alpha-\beta)=\dfrac{5}{13}$。また $\dfrac{\pi}{2}<\beta<\alpha<\dfrac{3}{4}\pi$ より $\pi<\alpha+\beta<\dfrac{3\pi}{2}$ であるため、$\cos(\alpha+\beta)<0$。ゆえに $\cos(\alpha+\beta)=-\dfrac{4}{5}$。したがって
∎
例 23 $\sin A+\sin B=\sin C,\ \cos A+\cos B=\cos C$ であるとき、$\sin^2 A+\sin^2 B+\sin^2 C$ を求めよ。
解. $\sin A+\sin B=\sin C$ と $\cos A+\cos B=\cos C$ の両辺をそれぞれ2乗して足し合わせると、$\cos(A-B)=-\dfrac{1}{2}$。2乗して引くと、$\cos(A+B)=\cos 2C$。ゆえに
∎
例 24 $\sin x+\sin y+\sin z = \cos x+\cos y+\cos z = 0$ であるとき、
を求めよ。
解. 条件より
2式を2乗して足し合わせると、$\cos(x-y)=-\dfrac{1}{2}$。同様にして $\cos(y-z)=-\dfrac{1}{2}$。これは $x,y,z$ のうち任意の2つの角の動径のなす角が $\dfrac{2}{3}\pi$ であることを示している。したがって(ここでは符号の取り方を一つに決めたが、逆向きの場合も同様である)、ある整数 $k_1, k_2$ が存在して
となる。ゆえに $x = z+\dfrac{4}{3}\pi+2(k_1+k_2)\pi$、$x+y+z = 3z+2(k_1+2k_2+1)\pi$ となる。したがって、
∎
例 25 $\alpha+\beta=\dfrac{\pi}{12}$ であり、$\tan\alpha,\ \tan\beta$ がともに意味を持ち、$1+\tan\alpha+\tan\beta-\tan\alpha\tan\beta\ne0$ であるとき、
の値を求めよ。
解. 正接の加法定理より、$\tan(\alpha+\beta)=\tan\dfrac{\pi}{12}$ であることと $\tan\alpha+\tan\beta=(1-\tan\alpha\tan\beta)\tan\dfrac{\pi}{12}$ を用いると、
∎
例 26 次の式を計算せよ。
解. $\tan\alpha+\tan\beta = (1-\tan\alpha\tan\beta)\tan(\alpha+\beta)$ などの公式を利用する。
(1) $\dfrac{1+\tan 75^{\circ}}{1-\tan 75^{\circ}} = \dfrac{\tan 45^{\circ}+\tan 75^{\circ}}{1-\tan 45^{\circ}\tan 75^{\circ}} = \tan 120^{\circ} = -\sqrt{3}$。
(2) $\tan 15^{\circ}+\tan 30^{\circ} = \tan(15^{\circ}+30^{\circ})(1-\tan 15^{\circ}\tan 30^{\circ}) = 1-\tan 15^{\circ}\tan 30^{\circ}$ より、$\tan 15^{\circ}+\tan 30^{\circ}+\tan 15^{\circ}\tan 30^{\circ} = 1$。
(3) $2\cos 10^{\circ} = 2\cos(30^{\circ}-20^{\circ}) = \sqrt{3}\cos 20^{\circ}+\sin 20^{\circ}$ であるため、$\dfrac{2\cos 10^{\circ}-\sin 20^{\circ}}{\cos 20^{\circ}} = \sqrt{3}$。
(4) $\sin 10^{\circ}\sin 50^{\circ}\sin 70^{\circ} = \cos 20^{\circ}\cos 40^{\circ}\cos 80^{\circ} = \dfrac{\sin 20^{\circ}\cos 20^{\circ}\cos 40^{\circ}\cos 80^{\circ}}{\sin 20^{\circ}} = \dfrac{1}{8}$。
(5) 例 3 の方法を用いて、
(6) まず倍角公式で次数を下げる。
したがって、
(7) $\alpha=18^{\circ}$ とおく。$\sin 2\alpha = \cos 3\alpha$ となる。3倍角の公式 $\cos 3\alpha = -3\cos\alpha+4\cos^3\alpha$ より
両辺を $\cos\alpha \ne 0$ で割ると $2\sin\alpha = 1-4\sin^2\alpha$、すなわち $4\sin^2\alpha+2\sin\alpha-1=0$。これを解いて $\sin 18^{\circ} = \dfrac{\sqrt{5}-1}{4}$ を得る。∎
定理 1 $\alpha$ が鋭角のとき、$\sin\alpha < \alpha < \tan\alpha$、$\sin\alpha+\cos\alpha > 1$。
例 27 $f(x)=\dfrac{\sin x}{x}$ が $\left(0, \dfrac{\pi}{2}\right)$ において狭義単調減少であることを証明し、それを用いて次を証明せよ。
解. $0<x_1<x_2<\dfrac{\pi}{2}$ とすると、$x_2-x_1>0,\ 0<\dfrac{x_1+x_2}{2}<\dfrac{\pi}{2}$ である。したがって
(1) $f(x) > f\!\left(\dfrac{\pi}{4}\right)$ より、$\dfrac{\sin x}{x} > \dfrac{\sin\frac{\pi}{4}}{\frac{\pi}{4}} = \dfrac{2\sqrt{2}}{\pi}$。
(2) $f(x) > f\!\left(\dfrac{\pi}{2}\right)$ より、$\sin x > \dfrac{2}{\pi}x\ \left(0<x<\dfrac{\pi}{2}\right)$ を得る。$t = \dfrac{\pi}{2}-x$ とおくと $t\in\left(0, \dfrac{\pi}{2}\right)$ であり、$\cos t > 1-\dfrac{2}{\pi}t$ となる。これは $\sin^2\dfrac{t}{2} < \dfrac{2}{\pi}\cdot\dfrac{t}{2}$ を意味する。ゆえに $x\in\left(0, \dfrac{\pi}{4}\right)$ のとき $\sin^2 x < \dfrac{2x}{\pi}$、すなわち $\sin x < \sqrt{\dfrac{2x}{\pi}}$ である。∎
例 28 $0<b<1,\ 0<\alpha<\dfrac{\pi}{4}$ である。
の大小関係を比較せよ。
解. $0<\alpha<\dfrac{\pi}{4}$ より $0<\sin\alpha<\cos\alpha<1$ である。$0<b<1$ より $\log_b\sin\alpha > \log_b\cos\alpha > 0$ である。ゆえに
すなわち $x<z<y$ である。∎
例 29 $f(x) = |\sin x| + \sin^4 2x + |\cos x|$ の最大値と最小値を求めよ。
解. $f\!\left(x+\dfrac{\pi}{2}\right)=f(x)$、$f\!\left(\dfrac{\pi}{2}-x\right)=f(x)$ であるため、$f(x)$ の $\left[0, \dfrac{\pi}{4}\right]$ における最値を求めればよい。$\left[0, \dfrac{\pi}{4}\right]$ において、$\sin x+\cos x = \sqrt{2}\sin\!\left(x+\dfrac{\pi}{4}\right)$ と $\sin^4 2x$ はともに単調増加である。したがって最大値は $f\!\left(\dfrac{\pi}{4}\right)$、最小値は $f(0)$ である。$x=k\dfrac{\pi}{2}+\dfrac{\pi}{4}$ のときに最大値($\sqrt{2}+1$)をとり、$x=k\dfrac{\pi}{2}$ のときに最小値($1$)をとる。∎
例 30 $f(x) = \cos 4x+6\cos 3x+17\cos 2x+30\cos x$ の最小値を求めよ。
解. 2倍角の公式と3倍角の公式より
$\cos x=-1$ または $\cos x=-\dfrac{1}{2}$ のときに等号が成立し、最小値は $-18$ となる。∎
例 31 $y=\sin x+\sqrt{1+\cos^2 x}$ の最大値を求めよ。
解法一. $(\sin x)^2+(1+\cos^2 x)=2$ であるため、
$\sin x=\sqrt{2}\cos\theta,\ \sqrt{1+\cos^2 x}=\sqrt{2}\sin\theta$ とおく。$\dfrac{\pi}{4}\le\theta\le\dfrac{3}{4}\pi$ とすると、
$\dfrac{\pi}{4}\le\theta\le\dfrac{3}{4}\pi$ より $\dfrac{\pi}{2}\le\theta+\dfrac{\pi}{4}\le\pi$ である。したがって $0\le \sin\!\left(\theta+\dfrac{\pi}{4}\right)\le 1$ となる。$\theta=\dfrac{3}{4}\pi$、すなわち $x=2k\pi-\dfrac{\pi}{2}$ のとき $y_{\min}=0$、$\theta=\dfrac{\pi}{4}$、すなわち $x=2k\pi+\dfrac{\pi}{2}$ のとき $y_{\max}=2$ となる。
解法二. 不等式 $\left(\dfrac{a+b}{2}\right)^2\le\dfrac{a^2+b^2}{2}$ を用いる。
かつ $\sin x\le 1\le \sqrt{1+\cos^2 x}$ である。したがって $0\le \sin x+\sqrt{1+\cos^2 x}\le 2$ となる。$\sqrt{1+\cos^2 x}=\sin x$、すなわち $x=2k\pi+\dfrac{\pi}{2}$ のとき $y_{\max}=2$、$\sqrt{1+\cos^2 x}=-\sin x$、すなわち $x=2k\pi-\dfrac{\pi}{2}$ のとき $y_{\min}=0$ となる。∎
例 32 $y=\sin x+\sqrt{2+\cos^2 x}$ の最値を求めよ。
解. $y=\sin x+\sqrt{3-\sin^2 x}$ に注意する。$\sin x=\sqrt{3}\cos\theta,\ \theta\in\left[\arccos\dfrac{\sqrt{3}}{3}, \pi-\arccos\dfrac{\sqrt{3}}{3}\right]$ とおくと、
$\sin\!\left(\theta+\dfrac{\pi}{4}\right)$ は $\left[\dfrac{\pi}{4}+\arccos\dfrac{\sqrt{3}}{3},\ \dfrac{5}{4}\pi-\arccos\dfrac{\sqrt{3}}{3}\right]$ において単調減少するため、$y_{\max}=\sqrt{2}+1$、$y_{\min}=\sqrt{2}-1$ となる。∎
例 33 ある矩形の一辺が $x$ 軸上にあり、他の2つの頂点が $y=\dfrac{x}{1+x^2}\ (x>0)$ のグラフ上にある。この矩形を $x$ 軸の周りに回転させてできる立体の体積の最大値を求めよ。
解. $f(x)=\dfrac{x}{1+x^2}=\dfrac{1}{x+\frac{1}{x}}=f\!\left(\dfrac{1}{x}\right)$ であるため、矩形の他の2つの頂点の横座標はそれぞれ $x,\ \dfrac{1}{x}$ とおける。$x<1$ と仮定して一般性を失わない。すると
$t=\dfrac{1}{x}-x$ とおくと、$V = \pi\dfrac{t}{t^2+4} = \pi\dfrac{1}{t+\frac{4}{t}} \le \dfrac{\pi}{4}$ となる。等号は $t=2$、すなわち $x=\sqrt{2}-1$ のとき成立する。
別解. $V = \dfrac{1}{2}\pi\cdot\dfrac{2x}{1+x^2}\cdot\dfrac{1-x^2}{1+x^2}$ において、$x=\tan t$ とおくと、
∎
例 34 $f(x)=\dfrac{\sqrt{x^2+1}}{x-1}$ の値域を求めよ。
解. $x=\tan\theta\ \left(-\dfrac{\pi}{2}<\theta<\dfrac{\pi}{2},\ \theta\ne\dfrac{\pi}{4}\right)$ とおく。
$u=\sqrt{2}\sin\!\left(\theta-\dfrac{\pi}{4}\right)$ とおくと、$\theta-\dfrac{\pi}{4}\in\left(-\dfrac{3}{4}\pi,\dfrac{\pi}{4}\right)$ より $-\sqrt{2}\le u<1$($u=-\sqrt{2}$ は $\theta=-\dfrac{\pi}{4}$ でとる)、かつ $\theta\ne\dfrac{\pi}{4}$ から $u\ne 0$ であるため、
∎
例 35 $f(x)=\dfrac{\sin(\pi x)-\cos(\pi x)+2}{\sqrt{x}}\ \left(\dfrac{1}{4}\le x\le \dfrac{5}{4}\right)$ の最小値を求めよ。
解. 明らかに
$g(x)=\sqrt{2}\sin\!\left(\pi x-\dfrac{\pi}{4}\right)\ \left(\dfrac{1}{4}\le x\le \dfrac{5}{4}\right)$ とおく。明らかに $g(x)\ge 0$ であり、$g(x)$ は $\left[\dfrac{1}{4}, \dfrac{3}{4}\right]$ 上で増加し、$\left[\dfrac{3}{4}, \dfrac{5}{4}\right]$ 上で減少する。$y=g(x)$ のグラフは直線 $x=\dfrac{3}{4}$ に関して対称である。したがって、任意の $x_1\in\left[\dfrac{1}{4}, \dfrac{3}{4}\right]$ に対して、$g(x_2)=g(x_1)$ となる $x_2\in\left[\dfrac{3}{4}, \dfrac{5}{4}\right]$ が存在し、
となる。また $f(x)$ は $\left[\dfrac{3}{4}, \dfrac{5}{4}\right]$ 上でも減少するため、$f(x)\ge f\!\left(\dfrac{5}{4}\right)=\dfrac{4\sqrt{5}}{5}$ である。すなわち $f(x)$ の $\left[\dfrac{1}{4}, \dfrac{5}{4}\right]$ における最小値は $\dfrac{4\sqrt{5}}{5}$ である。∎
例 36 $\alpha, \beta\in\left(0, \dfrac{\pi}{2}\right),\ \alpha+\beta\ne \dfrac{\pi}{2}$ であり、$\sin\beta = \sin\alpha\cos(\alpha+\beta)$ を満たすとする。(1) $\tan\beta$ を $\tan\alpha$ を用いて表せ。(2) $\tan\beta$ の最大値を求めよ。
解. (1) $\sin\beta = \sin\alpha\cos\alpha\cos\beta - \sin^2\alpha\sin\beta$ より、
ゆえに
(2) $x=\tan\alpha\ (x>0)$ とおく。$y=\tan\beta = \dfrac{x}{2x^2+1}$、すなわち $2yx^2-x+y=0$ となる。したがって判別式は非負であり、$1-8y^2\ge 0$ かつ $y>0$ となる。これを解いて $0<y\le \dfrac{\sqrt{2}}{4}$ を得る。∎
例 37 $f(x) = (\sin x+4\sin\theta+4)^2+(\cos x-5\cos\theta)^2$ の最小値を $g(\theta)$ とする。$g(\theta)$ の最大値を求めよ。
解法一.
ゆえに
$t=\sqrt{-9\sin^2\theta+32\sin\theta+41}$ とおくと、$t\in[0, 8]$ であり、$g(\theta) = t^2-2t+1 = (t-1)^2$ となる。故に $g(\theta)_{\max} = (8-1)^2 = 49$。
解法二. 直交座標系において、$A(\cos x, 4+\sin x)$、$B(5\cos\theta, -4\sin\theta)$ とおくと、$|AB|^2 = f(x)$ となる。点 $A$ は円 $x^2+(y-4)^2=1$ 上を動き、点 $B$ は楕円 $\dfrac{x^2}{25}+\dfrac{y^2}{16}=1$ 上を動く。楕円上の任意の点 $B$ に対して、$g(\theta)$ は $B$ から円の中心 $C(0,4)$ までの距離から $1$ を引いた値の2乗である。すなわち、
また楕円 $\dfrac{x^2}{25}+\dfrac{y^2}{16}=1$ は円 $x^2+(y-4)^2=64$ に内接する。つまり $C(0,4)$ から楕円までの距離の最大値は $8$ である。したがって $g(\theta) \le (8-1)^2 = 49$ となり、$g(\theta)_{\max} = 49$ となる。$x=-\dfrac{\pi}{2},\ \theta=\dfrac{\pi}{2}$ のとき、$g(\theta)$ は最大値をとる。∎
例 38 $\{x\in\mathbb{R} \mid \cos^2 x+\sin x+m=0\} \ne \emptyset$ であるとき、$m$ の範囲を求めよ。
解. この問題は
の値域を求めることと同値である。したがって $m$ の範囲は $\left[-\dfrac{5}{4}, 1\right]$ である。∎
例 39 不等式 $\sqrt{2}(2a+3)\cos\!\left(\theta-\dfrac{\pi}{4}\right)+\dfrac{6}{\sin\theta+\cos\theta}-2\sin 2\theta < 3a+6$ が $\theta\in\left[0, \dfrac{\pi}{2}\right]$ に対して恒等的に成り立つとき、$a$ の範囲を求めよ。
解. $\sin\theta+\cos\theta=x$ とおくと、$\cos\!\left(\theta-\dfrac{\pi}{4}\right) = \dfrac{x}{\sqrt{2}},\ \sin 2\theta=x^2-1$ となり、元の不等式は
となる。$x\in[1, \sqrt{2}]$ では $2x-3<0$ なので、$x+\dfrac{2}{x}-a<0$ がこの範囲のすべての $x$ で成り立てばよい。$x+\dfrac{2}{x}$ は $[1,\sqrt2]$ で減少し、最大値は $x=1$ のときの $3$ である。したがって $a > 3$。∎
例 40 $f(x) = -\dfrac{1}{2} + \dfrac{\sin\frac{5}{2}x}{\sin\frac{1}{2}x}\ (0<x<\pi)$ とする。(1) $f(x)$ を $\cos x$ についての多項式として表せ。(2) $f(x)$ の値域を求めよ。(3) $f(x) = k(\cos x-2)$ が、互いに符号の異なる2つの $\cos x$ の解を持つとき、$k$ の値の範囲を求めよ。
解. (1)
(2) $c=\cos x$ は $(-1,1)$ の値をとり、$f=4\left(c+\dfrac14\right)^2-\dfrac74$ は $c=-\dfrac14$ で最小値 $-\dfrac74$ をとり、$c\to1$ で $\dfrac92$ に近づく($c=1$ は $x=0$ に対応するので含まれない)。したがって値域は $\left[-\dfrac{7}{4}, \dfrac{9}{2}\right)$ である。
(3) $t=\cos x$ とおくと、$f(x)=k(\cos x-2)$ は $4t^2+2t-\dfrac32=k(t-2)$、すなわち $g(t)=4t^2+(2-k)t+2k-\dfrac32=0$ となる。$0 を得る。∎
例 41 $0\le\theta\le\dfrac{\pi}{2}$ とする。不等式 $\sin^2\theta+3m\cos\theta-6m-4<0$ が恒等的に成り立つような $m$ の範囲を求めよ。
解. 変数を分離すると、任意の $\theta\in\left[0, \dfrac{\pi}{2}\right]$ に対して $3m > \dfrac{3+\cos^2\theta}{\cos\theta-2}$ が恒等的に成り立つことが要求される。したがって、
$\cos\theta-2=t$ とおくと、$-2\le t\le -1$ であり、$U = \dfrac{3+\cos^2\theta}{\cos\theta-2} = \dfrac{3+(t+2)^2}{t} = t+\dfrac{7}{t}+4$ となる。$t\in[-2, -1]$ 上で $U$ の最大値を求めると、$t=-2$ のとき $U_{\max} = -2+\left(-\dfrac{7}{2}\right)+4 = -\dfrac{3}{2}$。ゆえに $3m > -\dfrac{3}{2}$、すなわち $m > -\dfrac{1}{2}$ である。∎
例 42 任意の実数 $x$ と任意の $\theta\in\left[0, \dfrac{\pi}{2}\right]$ に対して、常に
となるような実数 $a$ の範囲を求めよ。
解法一. 不等式 $A^2+B^2 \ge 2\!\left(\dfrac{A+B}{2}\right)^2$ を利用する。
条件の不等式が成立するためには、
すなわち
$t=\sin\theta+\cos\theta$ とおくと、$t\in[1, \sqrt{2}]$。$\sin\theta\cos\theta = \dfrac{t^2-1}{2}$ なので $3+2\sin\theta\cos\theta-at=t^2+2-at$ で、これは $t$ の連続関数である。$[1,\sqrt2]$ 上で絶対値が常に $\dfrac12$ 以上ならば符号は途中で変わらないので、「常に $\ge\dfrac12$」か「常に $\le-\dfrac12$」のいずれかになる(上の「または」はそのことを表す)。したがって、
または
以上より、$a \ge \dfrac{7}{2}$ または $a \le \sqrt{6}$。
解法二. 元の不等式が任意の実数 $x$ と任意の $\theta\in\left[0, \dfrac{\pi}{2}\right]$ で恒等的に成り立つということは、点 $P(-3-2\sin\theta\cos\theta,\ -a\sin\theta-a\cos\theta)$ と点 $Q(x, x)$ との距離の2乗が常に $\dfrac{1}{8}$ 以上であるということである。これは点 $P$ から直線 $x-y=0$ までの距離の2乗が常に $\dfrac{1}{8}$ 以上であることと同値である。
以下は解法一と同様である。∎
例 43 $\alpha, \beta\in\left(0, \dfrac{\pi}{2}\right)$ とする。次を証明せよ。
解. 相加相乗平均の不等式より、
等号は $\tan^2\alpha=2,\ \sin^2 2\beta=1$ のときに限り成立する。∎
例 44 $x\in\mathbb{R},\ 0<x<\pi$ とする。すべての自然数 $n$ に対して、次が成り立つことを証明せよ。
$f(x) = \sin x+\dfrac{\sin 3x}{3}+\dots+\dfrac{\sin(2n-1)x}{2n-1}$ とおく。$2\sin x\sin(2k-1)x = \cos(2k-2)x-\cos 2kx$ を用いると、
もし等号が成立するならば、各 $k\in\{1,2,\dots,n\}$ に対して $\cos 2kx=1$ となるはずである。しかし $0<x<\pi$ より $\cos 2x\ne 1$ であるため、$f(x)\sin x>0$ となり、したがって $f(x)>0$ である。
問題 $\tan20^{\circ}\tan40^{\circ}\tan80^{\circ}=\sqrt{3}$ を示せ。
三角恒等式の例 1(7) で $\theta=20^{\circ}$ とおくと $\tan60^{\circ}=\tan40^{\circ}\tan20^{\circ}\tan80^{\circ}$。$\tan60^{\circ}=\sqrt{3}$ である。
問題 $x\neq0$ で定義された関数 $f$ が $f(x)+2f\!\left(\dfrac1x\right)=3x$ を満たすとき、$f(x)$ を求めよ。
関数方程式の例 7 で $a=1,\ b=2,\ c=3$ とおくと、$f(x)=\dfrac{3x^2-6}{(1-4)x}=\dfrac{2}{x}-x$。確かめると $f(x)+2f\!\left(\dfrac1x\right)=\dfrac2x-x+2\!\left(2x-\dfrac1x\right)=3x$ となる。
問題 $y=\sin x+\cos x+\sin x\cos x$ の最大値と最小値を求めよ。
$t=\sin x+\cos x=\sqrt2\sin\!\left(x+\dfrac\pi4\right)\in[-\sqrt2,\sqrt2]$ とおくと $\sin x\cos x=\dfrac{t^2-1}{2}$ で、$y=\dfrac{t^2+2t-1}{2}=\dfrac{(t+1)^2-2}{2}$。$t=-1$ で最小値 $-1$、$t=\sqrt2$ で最大値 $\dfrac12+\sqrt2$。
問題 $f(x)=|\sin x|+|\cos x|$ の最小正周期を求めよ。
$f\!\left(x+\dfrac\pi2\right)=|\cos x|+|\sin x|=f(x)$ なので $\dfrac\pi2$ は周期である。$T>0$ が周期なら $f(T)=f(0)=1$。一方 $f(T)^2=1+2|\sin T\cos T|\ge1$ で、等号は $\sin T\cos T=0$、すなわち $T\in\dfrac\pi2\mathbb{Z}$ のときに限る。よって $T\ge\dfrac\pi2$ で、最小正周期は $\dfrac\pi2$ である。